実況と選択のIFワールド
零
序章 強欲なやつらに説明を
えー、テステス、マイクのテスト中、マイクのテスト中。あ、漸く繋がった! いやぁ、繋がらないかと思ってんだけど、繋がったわ、良かったですね、課長!
今これを読んでいる貴方の脳内に話しかけている声低めの男性がいた。貴方の視界は閉じられていて、何も見えない状態だ。
そりゃ良かったな、これで、何処かの世界に繋がれるわけだ。
いやいや、俺も向こうの誰か、も一緒の国だと思いますよ、ほら、ジャパン! 日本! ですよ!! あー、ほらほら、あそこ、東京スカイツリー見えちゃってるでしょ! ここ、墨田区ですってば!
あぁ、そういやそうだった。で、繋がったが、向こうからの声は一切聞こえないんだったよな?
ええ、聞こえませんね。んー、でも、繋がってはいるんですよ、本の中で。
じゃあ、本を開いた君に朗報だ。これから俺達が俺達の実況をする。それは文字になり、映像になる。それまで、本を閉じずにいて欲しい。まぁ、トイレ休憩や食事、あー、仕事だったり、学校だったり、病院だったり、あるだろうが、そういうときはゆっくり閉じてくれ。パン! と音を出されると通信が悪くなる……だったよな?
ええ。なので、ゆっくり閉じてもらわないと困るんですよね。ちゃんと覚えて、と言うか、メモ取って! 二度は言わないので!!
これを手に取った君は運がいい。異世界転生、王道な話、恋愛、そういうのもう飽きたよな? 直接、こうやって話しかけていくストーリーなんて珍しいだろう? まぁ君が男でも女でも、楽しめるゲーム感覚の本だ。期待してくれ。人間は強欲だからな
あ、安心してください! 俺達だけの実況じゃ、そりゃあ飽きると思うんで、俺達の話が終われば、次の誰かに行くので!!
俺達の場合は何だったけ、か……。あぁ、現代ファンタジーだな。
もう少ししたら起動するので、それまで本を開いてお待ちを──!!
そう男たち二人の声が消えていけば、何やら、暗闇の中から、一ページ目を開きますか?
と言った白い文字が書かれては、はいorいいえ、の選択式が出てきた。
あ、説明してなかったな、君! はい、は頷く、いいえは首を振るだ!
脳内にまたさっきの男のどちらかの声が聞こえたので、自分はコクリと頷いた。
すると、視界は開けて、本の全てのページが自分の家にあったテレビに刷り込まれていく。そして、読み込んだのか、テレビに映像が流れていくのだった。
実況と選択のIFワールド 零 @azaayumi
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