第4話 プールと言えばお約束

 美結と男性はトイレを出ると、ロビーへ戻ろうとした。

 しかしその時、男性が美結にとんでもないことを言い出した。


「え、このまま逃げようって? 手錠でつながれたまま? どこへですか?」

「この奥にフィットネスルームがあるんですか? でも犯人が探しにきますよね?」

「そこから中庭のプールを通って、別の所に抜けられる? 詳しいんですね。でもプールって嫌な予感がしますけど……」


 男性がこのホテルに詳しそうなので美結は素直に従う。二人はフィットネスルームにこっそり逃げて行った。


「ここまではうまく行きましたね。プールへも出られそうですね」


//SE:犯人達が捜しにくる声


「早くプールへ! でも向こう側に抜けるのが間に合わないよ、どうする!?」

「隠れる場所も無さそうだし…… え、まさか?」


「いやいやいや、プールの中はありえない。私泳げないしー」

「えー、大きく息を吸ってえ、って、マジ? フーッ(息を吸う音)」


//SE:プールに飛び込む音


 二人はフィットネスルームから死角になるプールの手前の壁際に潜った。

 水の中で美結はあがく。


「う、ぐ、ぐ、苦しいですう」


 犯人達はフィットネスルーム内とプールを見渡し、美結達がいないと判断すると、フィットネスルームを出て別の場所に探しに行った。


「プハア」


 美結と男性が水面に顔を出す。犯人が去ったことを確認してプールを出る。


「何とか、気付かれずに済んだみたい。これからどうするんですか?」


「あ、向こう側の客室エリアに行くんですね」


 二人はプールの反対サイドから客室サイドの通路に入る。


「びしょびしょー」


「え、ここからあなたの部屋に行けるんですか? それは良かった」


//SE:通路の先から犯人が捜しに来た声が遠くに聞こえる。


「来ましたよ。どうします?」

「はい、そっちの非常階段ですね、え、一旦下に行く? どうして?」


「見つかっちゃった!」


 犯人が2人を見つけて追ってきた。

 2人は非常階段で地下駐車場に駆け降りる。


「きゃあー」


 階段の途中で美結の足が引っかかる。男性が美結をかばって転げ落ち足を挫く。

なんとか階段下のドアを出る。


「すみません! 大丈夫ですか? え、ドアを締めて鍵をかけろって? は、はい」


 鍵をかけると、犯人達がドンドンと叩く。男性は脚が痛くてまともに歩けない。


「え、あの先にエレベータがあるんですね。それで上に行くと。わかりました」

「じゃあ、私の肩につかまって!」

 

 犯人達を地下方向に誘導したのは男性の作戦だった。これで犯人を巻いた。

 二人は支え合いながらエレベータにたどり着き、7階まで上がる。


「着きました。何号室ですか? 712号室ですね。わかりました」


 美結は男性を支えて通路を進む。


「あの、足大丈夫ですか?」


「え、私につかまって歩くことができるので役得ですって? もう!」


「服がびしょびしょだし、くっついているんですから、すごく恥ずかしいんですよ!」


「髪からいい匂いがする? こんな時に変な事言わないで下さい!」


「それから胸は触らないでくださいね。服が濡れちゃったから見るのも禁止です!」



 二人は無事、男性の部屋に入ることができた。

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