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「おいっ、お前ら……いい加減にしろ。全部聞こえてるぞ……!」
エドガー・エレンブルグがユーシスの頭をガツンと拳で小突いて言った。
「い、痛いなあ……!野蛮なヤツっ。これだから深紅はイヤなんだよ。すーぐ手を出すんだからなっ」
ユーシスがベーっとエドガーに舌を出しながら言った。
「今日からは指導教師も付かないんだから、気い抜いてると、痛い目見るぞ」
暑苦しいヤツではあるが、意外に真面目なところもあるんだよな、この男。リファール様が友人と認めるだけのことはある。
チネがのんびりとそんなことを思っていたら、すぐ傍にいたサラが地を蹴った。
「キャッ……」
チネは思わず声を上げる。
一瞬のことだった。エドガーの背後から忍び寄って来ていた巨大なムカデを、サラの風術が一刀両断にする。
虫系モンスターの紫色の血液が、エドガーの頬に散った。
「気を付けなさいよ、エドガー」
サラは涼しい顔で言う。
「わ、悪い……」
エドガーは手の甲で頬を拭いながら言った。
さすがは学年トップの風術士だ。素早さと物理攻撃力の高さだけでいったら、この五人では断トツだった。
こんな郊外の森の中には当然魔物への結界などないので、時折このように魔物が現れる。
ただ、学院七年生ともなれば、先程のような雑魚モンスターが現れたぐらいでは、誰も動揺しない。
淡々と処理するだけだ。
「さてと、目的地に到着しました。みなさん」
索敵でパーティーを先導してくれていたリーダーのクロエがくるりと振り返って言う。
目の前に、目指す魔窟、帝都南部の『マラノ樹海の洞穴』が、口を開けていた。
巨大な木々の足元にぽっかりと黒く口を開いている。入り口は狭く、身を屈めないと入れそうにない。
「今日はここで野営し、明日の朝、洞穴に潜ります。ユーシス、結界をお願いね」
「了解です、リーダー!」
ユーシスはクロエに命じられて、俄然やる気を出すと、真面目な顔でビシッと返答する。
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