第12話 甲とジークヴァルトとアスランと
そもそも、何故に
エリーゼはそこが気になった。
アスランはどうやらその事情を、エリーゼよりは把握しているようだが……そうでなければ
何がどうしてそうなっているのか?
エリーゼは聞きたかったが、目の前で激しくアスランと
エリーゼの鞄を返せ返さない謝れ謝らない何それ何がしたいのお前に言いたくない言えない何があるんだ何もねえお前が悪い何が悪いっていうんだ誰が決めた何時何分何曜日!?
正しくそんな調子である。
元から、原作内で、二人の仲が悪い様子は何度か出てきたが、まさかここまでとは思ってなかったエリーゼは、唖然として、全く口を挟めない。
25歳のいい男達が、「何時何分何曜日!?」とか激しく言い合っている所を見るハメになると思わなかった。
(あうう……せめて、私の鞄をネタにしないで欲しいなあ……返してくれればいいだけなのに……)
ちなみに、
ジークヴァルトが、今度こそ、アルマ姫を口説き落とそうとするんじゃないかと思って気を回し、相手の様子を窺う事と弱点を暴き出すために潜り込んだのだ。
隠形の術など、忍術を駆使して、ジークヴァルトのストーキングをした結果わかったことはいくつかあるが……。
そもそも、ジークヴァルトが、アスランのストーカーじゃないかということに、
そのへんがややこしいのだが、ジークヴァルトも中将ではあるものの、彼は、魔大戦においてどこで何をやって何の業績を上げたのか、というのが、凄く問題であるらしい。
かたやアスランは、魔大戦において、皇帝じきじきに、魔王の首級をあげよ! と言われ、皇家の女性まで率いて魔界の魔王城に突撃し、実際に首級をあげて帰ってくるという大活躍ぶりなのだが、ジークヴァルトはそのとき何をしていたか--。
帝都防衛、死守していたといえば聞こえはいいのだが、正直、エンヘジャルガル皇后の張った結界をさらに守っていたというだけで、それらしい手柄はほとんど立てていないのである。
ビンデバルド宗家の方が、アル・ガーミディ皇家の血を引く王子を戦争に出したくなかったらしく、名誉職という名の窓際に常に置物にしていたのであった。
それとは別に、ジークヴァルトは、
それで、宗家の七光りで近衛府の中将になれたはいいが、よりにもよって同格に、アスランとその腹心の親友フォンゼル。
気にしないバカはいないだろうし、気にしても気にしなくてもバカである。
結果、ジークヴァルトはアスランのスプーンやフォークのあげさげまで気になるらしく、常に彼が視界に入るようにべったりくっつき、隙あれば文句、隙がなくても文句、たまに離れている位置にいたとしても、アスランの弱点とか欠点がよほど気になるらしく、何か文書にまとめたり、彼の股肱とアスランに関してブレーンストーミングしたり、本当にろくでもないのであった。
つまり、近衛府に張り込んだ
アスラン<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<ジークヴァルト<<<
もっとぶっちゃけて言ってしまえば、アスランのストーカーをしたい訳ではなかったはずだが、ジークヴァルトのストーカーをするとやたらアスランの側にいて、アスランにすっかり詳しくなってしまったのである。
そして、そのアスランが、同期の仲間のフォンゼルと、何をしていたかというと、それがエア・ヴィークルの操縦訓練なのである。極秘のやつ。
ジークヴァルトも一緒にやっていたが、どうしても、アスランの方が戦場の場数を踏んでいる分、度胸もいいし勘所もいい。次に操縦がうまいのがフォンゼルで、アスランほどド派手で豪快な事はなかったが、小回りがきく丁寧な運転が出来ていた。
そうやって、ジークヴァルトを張り込む事三日。ジークヴァルトがアスランを監視すること、通常運転。
ついに三日目、隠形の術を張っていたにも関わらず、
「廊下に
慌てて逃げ出した
そうなると、軍事機密を回収しなきゃいけないわけだから、アスランがエア・ヴィークルに乗って追い回した。
無論、アスランは、ジークヴァルトが、アルマ姫に手を出そうとしている話など知らないので、
全体的にそんな話はわからないエリーゼは、自分の鞄が原因で、人がいがみ合っているのを見て狼狽え悲しむしかなかった。
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