第6話 告白

 犯人から逃亡している際中なのに、疲れた美結と男性はベットに並んで横たわっていた。疲れているだけではなく、明らかに最初に飲まされた怪しい薬の効果があるようだ。少しハイになっている。


「疲れましたねー。 全く手錠でつながれたり、この状態でトイレ行ったり、プールに飛び込んだり……」

「とりあえず逃げられたけど、これからどうなっちゃうんですかね~」


 美結は男性の方を向く。男性のシャツが切れているので脇腹が見えている。


「わきが見えてますよ。あ、私の方は見ないで下さいね」


 男性は少しわきを締めて苦笑いする。それを見て美結は自分でも思わぬ事を口走り始めた。たぶん、薬のせい……


「私の事、どう思います? 可愛いですか? 私とこんな近くにいられるなんて滅多にないんですよ。これでも売れてる声優なんで」


「そう言えば、あなた私のこと知ってましたよね? ん? 何で顔そむけるんですか?」


「……え? あなた、私のファンなの? 今日のイベントも見てたんですか? しかも昨日からホテルに泊まり込みで?」


「そうだったんですか! どうしてそれを最初に言わないんです? 言ってくれればもう少し優しくしたのに……もう!」


 美結は男性を突っついた。男性は苦笑い。


「さっき階段で転んだせいで顔に少し擦り傷ができてますよ」


 美結が左手で男性の頬をなでる。手錠された右手で男性の左手を握る。


「私を助けてくれてありがとう」美結の言葉に男性は照れる。


「あ、足は何か手当しますか? さっき階段でくじいたんですよね、え? テーピングを持っている? 元々怪我気味で常備しているんですか?」


「じゃ、巻きましょう。ちょっと腫れていますね」


 美結は丁寧に脚にテーピングを巻き始める。


「上手ですか? 私、昔中学生の時、サッカー部のマネージャーしてたんです。10番の子に良く巻いてあげてたんですよ。その子幼馴染で……」


 美結が何かに気がつき驚く。


「この足……まさか」


 美結が驚いた顔を上げて男性を見つめる。


「この右足のくるぶしの傷! あなたはまさか……」


 男性が白状する。なんと彼は美結の中学校の同級生で幼馴染だった。


「顔が随分変わったから分からなかった。でもどうして? 中学校を卒業してから一度も会ってなかったし、連絡さえ……」


「ずっと、私の事を想っていたの? うそ……」


「なんで言ってくれないのよ? 私、卒業する時あなたに言ったじゃん。絶対連絡頂戴って! 別々の高校だけど連絡は取りあいましょうって!」


「え、私が声優目指すのを邪魔したくなかったって? そんなの関係無いよ! 私、てっきりあなたに嫌われたと思ってた!」


「知ってた? 中学の時、私ずっとあなたの事、好きだったのよ」


「このバカ!」


 美結はテーピングを付け終わり、男性の脚をピシッと叩いた。少し涙ぐんでいる。

 男性は美結にごめんと謝った。

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