第7話 急接近 

 犯人から逃がれ、男性の部屋に隠れた手錠でつながれた二人。


 男性は美結の幼馴染であったことが発覚した。

 緊急事態なのに二人は急接近。


「ちょっと~、身体見せてよ。背も伸びたからわからなかったよ」


 男性をベッドに押し倒し、美結はその上に四つん這いになり上から男性の体を見回す。いきなり美結さん、どうしたのだ? 幼馴染ってわかったからって、突然その行動はどうかと…… 明らかに薬が効いている。


「いい体してんじゃん。腹筋もあるし。私が中学の時にビシバシ鍛えた成果だね」


「でも足は相変わらず短いね(笑)」 ほっとけ! と男性。


「むきになってる、ハハハ」 美結が笑う。


「顔が、いい男になったねえ。童顔は変わらないけど……」


「で、私はどう? 変わった?」

「可愛くなったって、このー、お世辞がうまいんだから! それじゃあ昔の私が可愛くなかったみたいじゃん」


「昔も可愛かった? 言わないでよ、バカァ」 


 ピシャッとびんたする美結。顔が赤くなっている。


「え? どこ見てるの? エッチ!」 

 

 美結が胸を見ていた男性の目を手で隠す。体勢がくずれて抱き着く形になる。


「もう。会いたかったんだから~」


 美結はごろりと男性の隣に転がる。そして呟く。


「もう忘れてたよ。過去の人……」


「また会えるなんて。でもなぜこんな事件のタイミングなのだ?」


「もしかして私の事デビューした時から追いかけてたの?」男性がコクンと頷く


「ずっと?」 美結が聞くと男性が「そう」と答える。


「バカだね~ 言ってよ。本当に…… 気がつかないよ……」



 ◇ ◇ ◇


 

 5分くらいしてから美結がポツリと言った。


「今でもロビーで事件が続いているなんて想像できないね」


 男性が部屋の電話を使って外部に連絡することにした。ロビーを占拠している犯人に部屋がばれるかもしれないが一か八かだ。男性が誰かとしばらく話をしてから電話を切った。


「電話どこにかけたの? 警察? え、犯人との交渉が大詰めを迎えてるって? よし、もう少しの辛抱ね。でもこの部屋に救助には来れないの?」


「だめか、しかたがないね」


「そう、ここでじっと待機してなきゃいけないのね」


「コーヒーでも飲みますか」


 美結が言った。

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