第4章十話:融和/勇愛惑星

基地、と言うには街中へ紛れ込む大きな建物。技術交流を理由にした偵察、または関係の修復だろうか?理由をあれこれ考えるより、接触を図られたから接触するだけの事。


「お名前は?」


「ポッシです」


「ああ!貴方がポッシさん、お話は聞いてます。そちらから2階、奥の方へ行けば分かるかと」


受け付けから離れエレベーターへ乗って向かえば、長い通路に見知った顔。レッド......の中の少年が歩いていた。


「あ、あの時の。職員さんだったんですか?」


「いや、ここに居るのは呼び出されたからだね」


「呼び出された?」


「自分、こう言う者でして」


ベルトを起動し、解除する。百聞は一見にかず、名乗るより見せた方が手っ取り早いだろう。


「え!?ブラ、え!?でも、いや声が同じ......」


「はふふ、気付かなかったか?」


面白い反応が見れた。


「あ!ブラックさん何度も追いかけてすみませんでした。自分は、えっと...えっと」


「レッドだろう?」


「はい!そうです」


同じ様に証明しようと持ち物を探し始めたので、見かねて助け舟を出した。


「あれ?どうして姿を......」


「素の状態で会った初対面は、目の前で変身解いで居たからな」


「あー......その節はご迷惑を、ほんと追い掛けてすみません......」


「良いの良いの、だってそれが仕事でしょう?」


立ち話をして居ると、続く様に人がポツポツやって来る。どこかで見掛けた様な人々......全身タイツの中の人達だろうか?


「やあやあ!君がブラックだよね?!会えて嬉しいよ!」


ドローンから出てた声、予定のやり取りで連絡を交換してた技術屋のパープル......声の通りどことなく幼い印象を受ける女性?か、技術屋らしく前で戦う為のスーツではなく試験が主とか何とか。手を振る。


「おお、あなたがブラックでしたか。今後ともえんがあれば......」


握手をする老人、続いて「よろしく!」と恰幅の良いおっちゃ......もしやグリーンか?とも握手、眠そうな白ワンピースの子供が腕を横に伸ばすのでハグで挨拶。好青年とも握手、なんだか握手会になってない?


「私も......」


指先握手!つまむ様な指先の握手じゃないか!誰?と思ったけど必然的にショッキングピンクしか居ないのでは?恐らくホワイトは白ワンピースの子だろう、ピンクは顔を隠せば大胆になれるタイプと見た。


「私もお願いするね〜」


パープルと握手、「じ、自分も」とレッドが寄って来たので握手。君達とは握手してなかったものね?やっぱり握手会になってるじゃないか、どうしてこうなるのか......


「ここに来てくれた、って事はブラックさんも協力する事に?」


「それとはまた別の用件だけど......」


問うレッドにパープルが答える。しかし悩ましげな声色なので、こちらへ何らかの話が飛んで来るか?


「ねえブラック、うちの隊と協力関係は結べる?」


「......具体的な話が無いと何とも言えないな」


「要請があったら現場へ向かったり、一緒に歩調を合わせて戦ったりする位かな?」


「無茶言わないでくれ。不定期的に居たり居なかったりするんだ、対応出来ない。それに歩調と言ってもカメラ映えする様な戦いは出来ない」


「ん〜そっか」


「まあいつも通りだ、いつも通り。好きな様に惑星へ来て戦って開発する。何か追い詰められたり対応出来ない事でもったら、これに連絡さえ入れてくれれば居る時は行くだけ行くよ」


携帯を見せながら、そう強調する。協力する事はやぶさかでないが、命令されるのは色々と難しい面が出てくるのだ。


「わざわざ来てもらったのに......ごめんね?無理言っちゃって」


「話の流れ的に、仕方無いと思う事にしてるよ。本題は別だろう?」


「そうそう!あっちが技術開発室だから!」


グイと腕を掴まれて引っ張られた。あの、せめて手を引っ張って?自然と立ち話の形は解散し、思い思いにバラけて行ったようだ。


「それでそれで?君の変身道具は?」


「これだな」


起動して見せてから解除、ベルトを外して渡す。


「これは収納式?」


「スーツは小さく纏めて入ってるな」


「へえ、昔はよく使われた形式だね。でもそれだと補修作業が必要に......生地は何を使ってるんだい?」


「そのまんま使ってるぞ」


「そのまんま......まさかエネルギーから強引に形作った!?」


「強引ではないけど?こう指向性を揃えて編み込んで」


「そんな事が可能なのか......?出来たとしてもこれは職人の......うちで使ってるのはこれ、噴霧式だよ。空中に散布したナノマシンが展開してくれるやつ」


「ほうほう、分解はこのネジ外せば一発で開くから見ていいぞ」


「良いの?うわ便利!秘匿性皆無かいむだけどアクセスし易い!メンテナンスが捗るやつだ!中身もちょうシンプル!」


共振触媒から昇圧機を通り各部位へ、余りは溜め込み巡って再利用が行われる。許容量を超えた場合はガス抜きの様にプシューと外部へ出すだけ。


「凄いシンプルで安定性が高い......あれ?でもこれだとエネルギーが取り出せないよね?」


「そうだな」


「身体能力の増強ってどうしてるの?」


「してないぞ」


「ええ、と?」


「強化しても微増でガス欠が早くなるから、設計にそもそも組み込んで無い」


「えっ」


ちょくちょくマイナーチェンジして、不安定になるし結局これ要らんわで切り捨てた機能だな。


「ちょっと待って開くから、うちのやつはこの部分が身体補助で基盤によって制御してて......ちょっとで良いから、触って良い?」


「まあ......必要ならどうぞ」


メッチャ下腹部見てて、集中力欠いてるのがありありと分かる様子なので許可する。


「うわぁ......」


腹部触ってその言葉は酷くないか?


「硬いけど......柔らかい?この筋肉の付き方は......」


脚まで触りだしたぞ、誰かパープルの暴走を......居ない!そうだこれ、よくよく考えれば2人きりじゃないか!あまりよろしくない気がしてきたぞ。


「ふっっと......これ僕の胴くらいあるんじゃ、それ以上?」


メジャーまで出して測って、ベタベタ触って満足した様だ。モルモットとかこんな気分なのだろうか......


「......あれ?どこまで話したっけ?」


「身体補助を基盤で制御してるとか言ってたぞ」


「ああ、まだそこだったね。武器の方は?」


「これだな」


ベルトに付いてる柄を見せる、これをこうしてこうすれば......にゅっと刀身が生えてくる。


「おー、これもそのまま使った......もしかしてこのベルト、怪人の落し物をそのまま使ってる?」


「色々と弄り回してはいるけどね」


パープルは頬へ手を当て青褪めた様子、パープルなのにブルーとはこれ如何に。


「ま、ま、まあ、ブラックのだし。うちでやったら解雇ものだけど......」


「大丈夫か?」


「コアのブラッシュアップせずにそのまま使ってるでしょ、これ。よくそのまま使えるね......」


「ブラッシュアップって言うと......」


「ほらあれ、コアの参照値」


コアは触媒の事か、知りたい事が知れそうだ。


「ああ、参照する感情ね。なにぶん大きな設備も無い物で......」


「感情?」


「ん?」


「え?」


「「んん?」」


目を見て通じあった、が。言葉で確かめる必要があるだろう。


「ブラッシュアップって今まで何してたんだ?」


「それは......高周波を当て続けたり、熱したり」


「ええと、それは。ううん、判断に困るな......」


「感情って、何か確信でも?」


「そりゃ振動数と密度が似てて同じ様な感情が昂ると共振して、何らかのエネルギーを発してる事くらいは観測してるよ?」


「そんな、性格じゃ。しかし、調子や相性問題といい納得行く部分も......」


全ての物体は細分化して行くと振動し続けている、振動しているから在ると言っても良いくらいに関係が深い。その前提を知ってたから分かった様な物だが......


「前任者の論文が考えを狭めてた......?僕が確りしないといけないのに......」


ブツブツとテーブルへ紙を並べて何か書いたりし始め......


「あ、そうだ。ブラックさん、たぶんこの辺りはまだ使える理論だと思うからあげるよ」


「そ、そうか。ありがとう?」


何だか急に距離感がある呼び方で狼狽えてしまう、仕事モードと言うやつか?そう思う事にしよう。


「道具を借りて良いか?」


「良いよー」


なにぶん巣穴は電気が通ってないので、精密作業がし難いのだ。充電も電池買ったり何処かで給電させて貰ったり、道具の入手も個人では限界がある。


(上手くいけば、剣鉈けんなたから打刀程度に伸ばす事が出来るかもしれない)

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