第33話 ライラvs銀河

銀河と名乗った男は、同時に麒麟の使徒であるとも言った。

神や成神についてはこの数日でなんとなく理解したが、”使徒“というのはまだ分からない。


とりあえず今分かっている事は一つ。

使徒の攻撃はくらえば神であってもダメージが入るという点だ。


「じゃあ銀河さん。一つ聞くけどさ。なんでいきなり蹴るのさ」


「バーカ。簡単だろ?あんな大量に人殺しまくる成神なんか処理確定だろぉ。」


ダルそうに答える銀河。そのまま屈伸運動をして自身の脚をストレッチさせる。

やる気満々って感じだ。



「それじゃあ。ガチでいくぜ。」


銀河の両脚が青く発光する。

それと同時にパッと視界から消える銀河。


だが、その動きがきちんと俺の目には見えていた。

こいつは勢いよく上空に飛び上がったのだ。それも超高高度に。


「彗星(スイセイ)!!!」


ほとんど隕石のような速度で落下してくる銀河。

俺は冷静に後方へ回避する。


銀河の放った彗星は広く綺麗な庭に大きなクレーターを形成する。



「何で見えてんの!?」


余裕でこの技は入るだろうと踏んでいたのだろう。驚愕の表情を浮かべる。


「ちょっと待ってよ!やめて!」


俺の復讐は終わったんだ。

守るべき約束は村の子ども達を守ることのみ。

こんなところで死んでしまったら元も子もない。

死ねないのだ。


加えて俺の神としての力。

基本スペックが高すぎるが故に、ちゃんと技を使うと、この銀河という男を危うく殺しかねない


「ちゃんと話聞いてよ!」


「うるせえ。男の勘がお前を悪だと判断してんだよ!」


そう言ってクレーターのの中央から俺の方に飛んでくる。

俺はそれをまた交わしながら声をかける。


「だから…!話聞いてって!!」


「避けんなって!」


絶えず打ち出される青白く発光する蹴りの猛攻を交わしながらの応酬。


下手に手を出せば殺してしまわないか?

俺にはそれが怖くて、反撃のしようがない。


「なんで当たんないんだよ!こいつ!」


「あー!もうっ!!!しつこいって!!!!!」



あまりにも頭が硬いというか、話を聞かない銀河に対して、俺も少し頭にくるものがあった。


また全身に稲妻が走る。

俺を中心にその周りに纏ったグリーンの稲妻。

さながら俺は小さな積乱雲のようだ。

銀河の蹴りに対して、自分も思い切りそれに合わせて蹴りを入れる。


どうにでもなれ!というやや投げやりな気持ちが混じっていた。


するとその力に押し負けた銀河が想像していたよりもとても速い速度で吹っ飛んでいった。


村の住宅区画の方へ吹っ飛ばされた銀河は、バキバキと家屋を薙ぎ倒す。


「ま…まじか…よ。やばいって…。」



銀河はガラガラと音を立てながら瓦礫の中から這い出てくる。

俺はそれを視認すると身体を電子化させて地面対してに水平に走る稲妻となって移動する。


落雷の轟音を轟かせて銀河の前に停止して、雷刀を構える。


すると銀河は予想外の動きをとった。


「無理無理無理…!降参でーーーーーす!!」



完全に予想外の言葉に、俺は向けたままの切先を動かせないまま、固まってしまった。


「意味分かんないって。成神じゃないでしょ。完全に神じゃん。」


「神気もデカすぎてやばいわ。俺じゃ絶対勝てませーん。」


そうあっけらかんと言い放った彼は、両手を挙げて俺の方をしばらく見つめて



「あのー…。その剣…。そろそろ、しまってもらえませんかね?」


と申し訳なさそうに言った。


何なんだこのおっさんは…。

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