第5話 お着替えですが……

 男性の部屋に無事逃げ込んだ二人。


「あの、このびしょびしょの服を何とかしたいです。手錠がじゃまですけど」


「え? 着替えの服と新品の下着があるんですか? 男物、ですよね……」


「どうしよう。もしかしたら犯人が捜しにくるかもしれないし……」


「でも我慢できません。それでいいので着替えさせてください」


 男性が着替え一式を取り出して美結みゆに渡す。


「あ、ありがとうございます。ではまた例によって、バスルームで腕だけだしてください。そこで着替えます」


 バスルームに行く二人。男性は外。美結が中で濡れた服を脱ぎ始める。

 しかし……


「あのう、服が完全に脱げません。手錠がじゃまで……」


 上の服が美結の右腕から抜けないことが判明。美結は困った。とりあえず手錠の近くにまとめてぶら下げた状態にする。


「あの、絶対に見ないで下さいね。上は裸なんですから」


 そう言って美結はバスタオルで体を隠しながら新しい男物のシャツを着始める。左腕と頭は通せたが……


「あの、右腕だけ通せません💦」


 右の胸が見えたり隠れたり。これではどうしようも無い。

 美結は悟った。


「はさみ持っていますか? シャツ切っていいですかね?」


 美結はシャツの右わきの下を切り開きた。これでとりあえず見た目は着たような形になる。切れてるけどね……、 そして何とか上半身は着終わった。


 次は下半身。しかし下半身の着替えは意外と問題無く終わった。ただし男性用の下着のため新品とは言え、すごく嫌な感触だった。


 それから男性も着替えを行った。やはり彼も左腕を通すためにシャツを切り開いた。


「終わりましたね。胸のところは絶対見ないで下さいね。どうしてあなたブラジャーを持っていないんですか! もしくは裁縫道具!」


 (そんな理不尽な)男性は思った。


「くじいた脚は大丈夫ですか? 少し休みますか。もうここが犯人に見つかったら覚悟を決めましょう」


 二人はベッドに座る。男性が美結の濡れた髪の毛をバスタオルで拭いてくれる。


「あ、ありがとうございます。ドライヤーもかけないとですね。じゃあ私もお返しで、男の人の髪は短くていいですね。すぐ乾くから……」


「あの、何かすごく疲れました。眠くなってきたかも。やっぱりあの薬って睡眠薬なんですかね?」


「ちょっと横になっていいですか? あ、あなたも横にならないといけないですよね。じゃ、一緒に」


 手錠でつながれた二人はベッドに仰向けで並んで寝る。

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