君と一緒なら
@so2lapo
君と一緒なら
私はもう二度と吹奏楽をやれないと思っていた。
中学三年生の時、不登校になった。
理由は自分にもわからない。
突然、身体が動かなくなった。
私はごく普通の中学生だった。
勉強もそこそこできて、友達もいた。
将来の夢も、進路もしっかりと考えていた。
学校も苦ではなかった。
はずなのに。
両親は
「
の一点張り。
兄も
「高校までは出た方がいいから何が嫌か知らないけど中学も行っとけ。」
と言う。
終いには妹から
「お姉ちゃんばっかりずるい。私も学校休みたいのに。」
と言われた。
私にだってどうして行けないのかわからないのに。
学校に行けない自分が嫌なのに。
これからどうしたらいいのかわからないのに。
そんな時、同じ部活で友達の
「音葉!久しぶり!大会の曲決まったよ。もし、来れそうだったら部活だけでも来て!最後の大会だしさ!」
「音葉、元気ー?音葉のパート後輩だけになっちゃうよ?」
「音葉少しでもいいから部活に顔出してほしいなー。久しぶりに音葉の音聴きたい!」
連絡をくれた唯一の友達だったのに、私は結局行けないまま中学を卒業し、通信制の高校に進学した。
時は流れ、私は大学生になった。
私はサークルに興味はなかったものの、友達ができなくなってしまうのは嫌だからどこかに入ろうと決めていた。
しかし、興味のあるサークルが本当にない。
運動が苦手だから運動部に入るつもりは全くない。
かと言って文化部もこれと言ったものがない。
吹奏楽は色夏が気にかけてくれたのに行けなかったから、もうやらないと決めていた。
そんな時、後ろから急に話しかけられた。
「音葉……だよね?」
振り返るとそこには色夏が立っていた。
私はどうしたらいいかわからなかった。
色夏からの連絡に何も応えられなかった。
なのに、色夏と再会してしまった。
どうしようと思っていたら色夏が口を開いた。
「サークル、決めた?」
「あ、えっと、ううん。まだ決めてない。」
「じゃあさ、一緒にまた吹奏楽やらない?」
「え?」
「あ。もちろん嫌じゃなかったらだけど。私さ、音葉の音、すごく好きだったんだよね。繊細で、温かくって、優しい音。最後の大会、一緒に出られなかったのは残念だったけど今からでもまた音葉の音聴けるかも!って思っちゃって。それに私、中二の頃ちょっと辛かったことあって。でも、その時に音葉の練習中の音を聴いて、励まされた感じがしてもう少し頑張ろうかなって思ったこともあってね。誘っちゃった。でも、やりたくなかったら全然断っていいから!」
私は色夏が私の音をここまで聴いていたことを知らなかった。
嬉しかった。私の奏でる音をこんな風に言ってもらえて。
「私、吹奏楽やろうかな。」
そう呟くと目の前には嬉しそうな笑顔。
「一緒に音色を奏でよう。また一緒に。」
君と一緒なら @so2lapo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます