第8話 好きな声優とコーヒーを
もちろん手錠でつながれている男性も美結のそばで手伝う。
「あなたとこうして同じ部屋にいるなんて、不思議だね」
「まるで同棲カップルみたい」
「なによ、手錠プレイの変態カップルって!」
「はい、コーヒーできた。そこに座って一緒に飲も」
「美味しい」
「あの、秘密の情報なんだけど、私今度事務所変わろうかなって考えてるんだ」
「最近できた小さいプロダクションが、私にぜひ来てほしいって」
「今の事務所も、時々仕事受けてくれるなら移籍してもいいよって言ってくれてるし」
「そのプロダクションの担当の人、直接会った事はないんだけど、すごく優しくて……」
「その人、私の事を何でも知ってるんだ。注目してくれてたんだって」
「この転籍話、あなたはどう思う?」
美結は男性と手をつないで、指をからめ始めた。
「いいんじゃないかって? 良かった。じゃあ決めようっと」
「ね、あなたは私のどこが気に入ったの? 私はあなたの優しくてもの静かなところ」
「わたしの声? 声か~。まあそうだよね。どういう声?」
「歌っている時が特にいい? あ~そっか~。なるほど」
「え、歌って欲しい? 今? う~ん、どうしようかな~。少しだけならいいけど」
♫美結が二小節ほど適当な歌を歌う
「どう? いいでしょ、えー、うまいって? ありがとう!」
この二人、薬が効いているせいか、緊張感が無くなっている。
「ねえ、せっかく手がつながれてるんだから、踊ろうか?」
//SE:スローなBGM
二人は立って両手をつないで踊り始めた。男性の脚はテーピングのおかげで多少なら問題無く歩ける。
「背、伸びたね。昔に比べてカッコよくなった」
「ちょっと胸借りるよ」
美結は男性の胸に顔をつける。男性は美結に彼氏がいるか聞く。
「え? 私に彼氏がいるのかって?」
「さあ、どうでしょう?」
「あなたこそどうなのよ? 付き合っている彼女がいるんじゃないの?」
「いる訳が無いって、どうして?」
「私を追いかけてるから? もう、そんなことばっかり言うんだから」
「私だっていないよ。 仕事が忙しすぎてそんな暇ないんだから」
「結局、何が言いたいの? 想像つくけど……」
男性が、「付き合ってくれないか?」と言った。
「あなたなら…… いいよ、付き合っても」 言っちゃった。
「でも忙しいからあまり会えないかも」
すると、男性が爆弾発言をした。
「え、さっき話したプロダクションの男性ってあなたですって!?」
「あり得ない……」
でも美結が良く考えると辻褄は合った。担当はすごく優しかった。私の事やたら詳しかったし。
「公私ともども私を狙っていた訳ね?」
「やるわね、サッカー小僧」
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