第13話 それを相互理解と言えるのか?
エリーゼの鞄を隠そうとする
その鞄をなんとか取り返そうとするアスラン。
エア・ヴィークルとエア・ヴィークルをぶつけ合うようにしながらいがみ合う二人。
ちなみに帝都の上空100メートルで軍事機密で何をやっているのだろうか。目立つ事この上ない。
エリーゼは、下を見ないように意識しながら、アスランの背中にくっついて、争いごとが終わるのを待っていた。どう考えても、アスランの方がエア・ヴィークルの操縦術は上のようだし、
そのとき。
アスランが鞘を構えてまた身を乗り出したタイミングを狙って、
「!?」
濛々と舞い散る粉。
火薬と唐辛子の詰め合わせのようなものが至近距離で炸裂し、完全にアスランの意表を突いた。
アスランの背後にいたエリーゼは何ともなかったが、アスランは瞬間的に声も出せずに悶絶している。もろに火薬の灰などを吸い込んでしまったらしい。
「アスランさまっ!?」
「さっきのお返しだ! それじゃこれは貰っていくぜ!!」
何でそんなことをしようと思ったのかわからないが、
アスランは目くらましと咳が酷いので一時的にエア・ヴィークルの上にうずくまっている。
「アスランさま!! 大丈夫ですか!!」
慌てたエリーゼだったが、咄嗟に、ミトラ教会で教わった基本的な咳止めのおまじないを思い出した。すらすらとそれを唱えて、アスランの背中から魔力を通していく。たちまちアスランは回復した。
「ありがとう、エリーゼ……油断してしまってすまない」
「いえ、私は、大丈夫です。それよりも、アスラン様、
一体何が目的で、自分の鞄を盗んで遠い空まで飛んでいったのかが意味がわからない。さすがに、財布や図書館から借りた本を、見逃すわけにはいかない中学生。アスランへのプレゼントだって見られたらと思ったら気になって仕方ない。
「エリーゼ。
「……いえ、鞄を探します」
エリーゼは、養女である。
ゲルトルートがいくらよくしてくれるといったって、彼女達は親子になって一年足らず。それで、いきなり、近衛府の軍事機密に乗ってアスラン連れで養い親の侯爵邸に乗り付けるのはやめた方がいいと、思えた。
ちゃんと鞄を回収した後、アスランに御者のいるところまで送ってもらって、そっと侯爵邸に帰りたい。
そういうつもりでそう言った。
「わかった。エリーゼの鞄は絶対に無事に取り返してやる。少しかっ飛ばすが、ちゃんとついてこいよ」
「はい!」
ちなみにアスランは知っている。
そして
アスランが何で、ごく普通の女の子で侯爵令嬢のエリーゼを、軍事機密に乗せて走り回っているのかと。何でもいいから
(そんな奴の前で、女の子に頭下げられるかーッ!!)
それが
正しくどっちもどっち。
大人げない男といったら彼等の事であろう……。
そんな男同士ライバル同士の内情などよく理解出来ないエリーゼは、何か突っ込んだ事情があるのかもしれないとそれなりに予想しつつ、それでも釈然としないまま、アスランの背中にくっついて、彼のエア・ヴィークルで東の方へと飛んでいった。
(しかし、そういやうっかりしていたが、これは近衛府の軍事機密だったんだよな。何だか前から乗ってみたかったからつい流れで乗ってしまったけれど、いずれ近衛府に返さないと、皇女宮と近衛府の間でもめ事になってしまう。それは確かに避けた方がいい)
エア・ヴィークルを飛ばし、当然、アスランが追撃してくる事は想定内ながら、
そもそも、ここでアスランに頭を下げてスミマセンデシタが出来る性格なら最初からこういうことにはならない。
とりあえず、アスランを振り切る……というよりも、瞬殺する。倒す。
その後、自分でこっそりエア・ヴィークルを近衛府に返して忍術でごまかしておこう。 その場合、エア・ヴィークル2台をどうやって移動させるかだが、自分が二回運転すればいいだけだ。アスランはその辺に寝かせておいて。
(安らかに眠れアスラン……永遠に、目覚めなくていいぞ……)
空想上の地面に倒れ伏しているアスランに向かって心の中でミトラ十字を切る
そこに、恐るべき速さで背後から、アスランのエア・ヴィークルが迫ってくる気配がした。
最早、
少し走り飛ばせば、真下は冬の冷たい海だ。
そういう場所まで、
(こりゃ、落ちたら、俺でも危ないな……)
カイ・ラーの湾岸。港の倉庫の屋根が不規則に並んでいるのが見える。それと、小型の船舶も並んで海の上に浮かんでいた。それを上空からにらみ据えて、気を引き締める
「
そのとき、凄い勢いで迫ってきたアスランが、ミトラの魔法を乱射しながら
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