第十章:そんなお前に、朗報だ
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エドガー・エレンブルグは、深紅の名門エレンブルグの長男として生まれ、周りに望まれた通りに望まれた人生を歩み、特にそれに疑問も持っていない、ごく普通の感覚を持った十七歳の少年だった。
リファールやクロエ・カイルの熱さには正直言うと、少し引いている。
人生それなり、可もなく不可もなく、楽しく過ごしていければそれでいいんじゃないかと思うのだが。
そんなエドガーは、恋愛についても、『それなり』だった。
幸い相手に困ることはなかったので、それなりに経験はしてみたものの、これまで十七年間の人生で、本気で誰かに夢中になったことは一度もなかった。
フレイ・アサルはエドガーがサラを目で追っていると指摘していたが、それは単に彼女の術士としての実力を買っていただけで、本人には申し訳ないのだが、サラ・オレインのことを恋愛対象として見たことはなかった。
そもそも、この狭いコミュニティで恋愛することのメリットを、それほど感じていなかったとも言える(以前にそれで酷い目にあったことがあるのだ)。
そう言うわけなので、
死ぬほど意外すぎて、笑いが止まらなかった。
羨ましいな。
『青春』してるじゃん、ユーシス。
それにしてもユーシスの行動は、どう考えても『自爆』としか言いようがなかった。
「男になんか興味はない」とでも言うように、いつも澄ました顔しているサラ・オレインが、ユーシスに一途なのかと思いきや、それはまったく逆の話で、サラのことを一途に思っていたのはユーシスの方だったと言う事実を、わざわざ恋敵である自分に教えてくれたのだから。
そして、そんなユーシスの愚かな行動のおかげで、眼中になかったサラ・オレインのことが急に視界に入ってくるようになった。
悪くない。ぜんぜん、悪くない。
話の流れからすると、サラは自分に好意を持っているようだし、外見も中身も、自分に釣り合わない相手というわけでもない。
いわゆる『勝者の呪い』というやつだ。
軽はずみだったな、ユーシス。
お前の大好きなサラ・オレインの値がどんどん上がってるぞ。
自らの愚かな行動によって、な……!
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