第3話夢への決意

高校三年間を共に過ごし、絆を深めてきた小比類巻健一と綾小路檸檬。しかし、彼らの旅はまだ始まっていなかった。夢見るだけではなく、実際に行動に移すときが来た。二人の友情と共に、その夢への決意が固まっていく。


高校を卒業し、それぞれの道を選ぶときが近づいていた。檸檬は、進学せずにアルバイトをしながら夢を追い続けることを決めていた。健一は、大学進学の道を考えつつも、心のどこかで檸檬と共に旅に出たいという思いを捨てきれずにいた。


ある日、二人は海辺にある古びた造船所を訪れることにした。その場所は、地元でもあまり知られていない、忘れ去られたような場所だった。錆びついた船の残骸が並ぶ中、檸檬は目を輝かせながら言った。


「ここで船を作ろう。」


その言葉に、健一は驚きと共に胸の高鳴りを感じた。これまで何度も夢として語ってきたことが、現実のものとして目の前に現れた瞬間だった。


「でも、俺たちにそんなことができるのか?」


健一の問いに、檸檬は自信満々に頷いた。


「できるさ。俺たちならできる。これまでだって、何だって一緒に乗り越えてきたじゃないか。」


檸檬の言葉に、健一は心を決めた。檸檬と共に、この場所で船を作る。そして、海に出る。彼らの夢が、いよいよ現実になろうとしていた。


翌日から、二人は早速船作りの計画を立て始めた。まずは資料を集め、造船について学ぶところから始めた。図書館に通い詰め、船の設計図や必要な材料、工具などを調べる日々が始まった。


健一は、船作りが単なる夢物語ではないことを理解していた。知識がないまま進めば、失敗する可能性が高い。だからこそ、二人は慎重に準備を進めた。設計図を描き直し、材料を探し、予算を計算する。その過程で、彼らの中に強い覚悟が芽生えた。


ある日、健一は檸檬と一緒に近くの廃材置き場を訪れた。そこで彼らは、使えそうな木材や金属を集め始めた。ゴミの山の中から、自分たちの夢の一部になる素材を探すことは、思った以上に大変な作業だった。しかし、二人は疲れを感じることなく、目標に向かって進み続けた。


「こんな風に、一から自分たちの船を作るなんて、誰も思わないだろうな。」


健一はそう呟きながら、廃材を拾い集めた。檸檬は微笑みながら頷いた。


「でも、それがいいんだよ。俺たちの船だから、俺たちが作るんだ。」


二人は週末ごとに廃材置き場を訪れ、少しずつ必要な材料を集めていった。集めた材料を古びた造船所に運び込み、作業を進める日々が続いた。最初はどうなるか不安だったが、次第に船の形が見えてくると、二人の期待はますます高まった。


しかし、作業は決して順調ではなかった。何度も設計を見直し、必要な道具が揃わずに作業が中断することもあった。それでも、二人はお互いを励まし合いながら、一歩一歩前進した。


ある夜、健一は作業の手を休めて、星空を見上げた。澄み渡る夜空に輝く星々は、まるで彼らの夢を祝福しているかのようだった。檸檬もその隣に座り、同じように空を見つめた。


「この星の下で、俺たちは船を作っているんだな。」


檸檬が言った言葉に、健一は深く頷いた。二人が共有するこの瞬間は、彼らの絆をさらに強くした。


「檸檬、俺は本当に、この船でお前と海に出たい。」


健一の言葉に、檸檬はしっかりと健一の肩を叩いた。


「そのために、俺たちはここまでやってきたんだ。必ずやり遂げよう。」


こうして、彼らの船作りは続けられた。困難を乗り越え、少しずつ船が完成に近づいていく。彼らの決意と努力は、確実に形となり、夢への道を切り開いていた。


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