第10話 消えない炎
「くそぉおおおおおおおおおおお!!!!!!」
閉まるドアを見つめながら叫んだ。
本当にゆっくりと、ゆっくりとドアが閉まっていく気がする。
真っ黒の儀式用の装束を纏ったシュウジおじちゃんのあの表情が写真のように鮮明に瞳に焼き付いて離れない。
「あッ!!!アツイッ!!!!熱いよッ!!」
後方からツキコが叫ぶ声が聞こえる。
その熱に焼かれて、ツキコは必死にもがくが、重たい鎖はそれを許さない。
「ツキコッ!!!ツキコ!!!」
どうしようもなかった。
必死に叫ぶものの、本当に何もできない。
ハッとなって、今度はハナの方へ視線を移す。
彼女は叫ぶこともなく、オレンジ色の炎にその身を委ねていた。
バチバチとなる炎の音の中で、彼女はまた小さく呟く。
「絶対に…。生きて…。そしてみんなを、守ってね。」
ふっと上がったハナの口角。
それが電池が切れたみたいにふっと力が抜けたのが分かった。
まさか。
まさか、ハナが…?
「うぁわああああああああ!!!!ハナアアアアア!!!!」
ぴくりともしないハナ。
気を失ったのではない。
直感で分かった。
ハナは、死んだのだ。
「ツキコ!…ツキコ!返事してよ!!!」
そういえばさっきからツキコの叫び声も聞こえない。
燃える炎で視界は真っ白くなっていたが、その高熱の中、反対に俺の背筋がゾッと冷たくなるような感覚に陥った。
なんだろう。動けないんだ。
動けないんだけど、落ちていくような。
俺が括り付けられているこの椅子ごと、真っ黒い底なしの穴に落ちていくような感覚。
俺はあっという間に一人になってしまった。
ダンダ、リュート、ハナ、ツキコ。みんな俺を置いて逝ってしまった。
ハナもツキコも口を揃えて俺に「神になって欲しい」と言い残して逝った。
俺は炎の中で目を瞑る。
はぁーっと長めの呼吸をして、もう一度目を開く。
冷静になるんだ。
俺の目標は決まった。
抗わない。
俺なら到達できるはずだ。
気付けば炎の熱は感じなくなっていた。
間違いなく身体は変わってきている。
二人が言うように本当に到達できるかもしれない。
神の頂に。
固く閉ざされた重たい扉に視線を送り、俺はその向こうにいる大人達の事を考えていた。
必ず殺す。
神になったら必ず殺す。
失うものは全て失った。
身体はもう大丈夫。
怖くない。
ただただ燃え盛るような憎しみの炎だけが、俺の心臓を動かしていた。
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