第4話


第2王女殿下が居られる部屋の前に案内され、侍女がノックをして僕の来訪を告げる。


室内から別の侍女が顔を出して僕の入室を促す。

僕は部屋に入ると第2王女殿下に一礼をして、


「お呼び頂きありがとうございます。ラーレ・ライニング、第2王女殿下の下に参りました。」


すると、第2王女殿下がクスクスと笑いだした。

しかし、まだ第2王女殿下の許可を得ていないので、頭を上げるわけにもいかず、頭を下げたままにしていると、


「いきなり笑って申し訳ありません。別に、勇者ラーレ様のことを馬鹿にして笑っているわけではありませんのでお気を悪くなさらないで下さい。」


そう言って、僕に対して頭を上げるように促してくれる。


僕が頭を上げ、第2王女殿下の顔を見ると、優しそうな笑顔を浮かべていた。


「先ほどは申し訳ありません。婚約をしたのに、堅苦しい挨拶をなされた勇者ラーレ様が微笑ましくて笑ってしまいました。2人の時はサイサリスと名前を呼んでいただけると嬉しいです。」


僕は第2王女殿下の言葉に対して頷きながら、


「サイサリス王女殿下、名前を呼ぶことを許していただきありがとうございます。どうぞ、私のこともラーレとお呼び下さい。」


すると、サイサリス王女殿下はむーっと頬を膨らませ、


「婚約者なのですから、サイサリスで構いません。」


僕は手を振り、


「いえいえ、そういうわけにはいきません。」


サイサリス王女殿下はまたむーっと頬を膨らませていたので、僕は根負けして、


「では、サイサリス様という呼び方でも問題ありませんか?」


サイサリス様はニッコリと笑われて


「はい!その呼び方で問題ありません。私はラーレ様と呼ばせていただきますね。」


そこまでやり取りをすると、侍女が僕とサイサリス様に紅茶を出してくれた。


僕はサイサリス様と婚約はしたが、もちろん婚前交渉はもってのほかなので、2人と言っても、僕達がいる部屋の中には侍女が1名、女性の護衛騎士が1名の計2名、部屋の扉の前に女性の護衛騎士が2名待機している。


僕は緊張しすぎていて、よくわからないけど、とりあえず出された紅茶を一口飲む。


僕は紅茶の味なんてよくわからない僕でも美味しいと思えるほどの紅茶だった。

多分、入れ方も紅茶の品種も良いものなんだろうな。


僕達は、一通り、紅茶を楽しんだことで、場の空気がなごみ始めたのを確認したのち、サイサリス様が話し始めた。


「王族としては当然の事ですが、結婚相手は選べません。それも私の運命だと思っております。

また、最近では魔物も多く現れるようになり、他にも、まるで悪魔に与えられたような役職(ランク)を使い、悪事を働く人も出てくるようになっているとのこと。勇者としてラーレ様も今後お忙しくなると思います。

王族とはいえ、私も1人の女性として、幸せな結婚というものには夢を抱いています。婚約は突然でしたけど、ラーレ様とは今後、愛を深めて、2人で支えてあっていきたいと思っております。」


僕はサイサリス様の言葉に頷き、


「僕もサイサリス様と愛し合い、夫として、サイサリス様を支えていきたいと思っています。」


僕は自分の言った言葉のせいで、心が痛む。ラミアの去り際の背中に声をかけられなかった。自分が嫌になる。

しかし、僕はラミアへの想いを奥底に封じ込め、言葉を繋ぐ。


「本日は時間が許す限り、サイサリス様と話をして打ち解けたいと思っております。」


サイサリス様は僕の言葉に頷き、


「ありがとうございます。私はラーレ様の功績はよく聞いております。しかしながら、生い立ちに関しては、今まで聞いてはおりませんので、差し支えなければお尋ねしてもよろしいでしょうか?」


僕はサイサリス様に請われるままに自分の生い立ちについて話はじめた。

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