第2話
僕は取り落としたハンマーを拾い、周囲を確認すると周りにはまだゾロゾロとゴブリンウォーリアやホブゴブリンなどもウロウロしている。
多分、僕がゴブリンロードを倒したことにより、部下のゴブリン達は何をしていいのか分からずに本能のままに周囲の人間を攻撃しているのであろう。
僕が近くにいるゴブリンウォーリアに攻撃しようとして走り始めると、空から炎が降り注いで周囲にいるゴブリン達を焼き尽くしていった。
これは、ラミアが得意とする魔術『炎の雨』だな。
僕とクリス様がゴブリンの焼ける臭いにしかめっ面をしていると後ろから、女性が少し怒った声で話しかけてきた。
「あら!勇者と閃光の騎士様は戦闘中でも、ずいぶんと余裕がありますのね。周りにゴブリンが彷徨いているにも関わらず仲良く談笑されているのですからね。」
そう言って、ニッコリと笑顔を浮かべている銀髪で紅い目を持つ美女がゆっくりとこちらに向かって歩いてきた。
「えっと、ラミアごめんね。そして、助けてくれてありがとう。」
僕は素直に謝る。
僕の幼馴染のラミアは、象牙の塔に所属する魔術士で『焔神の申し子』という役職を授かった女性だ。
その役職を表すがごとく気性の強い女性で、僕なんかはいつもやり込められている。
まぁ、実際に僕が悪いことが多いので、彼女には頭が上がらないんだ。
「謝るのは後!ゴブリンロードはラーレが倒してくれたけど、まだまゴブリンロードの配下は残っているんだから、ケネルもクリス様も掃討をお願いします!」
そうラミアに言われると、僕とクリス様はバツが悪くなって、二人して苦笑いをする。
「よし、ラーレ、ラミア嬢の言うとおりだ。ゴブリン共を全滅させるぞ。」
「はい!」
僕はハンマーを握りしめ、残敵の掃討に入る。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2時間後
僕達はゴブリンロードの軍勢を殲滅、今は残敵がいないかどうか、周囲を含めて捜索中だ。
捜索はクリス様が中心になって指揮をとっていて、僕は味方の怪我を治療中だ。因みに魔術士のラミアは魔物の死体処理と土地の浄化作業を部下の魔術士達と行っている。
僕は本来の役職は神官なのだが、
勇者として扱われている。
これには理由がある。
僕は成人しているのだけど、実はまだ役職(クラス)が発現していない。
本来、魔術士の魔術や神官の回復術はクラスが発現してから使えるようになるのだが、僕はクラスが発現していないのにも関わらず、回復術が使えるようになったんだ。
そして、『戦士』の役職を神から与えられた父親の形見であるハンマーを振るい、ゴブリンやゴブリンウォーリアなら倒すことができる僕・・・、そう役職(クラス)が発現していないのにも関わらずだ。
役職が発現すれば、かなりの役職が発現するに違いないなんて言われて、それまでは、両親が魔物に殺され、孤児として扱われていたのに、回復術が使えるからとして神官見習いとして神殿で勤務をすることを命ぜられ、始めは閃光の騎士クリス様が率いるパーティーの一員だったのにも関わらず、いつの間にか僕は勇者として扱われていた。
だけど、血統や階級を重要視する人(特に貴族や大商人など)からは「見習い勇者」などと陰口を叩く人もいる。
だけど、クリス様は伯爵の長子という立場にも関わらず、僕を抜擢してくれて、勇者として認めてくれているし、幼馴染のラミアも象牙の塔ではかなりの高位の魔術士にも関わらず、僕を引き立ててくれている。
そんなことを考えながら、怪我人の治療していると、周辺の索敵をされていたクリス様が帰ってきて、僕に話しかけてくれた。
「勇者ラーレ、騎士達の治療、ありがとう。周辺を捜索したが、この辺りには魔物はもういない。」
僕はクリス様に頭を下げ、
「戦闘終了後、間もないのに周辺の索敵ありがとうございます。ラミア達、魔術士が行っているこの地の浄化が終了後、王都に帰還しましょう。怪我人は馬車に乗せて護送します。」
僕はそうクリス様に告げて、軍の騎士達にも伝達させる。
しばらくして歓声が聞こえたということは、皆も早く帰還できることに喜んでいるらしい。
歓声が聞こえたクリス様は苦笑いをして、
「まったく、あいつらときたら、無事に帰還するまでが遠征だって言っているのにな。」
僕はクリス様の苦笑いを見ながら、
「まぁ、今回は急造軍団だったので、騎士だけでなく、普段はあまりでてこない神官や冒険者もいますから。」
と、取り成す。
冒険者は普段は、5〜7人のパーティーで動くし、神官なんて大規模遠征以外では、神殿からでてこないからね。
騎士が率いており、堅苦しい軍規に縛られた遠征はさぞキツかっただろうと思う。
しばらく、僕とクリス様は仮設テントで休憩した後、ラミアからの浄化終了の報告を受けて、王都に帰還を始めた。
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