第10話 鞄没収?
そうこうしているうちに、エア・ヴィークルを一気に旋回させた
(ギャー!)
エリーゼは心の中ではしたない悲鳴をあげた。
そうというのも、いつもの忍び装束の
恐い! 見ているだけで恐い!
「くっ」
アスランは真顔で、急接近してくる
それより先に、
アスランがチェーンを握りしめる。
そのとき、エリーゼが超光速の早口で、「冷風」の呪文を唱えきった。非常に寒冷な風が火遁忍術の火を片っ端から消していく。
「……エリーゼ? なんだ、今のは」
「あ、……あ、あの……」
咄嗟にアスランを庇うためだったエリーゼ。
しかし、今のは自分の極秘のチート能力に関わる事であったため、口ごもるしかない。
それが、アスランには、エア・ヴィークルの揺れで舌を噛みそうなだけではなく、感情面でよく話せないように聞こえた。
「エリーゼ、恐いのか?」
「あ、……は、はい……」
今更ながらにそんなことを聞いてくるアスラン。
そうこうしているうちに、一端、エア・ヴィークルでアスランの側を横切っていった
なるほど、幻影ではなく、亜空間から召喚した手裏剣だったら、魔法で簡単にかき消す訳にもいかないだろう。
するとアスランは、エア・ヴィークルの機体をさらに上空に一気に上り詰めさせていった--。
地上を離れる事、100メートルぎりぎりぐらいまで。
今ほど、エリーゼは、自分が高所恐怖症ではないことに感謝したことはない。
高度を変えられた事により、手裏剣は全てかわした。
恐ろしい速さで、アスランは……
「あ、アスラン様?」
「エリーゼに恐い思いをさせるつもりはない。アンハルト侯爵のところに送り届けてやろう。そのあと、必ず、エリーゼの鞄を取り戻してやる」
エリーゼはアスランの切り替えの速さに驚いた。だが、エア・ヴィークルでこのまま
……だが、軍事機密のエア・ヴィークルでいきなり養母の前にタンデムで乗り付けたらどう思われるか、貴族の令嬢としても考えた。
一瞬にして、パニック。
「待て!! アスラン!!」
そのとき、
そのときになって、エリーゼは
「
「……何」
「
「これ、エリーゼの鞄なのか?」
「はい……アスラン様が、取り返してくれるって仰ったから……」
「アスランが」
自分が何で、エリーゼの鞄をケツに引っかけて走っていたのか、
「没収」
そこで
「返して欲しければ、力尽くで奪ってみな♪」
実に楽しそうに余裕をこいて、そんなことを言い出す
「何だと!!」
アスランが怒る……のも当然だったが、大体、予想の範囲内であったらしい。
「ど、どうして……」
エリーゼは、愕然とする。鞄の中に入っている、図書館の本や財布やプレゼントも気になるが、なんで。
25歳の大の大人が、15歳の女の子の鞄ひったくって、没収して、恥ずかしくないんだろう……そこが凄く気になるのだった。
「アスラン! どうしてもエリーゼの鞄を返して欲しければ、そこで三回回ってワンと言え!」
「誰がやるか! そもそも、エア・ヴィークルの上でどうやって三回回れっていうんだよ!!」
「そこを何とか工夫しろよ。頭使え!」
「お前の頭に犬耳を釘で固定してボコってやるからその頭こっちにヨコセ!!」
何がなんだか訳のわからない喧嘩が始まった。何はともあれ、エリーゼは……クラロリ姿で真冬のシュルナウの上空100メートル……寒くて仕方なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます