サラはウキウキした気持ちで、みんなの待つ城へ戻りながら、エドガーにお願いをした。


「ねえ、一つだけお願いがあるんだけど……」


 二人はやっぱり手を繋いでいた。

 今度は行きとは違って、指を絡めた『恋人繋ぎ』ってヤツだ。


「なんだ」

 エドガーはぶっきらぼうに言う。


「『エド』って……呼んでもいい?」


「はあ……っ?」


「ずっとね、憧れてたの。あなたのこと、『エド』って呼ぶの」


 エドガーは苦笑しながら、なぜか照れている。


「お前ってさ、物凄い『乙女』なんだな。最強の風術士のくせに。ギャップが半端ないぞ」


「なによ、文句ある?」


「ないない。全然ない。いいぞ、そのぐらい。減るもんじゃない」


「やったーーーー!」

 サラは浮かれていた。

 浮かれまくっていた。


「エド……!大好き!だいだいだいだい大好き!」


 エドガーはやっぱり呆れ返って苦笑している。


「分かった分かった。分かったから少し黙れ」


「黙らないよーっ!エド、だーーーーーーーいすきっ!」


「オマエ、酒でも飲んだのか?」


「飲んでないよ。シラフだよ。これが私の通常運転だよっ!」


 サラはクスクス笑いながら、エドガーと恋人繋ぎしていた手を振りほどき、ぎゅっとその腕にくっ付いて密着した。


「やめろ、おい。さすがに近い」

 エドガーは力任せに振りほどこうとするが、その腕にサラは一生懸命くっ付いていた。


 離さないよ。絶対に、誰にも渡さない。もう、絶対に、離さないんだから。




 サラとエドガーが戻ると、まだ五人はホールにいて、めいめい話し込んでいるようだった。


 サラとエドガーはさすがに手を繋ぐのはやめていた。


 五人の視線が、一斉に降り注ぐ。


 サラは、勝利宣言をするように言った。


「私たち、お付き合いすることにしました……!」


 クロエとチネ、シルヴィア姫までが、よかったね、おめでとう……!と祝福してくれた。


「ちょっと待て。俺はまだ何も言ってないぞ。勝手に話を進めるな……!」

 エドガーは呆れ返っている。


「いーーーでしょ!別に。他に好きな人居ないんだったら」


 サラはびしっと人差し指を突きつけて言う。


「絶対、他の女の子に目移りなんか、する気が起きないぐらい、私に夢中にさせてみせるからねっ!」


「サラ……やめな……。そう言うとこだよ、サラの魅力を無駄に下げてんのはさ……」

 ユーシスは呆れた顔で、本気で忠告してくれているようだった。

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