第4章七話:武器/勇愛惑星
カチャカチャ、キュッキュッ。
「ほふぅ」
武装の整備はどの様な世界であろうと欠かせない。それが知識や言葉であろうと、自身の肉体や技術、剣や鉄砲などの武器でも変わらない。
「......
怪人の検体を集め、素材として使ったり調整を続けナイフ程度の大きさから剣鉈と呼ばれる様な形になった。
(本来は槍が一番扱いやすいけど柄が脆い、長棒として持ち歩くも目立つ......)
柄を伸ばす方法も考えたが、そこまで複雑な機構はエネルギー効率も悪くちょっとした衝撃で不具合が出て使えた物じゃない。
ボツ案としてシンプルに全体が刃先で槍代わりに、と試したものの危なっかしいわ飛んでいきそうになるわで消耗が激しい黒い光の槍ロケットでしかなかった。
「ま、地道に積み重ねるのが一番か」
ゥゥーン!ブー!ブブー、ピッ
携帯を開けば怪人の出現があったようだ。レーダーに複数の感あり、幾つかは既に変身する奴等が対応に向かってる。
しかし時間帯的に人が少ない、私も出るとしよう。
「
トントントン、と空を飛ぶ様に向かいつつ疑問を覚える。どことなく怪人達の出現に規則性があるような気がしなくもないのだ。
「お、居た」
巨大な口が特徴的な怪人、すれ違いざまに首を剣鉈で叩き裂き断てば消滅が始まる。
(まだかな......まだかな......)
じっくり消滅を待ち、ドロップ品が出たら即座に回収して次の現場へ向かう。繁華街では手が肥大化した怪人......学校の校舎裏ではマッチョマンな怪人。
「......勘違いだったか?」
そんな事はともかく、怪人の検体を貰えないか巡ってみよう。
「やあ、検体採取しても良いかな?」
「あ!ブラックじゃーん!うちの所へ来るかどうか決めた?」
「それは前にも言ったはずだが......?」
「そうつれない事言うなよ〜」
あいも変わらず顔を曝け出すスタイルの馴れ馴れしい男だ。ちょくちょく誘われその度に断ってる、顔や名前を晒すのは活動方針的に合わないのだ。
そもそも、いつ来るのを止めるか不確定が過ぎるから集団へ入って腰を落ち着けたくはない。立つ鳥跡を濁しまくるのは如何な物かと......
「それで?」
「お、条件煮詰める?」
「検体」
「あー、どうせいらないし勝手に取ってけば?」
採るもの取って次へ行く、今度は面倒じゃなさそうな人だ。
「やあ、検体採取して良いかな?」
「あ、ブラックさん。どうぞ、私はもう帰るだけなので」
お言葉に甘えて容器へ詰めてると声を投げ掛けられた。
「ブラックさん、私はどうすれば強くなりますかね......?」
「ん?今でも通じてるって話は置いてか、どうにも一般論になってしまうが......」
色々言いたい事を一先ず置いて。
「己を知り、彼を知れば、百戦
孫子の兵法、端的にまとめれば。
「要するに自分の事を自分が分かってないとどうしようもない、って事だな」
「どうすれば分かりますか?」
「それこそ自分の頭で考えた方が良いんだけど......今出来ている事を見て、出来る事を地道に探すしかないよ」
「出来ている事、例えば?」
「
「そんなの覚えられない......」
「出来ないと真っ先に否定するのではなくて、出来るようにする方法を考えなくてはならんよ。メモを取ったり外部に記録する術を持てば良い」
流石にこれ以上付き合ってられんと逃げる、別方向に面倒な人だったな......馬脚を現したと言うべきか?次なる場所は、面倒事になるのが決まりきってる人だったか。
「あっ」
「げっ、ブラック!」
件の赤タイツと目が会う、なんだかよく会うような気がしなくもない。
「待て!なにを企んで居るんだ!」
「企むもなにもないが......」
「そんなはずないだろう!怪人を集めているんだぞ!?」
「ちょっと待て、その言い方は語弊がある」
まるで怪人の勢力を作ってるみたいな言い草は酷すぎる。
「怪人の検体を採取して研究してるだけだぞ」
「普通の人はそんなことしないだろ!」
「お前さんの普通はだいぶ狭いようだな」
「何のために動いてる!?」
「そりゃ欲しい情報があるに決まってるからだろ、強いて言うなら自分の為......?」
「はっきり言わないじゃないか!」
「はっきり言ってるんだけどな......もっと考えるクセをつけた方が身の為だぞ」
話を聞かないやつはどうにも合わない。言い訳 誤魔化し迂遠な愚者や、阿呆で素っ頓狂な愚か者が行く道を邪魔するなら殴ってでも退けるんだが......ああ、法的に難しいか。
(逃げの一手)
こういう場合はさっさと逃げるに限る。
話を聞かないやつに講説垂れても、馬の耳に念仏でしかない。話をするだけ無駄と言う奴だ、逃げてから時間も経つが怪人出現の報を受けて向かえば何度も会う。
(何度だって逃げる!)
そんな事をし続けてたら、相手さんも対応する訳で。
「ここから先は(ハァハァ)通せないよ(ゼエハァ)」
やたら太ましい緑の全身タイツ......下っ腹が出てるグリーンに通せんぼされた。珍妙な技を使って来る可能性を考慮して、
「孫に頼まれてのぉ」
左手は少々腰の曲がった青い全身タイツ......どこからどう見てもブルーは老人ですね。ただ、屋根の上へ登れる身体能力に近寄れば何かするぞと気迫がある。
「こっちに来るなよ、こっちに来るなよ......」
右手はブツブツと呟く黄色の全身タイツ。声色から普段は爽やかな人物で、怯え様から
「私が来たからもう大丈夫!さあ観念なさい!」
後方からやたら張り切ってる女性、目が痛くなるショッキングピンクの全身タイツとか恥ずかしく感じないんかね?振り切れてる感じか。
続いて見慣れた赤い全身タイツの不審者が登場、だいぶ疲れてそうだ。
(遠方から狙われてるな......あれはホワイトか)
白い人影、何か道具を持ってるので飛び道具の類いだろうか?ドローンは今だに周囲を飛び回ってるし、逃げるのは難しそうだ。
「はぁ......それで?[ごく普通]の[真面目な一般人男性]へ寄って集って何の用だ?」
「普通ってどの口が...!」
赤いのが(散々逃げ回ってよくも!)と食って掛かるが、他の人々は(あれ?意外と話し通じてる?)と戸惑ってる様子。
人数は十分、場は整った。
『話は私がつけよう、はじめましてかな?Mr.ブラック』
「やっと臆病者が話し掛けてきたか」
『フン、随分な言いようじゃないか?数々の嫌疑が掛けられたキサマには、基地で尋問される義務がある』
「無いが?」
『は?検察からの許可が』
「そんな義務は無いが?そもそもお宅の基地だってそんな権利無いだろ?
『し、しかし嫌疑が』
「その嫌疑ってやつの内容を教えてくれませんかね?犯罪に関わってるなら捜査機関が介入するのも連れて行かれるのも分かります。まあアンさんら一般的な玩具製品の株式会社が作った特殊警備部隊は、株式会社の範疇を出ないですけど」
近寄って来た青の老人がタイミングを見計らって話し掛ける。
「ブラックさん、そろそろ『そ、そうだ!不法侵入しただろう!』
「はぁ、で?被害届出てます?出てるなら謝罪行脚しますけど?」
ガタン、と何処かへ逃げたような音。思ったより長引かなかったな、ネチネチ法的にどうかと思う部分を突いたり扇動する必要がなくて良かったと言えばそうだが。
「あらら、これは困りましたな......」
「ああ言う手合は一度痛い目を見ないと」
『あれ?なにか作戦中だったの?アイツ走ってどっか行っちゃったけど』
先程の声とは打って変わって、聞き覚えのない声。青の老人が何やら会話して事態を説明した様だ、『分かった〜』と声の主は何処かへ。
『解散指示出たよ〜』
上へ確認を取ってた形だろう。
『君がブラックかい?』
「まあ、そうだな」
『そのスーツは自分で?』
「ああ」
『へえ!なるほどなるほど、君さえ良ければ1度こっちに来て技術交流しないかい?』
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