第2話出会いと約束

小比類巻健一と綾小路檸檬の出会いから、時間はあっという間に流れていった。二人が出会ったあの夕暮れの日から、高校生活の三年間が幕を開けた。毎日の学校生活は、一見普通の高校生と変わらないように見えたが、その裏には二人の特別な絆が育まれていった。


一年生の春

健一と檸檬は同じクラスに配属され、すぐにお互いを「相棒」として認識するようになった。教室の隅で、二人はよく何気ない会話を楽しんだ。クラスメイトたちが彼らを不思議な目で見ることもあったが、そんな視線は二人には気にならなかった。


檸檬は明るく社交的な性格で、クラスでもすぐに人気者になった。一方で、健一はどちらかと言えば静かで、自分の考えを内に秘めがちだった。しかし、檸檬の影響で少しずつ彼も自分の意見を口に出すようになり、次第に周囲との関わりを楽しむようになっていった。


放課後の時間は、二人が特に絆を深める場だった。檸檬の誘いで、彼らは町の隅々まで探検し、何か面白いことを見つけるために時間を費やした。港にたどり着くと、二人は静かな海を見つめながら、将来のことを語り合った。


「俺たち、いつか本当に海に出ようよ。」


檸檬は何度もそう言い続けた。健一はそのたびに微笑み、静かに頷いた。檸檬との時間は、健一にとって特別なものだった。彼は檸檬の自由な発想と行動力に引かれ、次第に自分も変わっていくのを感じていた。


二年生の夏

時間が経つにつれて、二人の友情はますます深まった。夏休みには、檸檬の提案で自転車で遠出することが恒例になった。ある年の夏、二人は片道50キロの距離を自転車で走り、海岸線を目指す旅に出た。道中で立ち寄った小さな村で、二人は地元の人々と交流し、その地域特有の風景や文化に触れた。


「こんなところにも、まだ知らない世界があるんだな。」


健一は海辺で立ち止まり、波打ち際で足を浸しながらそう呟いた。檸檬は彼の隣に立ち、同じように海を見つめていた。


「そうだな。でも、俺たちの目指す場所はもっと広いんだ。ここじゃなく、あの水平線の向こう側さ。」


檸檬は広がる海を指差し、健一にその先を見せようとするかのように語った。二人は言葉を交わすことなく、ただその景色を共有し、心に刻んだ。


三年生の秋

三年生になり、進路を考えなければならない時期がやってきた。周囲の友人たちが進学や就職に悩む中、健一と檸檬は自分たちの道を模索していた。


「お前、どうするんだ?」


ある日、檸檬が放課後の教室で健一に尋ねた。彼は窓の外を眺めながら、どこか遠くを見つめていた。


「俺は…やっぱり、海に出たい。けど、現実を考えると難しいのかなって。」


健一の言葉には、夢と現実の狭間で揺れる葛藤が見え隠れしていた。檸檬はしばらく黙って考えてから、口を開いた。


「俺たち、いつかその夢を叶えようよ。進路がどうであれ、いつかは必ず海に出るんだ。約束だ。」


檸檬の決意に満ちた言葉に、健一は再び勇気をもらった。彼は檸檬の手を握り返し、しっかりと頷いた。


「約束だ。」


それは、二人にとって何よりも大切な誓いとなった。三年間を通じて培われた友情と信頼が、二人を強く結びつけていた。


高三の冬が近づく頃、二人の関係はさらに深まっていた。健一は、檸檬の存在が自分にとってどれほど大きな支えになっているかを実感していた。そして、檸檬もまた、健一と共に歩んできた日々を誇りに思っていた。


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