第7話 紅魔人の祝祭日
「
3/4
「そうです。どこの種族もそこだけの伝統と文化を持っていますが、
ジークヴァルトは真面目な表情でそういった。
「
アルマは至極素直に頷いて、自分が
ジークヴァルトは優しく微笑んだ。女性皇太子の身で、突っ張って生きてきただろうアルマ姫が、人前で自分の知らない事を認める仕草がとても可愛らしく思えたらしい。
「
ジークヴァルトの言葉にアルマは頷いた。
「知ってる。かといって、アストライアの南方に
「そう、その通り」
ジークヴァルトは嬉しそうに頷いた。
「
「なるほど。北方の寒さは半端なものではないと聞いている。二月ならば、それこそ凍り付くぐらいに寒いだろう。それで、あたたかいプレゼントをするのか」
「そのためか、意外に思われるかもしれませんが、好戦的に見える
「謎かけ?」
「はい。今はそれほど盛んではないようですが、午前中までに謎かけを含んだ模様やデザインの、暖かい服をプレゼントするんです。それをすぐに開封し、祝祭日の午後のうちに謎をといて、返事をする。謎かけは、
「
「はい。雪や氷と同じぐらい炎のデザインが何十個も……下手をすると百近くあるそうです。そのほかにも北方ならでは動植物や、それぞれの部族の紋章や、本当に奥が深い世界のようで、研究者も最近注目しているようですよ」
「へえ……!」
強い興味を感じたらしく、アルマ姫は毛糸玉を手に取っているジークヴァルトに向かって身を乗り出してきた。
「
「結び?」
「糸や紐の結び方が、
「そうだったんですか……」
勢い込んで
「
あくまで理想論とわかっていながらも、アルマは思わずそう言っていた。
「それは素敵ですね」
17歳の姫君にあわせてそう言ってから、ジークヴァルトは覚えずといったように咳払いをした。
「そういうわけで、
「謎かけって、そんなたくさんあるのか?」
「まあ……ウェリナの祝祭日ですから、それは、女性から男性に暖かい服を送りながら、模様の中にこっそりと、”私の事を好きですか?"と尋ねるようなパターンが、一番多いでしょうね」
「それならわりと単純な図案で出来そうだな。あまり凝らない方が、よさそうだ」
シンプルな性格のアルマはそう言ったのだった。
「興味を持たれましたか?」
「うん!」
そこは勢い込んで頷くアルマであった。元々、好奇心旺盛で向上心の高い性格であったし、
「よろしければ、これを」
まんまと祝祭日を前にアルマ姫の興味と関心を買い込んだジークヴァルトは、アルマ姫の前に、綺麗で派手な赤やピンクの毛糸玉を、いくつか手渡した。
「何だ、これ」
「もしも、
(そうくるかーッ!!)
苛々しながら話を聞いていた
要するに、アルマ姫に
(そんな、十日やそこらで、あっさり、
あまりの図々しさに頭がクラクラしてくるほどであった。
「そ、そうだな」
アルマ姫は妙に引きつった笑顔でそう答えた。
「柄や紋様には色がつきもの、色にも色々な意味がありますので、調べてみるといいですよ」
「ああ。それは面白そうだ」
隠形の術を使って息を潜めて隠れている
(姫ッ……毛糸玉の色に気づいて……赤やピンクっていったら、普通は……まして、ウェリナにまつわるんなら……それは、恋愛色ッ!!)
鈍感系のアルマ姫の対応に対してぶち切れそうになりながら、
ジークヴァルトが立ち去った後、アルマには見えないところで、彼の踏んだ床に塩をまいたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます