2
サラはウキウキした気持ちで、みんなの待つ城へ戻りながら、エドガーにお願いをした。
「ねえ、一つだけお願いがあるんだけど……」
二人はやっぱり手を繋いでいた。
今度は行きとは違って、指を絡めた『恋人繋ぎ』ってヤツだ。
「なんだ」
エドガーはぶっきらぼうに言う。
「『エド』って……呼んでもいい?」
「はあ……っ?」
「ずっとね、憧れてたの。あなたのこと、『エド』って呼ぶの」
エドガーは苦笑しながら、なぜか照れている。
「お前ってさ、物凄い『乙女』なんだな。最強の風術士のくせに。ギャップが半端ないぞ」
「なによ、文句ある?」
「ないない。全然ない。いいぞ、そのぐらい。減るもんじゃない」
「やったーーーー!」
サラは浮かれていた。
浮かれまくっていた。
「エド……!大好き!だいだいだいだい大好き!」
エドガーはやっぱり呆れ返って苦笑している。
「分かった分かった。分かったから少し黙れ」
「黙らないよーっ!エド、だーーーーーーーいすきっ!」
「オマエ、酒でも飲んだのか?」
「飲んでないよ。シラフだよ。これが私の通常運転だよっ!」
サラはクスクス笑いながら、エドガーと恋人繋ぎしていた手を振りほどき、ぎゅっとその腕にくっ付いて密着した。
「やめろ、おい。さすがに近い」
エドガーは力任せに振りほどこうとするが、その腕にサラは一生懸命くっ付いていた。
離さないよ。絶対に、誰にも渡さない。もう、絶対に、離さないんだから。
サラとエドガーが戻ると、まだ五人はホールにいて、めいめい話し込んでいるようだった。
サラとエドガーはさすがに手を繋ぐのはやめていた。
五人の視線が、一斉に降り注ぐ。
サラは、勝利宣言をするように言った。
「私たち、お付き合いすることにしました……!」
クロエとチネ、シルヴィア姫までが、よかったね、おめでとう……!と祝福してくれた。
「ちょっと待て。俺はまだ何も言ってないぞ。勝手に話を進めるな……!」
エドガーは呆れ返っている。
「いーーーでしょ!別に。他に好きな人居ないんだったら」
サラはびしっと人差し指を突きつけて言う。
「絶対、他の女の子に目移りなんか、する気が起きないぐらい、私に夢中にさせてみせるからねっ!」
「サラ……やめな……。そう言うとこだよ、サラの魅力を無駄に下げてんのはさ……」
ユーシスは呆れた顔で、本気で忠告してくれているようだった。
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