第4章八話:巡行/機戦惑星
シュー......
バイクから降りて一休みする、背負った動力機関の上へ装着してる......あ、名前聞いてなかったな。まあそのうち分かるだろう、仮称:生体パーツの少女も置く。
意思はあるものの完全に物扱いらしい、ログアウト......惑星から出れば共に消えて、入れば共に出現する。その間は寝てるような感じとか何とか。
(対人的には人扱い何だがなぁ、ドン引きされたり『それで生きてるの!?』と引き気味だけど)
もしかしたらこの惑星では妙な
「不具合や違和感は無いか?」
『......』コテン?、フルフル。
無いらしい。一応、電子機器を持たせて発声出来るようにしてるが全く使わない。
(気に食わない訳では無い、と思うが......)
癖、トラウマ、慣れ。複数の理由が思い浮かぶものの今出来る事はない、彼女自身求める物とか思い浮かばない様子なので方針的にも困ってる。
「一周回って中立地区、元の場所へ行くのも良いだろうが......」
アソコはアソコで大変だ、特に仕事関係。安定した収入は得られず保証もあるにはあるが割高、物価も全体的にアレだが他傭兵の関係性は総じて良好。
ショクの手厚い公共サポートは他に類を見ない......あれ?一番良い場所なのでは?
(二足歩行の大きなロボットも聞いたらタダで倉庫に置かせてもらってるし、それに比べ)
機械化キチ共の巣窟は論外として。物価が安いと聞いた場所は強制的に値段を決められ常に品切れ状態、安定した収入を得られるはずの軍属は過酷な労働か痛い出費の多い場所。
手厚い公共サービスがあると噂の場所は、実質一つの企業形態に支配された労働搾取の街。ショクは惑星が荒れてるのを嘆いていた、AIの基礎原理とかで直接動けないらしい。
「帰ったらショクに聞くか」
少々自己都合が過ぎるだろうか?テンからもよろしく頼まれてしまったし、なにか出来る事があれば......
「温度は、良さそうだな。移動しようか」
『......』コクコク
ヘルメットを被り、動力機関へ生体パーツ少女を
どこも利権に終始するばかりで争いを止める方向へ行く事はない。口先だけで、
(酷く不健全な構造だな......)
通常、争えば技術の発展が見込めるものの国や人々が疲弊し終戦へ向かう。この惑星ではどうやら当てはまらない様子......
「主要な場所は次で最後、行って見て回ったら中立地区へ戻るぞ」
『......』
向かったのは比較的新興の惑星共栄圏なる場所、勢力的に増えたような増えてないような不思議な動きを繰り返す弱小勢力。
「こんにちは、中立傭兵のポッシです」
「中立傭兵?ショクのか?」
「はいそうですね。色んな陣営見て何処に行ったり優先すべきか、信頼できるかを見て回ってるんです」
「あー、の様だ。ああ......分かった、入ると良い。惑星共栄圏について説明してくれるやつが来るはずだ」
紹介含めて色々見ていく。先ず雰囲気は新興特有の活気がある、人種差別は無いが区別はあるようだ、掃除が行き届いてる、物価は恐らく適正、設立の目的にブレはない。
惑星共栄圏は惑星内の有機無機問わず人々が共栄する事を目的とした勢力、雑に言えば『もう争いなんてやめて皆で発展しよう!邪魔するんならぶっ(自主規制)すぞ!』と言った所だろうか。
(過激だが上手い立ち回りをしてる......)
それはそれとして人手不足が否めない、あちこちに入隊ポスターが貼られて慢性的な人手不足を感じる。良く言えるか微妙だが昇格は早そうだ、悪く言えば責任が増える。
(......思想は好みだが)
全体的に中立地区の方へ軍配が上がる。思想は本当に共感出来るが、その他もろもろ考えてまだ早かったと思う事にする。
(生体パーツの少女も髪に突っ伏してしまう位だ、取り敢えず中立地区で活動かな)
一周回って元いた場所が居心地良いなんてよくある事だ、バイクに乗って帰ってる途中。
「ぐぇ」
回された腕に力が入って首が絞まる、時々起こる癇癪......弊害?要するに幻肢痛や自己認識と現実が乖離しすぎた影響だろう。
腕を撫でれば気付いて絞める場所を変えてくれる。余裕が無い時は肩だが、大抵は脇に腕を通して胸部。これ位は必要経費として払える。
(あまり依存させ過ぎるのも良くない......)
中立地区で地道に協力者を探すか、最終手段としてショクに一任するってのもアリだろう。
(その為にも先ずは......)
安全や平穏の確保。でなければ、使い捨てられて何処かから補充される住民と同じ様にいつの間にか居なくなってしまう。
先程居た共栄圏とショクが管理する中立地区は別だが、他の陣営はその様な事態に陥ってる。
(新兵や中堅ばかり、ベテランなんて別陣営から来て共栄圏に居る人と中立地区で暮らす人くらいしか知らない)
思い出すのは『この街に来てから?まだ1週間の中堅だよ』と言われゾッとした、過去を聞いても『よく分からない』と奇妙な物言い。
翌日には戦死の報、誰も悲しむ事は無く。代わる様に新人が増えてた。
(中立地区であんな事は起きなかった)
誰かが亡くなれば関係者が悲しみ、思い思いに鎮魂する。直ぐに新人が補充される事は無く、新人が来ても必ず誰かが育てるフェーズが挟まる。
(気持ち悪い)
でもアレはヒトだった。どうしようも無く嗅覚が鋭く、嗅ぎ分けてしまう。人体の構造、精神性、自己の独立性、アレはヒトだ。
ただ、あの状態が普通だと思ってる人間。
(やれやれ、どうにも好きになれない)
苦手な部類だ、イソイソと中立地区へ入って集合住宅の自室に戻る。軽く掃除をして、身嗜みを整えてショクヘあれこれ聞きに行く。
「やあ、ショク。居るかな?」
『はい、ショクはここに居ます』
一つ、他陣営の奇妙な人々。これについては不明。
二つ、私の......いわゆる[お眼鏡に適う]陣営は何処か?足りない情報を渡して推測してもらったが、やはり最後に行った場所以外は色々厳しいらしい。
(参考程度で、普通に生活してそれなりに上手くいく事が約束されれば。の前提付きだけど)
三つ、平和になった場合の開発と発展、惑星がどうなるかの計算やどの行動を取るべきか。
(安全を求めるなら平穏が必要だ、[根本から危険を刈る]と言っても良いか)
洗脳......コホン、思想を広めるのは時間が掛かる。経済を握るにも不確定要素が大きい、新しい勢力を作るにしても労力や時間も被害すら大きい。
「惑星共栄圏ってショクに感化されて平和を目指す人達が作ったのか」
『そのようです、今もまだ元中立傭兵の方が率いてます』
「よしそうだな、こんな筋書きはどうだ?」
『それは......』
鶴の一声と言う物がある、権威を持つ者が一声掛けただけで全てが決まってしまう。悪く言えば追従者だけの場、良く言えば混沌とした場を終わらせられる者。
この惑星には鶴が居ない。ショクもまた何とか中立地区と呼ばれる場所を維持するのが手一杯で、攻め込まなければ攻撃されないと少々舐められてる。
「共栄圏には惑星の象徴となってもらうよ」
そして私は[中立傭兵のまま]剣となって恐怖を振り撒き、理不尽に存在すればいい。代が変わるまで時限式の平和、その隙に思想を植え付けて争いを自然消滅させる。
出来るか出来ないかで言えば、出来る。
何でもありの勝負で勝つ奴は、大抵慣れてるか一番常識的で頭のネジが外れた奴になる。なら、私に出来ない事ではない。
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