第36話 オーナーの頼みは断れないわね・・・
12月に入り、街を行きかう人々も街のクリスマスの飾り付けをスマホで撮ったりして、各々クリスマス気分を楽しんでいる様子。
フェルーナでも、11月から始めた女子5人のサンタコスが好評なようで、毎日沢山のお客で店は賑わっていた・・
「今月もお客の入りは順調ね、やっぱりこのサンタコスが効いてるのねッ!」
「えぇ、先月も予算以上の売り上げだったし、今月も出だし好調よ、ウフッ」
「今月はクリスマスだし、なにかクリスマスを感じるメニューとか考案したらどうかしら?」
「それ、いいわね! 早速オーナーに提案してみるわね」
厨房の奥でイズミちゃん、有希ちゃん、薫ちゃんが売り上げ好調を喜んで、さらに新しいメニューのことも話してて、聞いてても最近の店がイイ雰囲気ってことが判る。
(売り上げがイイからみんなご機嫌だな、もしかして女子たちは売り上げがイイと臨時ボーナスとか貰えるのかな?)
女子たちは先月からサンタコスをして店内のクリスマス装飾と共に店内の雰囲気を明るくいてる、そして、今月からは僕もクリスマスコスをすることになって、任されたコスはトナカイのコスだった。
「あら、ユウトのトナカイ、よく似合ってるじゃない、わたし達のサンタコスよりユウトのトナカイコスのほうがお客にウケるかもしれなわよ~、ハハハ~」
僕のトナカイコス、どう見てもおまぬけ感満載なんだけど、そんな僕を見たタミーちゃんが、ここぞとばかりに絡んできた。
(やっぱりそうなるよね・・)
「タミーちゃんたちがサンタコスだから、僕はその相棒のトナカイコスってことみたい、でも僕はフロアには出ないから、あんまり意味無い気がするよ、アハハ~」
と、僕は照れ隠し的に適当なことを返したんだけど、タミーちゃんが予想外に・・
「ユウト、なんであんたまでトナカイコスしてるのか、ぜ~んぜん判ってないのね」
「え? 判ってない? 何それ? 僕までこんな恰好するのって、なんか意味あるの?」
「あんたはフロアに出ないけど、どこでお客が見てるか判らないでしょ、だから裏方のあんたもそれっぽくしてるのがいいの、それに・・わたし達もユウトのトナカイコス見れば楽しいってことよッ!」
ここまで言ってタミーちゃんはフロアのほうへ消えていった・・
「僕を見て楽しい? 何で??・・でも、まぁこれで女子たちのやる気が出るならイイかッ! ちょっとハズいけど・・・」
夕方の時間、客の入りは半分といったところ・・・
ちょっと手が空くとタミーちゃん達は厨房で食器洗いやコーヒー豆の準備など雑用を進めてる、ぼくも倉庫と厨房の間を行ったり来たりし、タミーちゃんやイズミちゃんの指示で動いている。
そうこうしてると珍しく店にオーナーがやっていた。
「みんな、しっかりやってくれてるかな?」
「あぁ、オーナー、どうしたんですか、こんなときに?」
イズミちゃんがオーナーをみつけ、すぐに対応する。
「うん、実は高校の冬休み中だけウチの娘をここで働かせてみようと思ってるだよ、どうだろう渡辺くん?」
「娘さんをですか・・」
「あぁ、娘も高校生だし、ちょっとは社会経験みたいなものもイイかと思っているし、娘もバイトして小遣いがほしいらしい」
「オーナー、今のわたし達のシフト体制で店は十分まわせてます、なので人手的には足りてますけど、そのうえで娘さんが働くとなると人件費の部分が想定を越えてしまいますけど、これはよろしいんでしょうか?」
「あぁ、娘のバイト代については、わたしが個人で持つよ、だから渡辺くん達は今月の予算通り頑張ってくれればいい!」
「わかりました」
「そうか、良かった、じゃあ来週からで頼むよ、娘だからといって甘やかさないで、しっかり使ってくれていいから、よろしく」
そう言ってオーナーは店を出ていった。
「どうしよう・・」
イズミちゃんが少々困っていると、薫ちゃんが寄ってきて・・
「う~ん、オーナーの娘さんじゃ、断れないしね、仕方ないじゃない、娘さんにもサンタコスしてもらって集客手伝ってもらえばいいんじゃないかしら?」
「そうね、それじゃ、このことをみんなに伝えないと」
「あぁ、それわたしがしとくわ、と言ってももうみんな知っちゃったし、後は梨絵ちゃんだけね、あとでロインで伝えるわ、ウフ」
僕は厨房の勝手口から聞いていたので、オーナーの要件はだいたいのことは判った・・
「ふ~ん、オーナーの娘がバイトか・・たしか高校生って言ってたな、だとすると僕と同い年かもな」
僕はオーナーの娘が同い年かもと想像して、ちょっと嬉しくって、ニヤけてしまっていた。
「あれ? 確かクリスマスっぽいメニューのことをオーナーに話すとか言ってなかったっけ? まぁ今の話の内容じゃイズミちゃんもそれどころじゃなかったか・・」
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