第34話 コネクト
俺はああ、と我に返って雷刀をしまった。
本当にこの人は何なんだ。
さっきまで男の勘がうんたらかんらたとか言ってたのに…。
「本当になんなの…。」
「なんか本当すみませんでしたー。殺さないで下さい!!!」
銀河はいっそ清々しいくらいの土下座を披露する。
この人にはプライドはないのかと思ってしまう。
「色々ちゃんと説明してね。」
「はい…。」
俺達がそう言葉を交わしていると、何者かが高速で空から現れた。
「無事ですか!?銀河さん!」
「おー!シンジ!助かった。」
シンジと呼ばれる青年は紺色の3ピースのスーツをビシッと着こなし、メガネに白手袋姿と、まるで執事のような格好で現れた。
「とんでもない神気を感じて慌てて来ました!この子がそうですか!?」
彼は俺の方をそう言って一瞥すると、グッと片足を引いて臨戦体勢をとる。
「ちょっ!待て!落ち着けって!ダメだ!」
「何がですか!?危険な成神は対処しないと!」
「いや待てって!この子?…人?は成神じゃない。完全に神の領域にいるわ。」
「それ本当ですか…?」
「俺が本気でどれだけ打ち込んでも、一撃も当たらなかった。いや、正確には完全に油断してた初撃だけ掠ったかな?」
「い…一撃もですか?」
「あぁ。マジだ。断言するけど二人掛かりでも絶対勝てんぞ。一個も技とか能力使われてないし。あと俺死にたくない。」
そう言って銀河は苦笑いを浮かべる。
「あとちゃんと説明しろって、この子言ってるから。とりあえず話そうぜ。」
「…わかりました。」
納得がいかないのか、少々不満げにシンジは臨戦体勢を解いた。
**********
そうして俺達は再度礼拝堂に戻る事となった。
礼拝堂に入って開口一番にシンジは冷たく言い放つ。
「銀河さん…。あなたはバカなんですか?」
思いっきり見下したような冷たい目。
「何だよ!失礼な!」
「いや、あれ見ました?あの目立つ椅子。」
「椅子…?」
ポカンとした表情を浮かべる銀河を見てシンジは頭を抱える。
「ここ”神の椅子教団“の本拠地ですよ。きっと。資料で散々見ましたから、この椅子。」
「神の椅子教団って…。あの子ども誘拐しまくって、成神作ろうとしてたヤバい連中か!?」
誘拐?教団?
何を言ってるんだ?
「ちょっと待って。全然分かんないんだけど!」
俺が二人の会話に割って入るようにそう言うと、二人は気まずそうに顔を見合わせた。
「えーっと…。どこから説明したらいいだろう。」
「君たちはずっとここに住んでるのかな?」
打って変わって優しい口調でシンジは俺に問いかけた。
「…ずっとこの孤児院で育ってきたよ。」
「うーん…。じゃあご両親はどこにいるのかな?それと、この孤児院に来る前の事とか覚えてる?」
その問いに俺は何も答えられなかった。
ここは孤児院だ。
親のいない子ども達が沢山住んでる。
村では全ての大人が親であり友達だったから、血の繋がった親がどうとかはそう深く考えた事がなかった。というかそれがそこまで重要なことなのか?と思って気にも留めていなかった。
「おいシンジ!これ見ろ!」
銀河が唐突に叫んだ。
「何ですか?今話を聞いてるんです!」
「いや!これこれ!」
そう言って銀河は転がっていた首を持ち上げて言った。
無論子ども達まだこの礼拝堂の中にいた。
端の方に固まっていたのだが、掲げられてた首を改って見てしまった子ども達の一部が泣き出してしまう。
「下ろしてください!!子ども達にそんなの見せないで!」
そう言って慌ててシンジは銀河の元へ駆け寄った。
「悪かったって…。でもこれ。あのミトじゃないか?」
「……ほんとですね。」
さっきまでの怒りはどこへやら、シンジは自分の顎に親指をそえる形で言った。
「ミト婆は有名人なの?」
二人のやり取りを見て、俺はそこに割って入る。
「有名なんてもんじゃないぜ。”超“がつくほどの極悪人でめっちゃ有名人さ。」
銀河は苦笑いを浮かべながら言った。
「お前ら、こいつらに育てられたってことか?」
「…そうだよ。周りの大人とかも家族みたいに可愛がってくれたもんさ。」
ちょっと皮肉を込めて言った。
「そんで…拷問…、いや、酷いこと…?…何でもいいか。そんな事されたのか?」
銀河は歯切れの悪い口調で流石に気まずそうにそう言った。
「そうだね。」
俺は淡々とそれに返答する。
それを聞いたシンジは深いため息をついて、そんな…と言葉を漏らした。
まぁそういう反応になるよね。
対象的に銀河は、俺のその返答を聞いて笑い出した。
「笑えるよな!因果応報とはこの事だよな!自分たちで生み出した神にやられてやんの!ざまあねぇよな!」
かっかっか!と笑う銀河をシンジが思いきり叩く。
「あんたはバカ以前にカスですね!デリカシーなさすぎ!」
「うるせぇよ。」
「まぁ、とりあえずこれは報告ですね。僕電話してきます。」
そう言ってシンジは礼拝堂を足早に出て行った。
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