第3話 我慢ができない

 ホテルのロビーで囚われている美結みゆたち10人の人質。事件開始から2時間が経過した。その間に2組4人が奥の方に連れていかれた。美結達が連れていかれるまであと2時間! 


 手錠を付けてから2時間半が経過した。ある生理現象が美結を苦しめることになる……


「あのう、すみません」美結が手錠でつながった男性に話しかける。


「こんな状況で言いづらいんですが……おトイレに行きたいのですが……」


 男性が手で目を覆う。(仕方が無い……)


「あ、交渉して頂けるんですか。泣いて喜びます」


 男性が犯人と交渉する。何とかトイレに行く許可はもらえた様子。


「ありがとうございますー(泣)え? でも手錠は外せないですって? 逃げるから? そんなあ」


「仕方ありません。では一緒に行きますか。でもどうすればいいんだろう?」


 ロビーの奥にあるトイレに向かう。女子トイレに二人で入る。美結は考えた。


「あのう、私は入りますが、あなたは腕だけ入れて体はドアの外にいてください。何なら腕を切ってもいいですよ、もしまた生えてくるのならですが……」


「はい、冗談です。中を覗いたり、聞き耳を立てないこと。わかりましたか?」


「え、片方の耳しか塞げない? そんなの知りません! 二の腕とか使ってやってくださいよ」


 男性は頭の上に腕を回して何とか片腕で両方の耳を塞いだ。首が曲がっている。


「ぷぷっ。はい、お上手です。それで待機しててください」


 美結が中で準備を進めるが……


「あれ、片手だとうまく服が脱げない……」


「すみません。私の動きに合わせてしゃがんでもらえますか? 見たら殺しますよ。私の身体に触ってもしばきますからね。手はグーにしてください。じゃあ、はい下に。はい次は上に、ちゃんと合わせてください!」


「はあ、やっと脱げた」


 …………


 美結は何とか用を足した。これでトイレミッションをコンプリートした、かと思いきや……


「え? あなたもしたくなった?」


「だめです。がまんしてください。不公平ですって? いやです。男子トイレなんて行きたくありません」


 とはいうものの、結局二人は男子トイレにも行くことになった。

手錠につながれた男性も何とか用を足すことができた。一部始終をすぐ傍で見た美結はぼやく。


「うー、どうしてこんな羽目になるんだろ……」


 もちろん私は腕だけあずけて男性に背を向けましたよ。でも私の手が男性に近かったのですごく嫌でした。しかも一連の動きでつい目が動いてしまって……


「見たくないものを見てしまった……」 美結は嘆いた。 



 続く……

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