第4章五話:隕石/機戦惑星
機戦惑星、戦いによって荒廃した惑星と聞く。機械を操縦して戦い、味方する陣営に貢献するも良し。根ざさず、傭兵として渡り歩く事だって出来る。
(裏切り、鹵獲、制限はあるものの何でもあり)
[善と悪]、[正義と不義]、[悪欲と善欲]、[少欲知足]、欲を少なくして足るを知る。されとて欲が無ければこれ以上に良くしようと言う、思いも無くなる。
([なぜ?])
ヒトとしての行動理由はここに帰結する。言語的な物で言えば[悪]とは[突出した]の意味で古い時代に使われていた、今の意味合い的には[身勝手]や[自分勝手]に振る舞う様と考えるべきだろう。
対義語として[善]がある、祭壇に羊を置き神へ捧げる様子から作られた文字。その性質上、他者へ身を切って渡す様なもの。意味合い的には[思いやり]や[
「ゴボゴボ......ゴポバ(善だけ悪だけでも芯が無い......何だこれ)」
声が出ない、もごもご何やら響いて泡が立ち上るだけ。息が出来......てはいる、視界は薄暗く歪んでいてよく見えない。
(手を伸ばせば直ぐに壁へ当たるな)
ガコンッ
そんな音が響いたと思ったら足元へ、滑る様に身体が前へ投げ出され酷く寒くなる。
「ケホッ、エホッ。なんだ......?」
頭を振り、何とか周囲の状況を観測する。他に動く物は無い、ジーっと電子ノイズのような音が薄っすら聞こえ肌寒い。
(地面、いや床は格子状の様な穴が開いてる。先程の水、液体呼吸用の物だろうか?)
いまさっきまで居たであろうコフィン、名称を知らないのでカプセルとでも便益上呼ぶか。カプセルは長球の形で、ヒト一人が入れる程度の大きさ。
(あの中に居たのか?)
カプセルの蓋が閉じ、何らかの液体で満たされていく。周辺には同じ様なカプセルが立ち並んでいる、大抵のプレイヤーは街中でふと気が付いて動き出す根無し草だったはず。
要するに知らない状況、役立たない情報と言った所か。
(......どうしろと?)
『こんにちは、ポッシ・ブルさん。申請結果により、この惑星に置いて貴方の立場は現在[中立:傭兵]となります』
だれだ?姿が見えない、スピーカーとかから出てるのか?見当たらないけど......なぜその名前を知ってるのか、まだ名乗ってすら居ない。
「何者だ?」
『これは申し遅れました。衛星軌道基地の運用AI、テンと申します。お召し物はこちらを......』
衛星軌道基地って事は惑星じゃないのか?いやでも惑星の重力には引かれてる?それはともかく、言われるがまま服を着て移動して話を聞けば単純なこと。
大昔に使われていた構造物であり、今は使われていない。
カプセルは渡り人が使っていた物で、詳しくは分からない。
由来不明の入力された情報をもとにアシストしてくれてる。
「それで良いのか運用AI……」
『久々の
要するにどこの馬の骨かも分からない私を、誰が下したかも分からない由緒不明の指示で色々やってくれたらしい。なにそれ怖い。
『私がやれる事はポッシさんを無事に惑星へ着陸させる事と、ささやかな贈り物の立場だけですから』
「十分恵まれてるんじゃないか......?」
手伝う事もやるべき事もここでは無い様なので、降下用とやらのカプセルへ入って座った所で呼び止められる。
『少々お待ちください、これは貴方の名義で保管されていた物品です』
キャリキャリと異音を発しながら小さなロボットがノロノロと一抱えほどの箱を渡して来た、ロボットだいぶ風化して来てない?色味が錆びついてるだけか?
『半永久動力機関です、横の排気口から非常に高温な蒸気が出るので扱いは慎重に』
ピンと来た、進行度によって機戦惑星から貰った報酬はコレとテンからの補助だ。
「色々とありがとうね」
そんな言葉で締めくくり、降下カプセルが閉まる。
『地上基地の
グンッと急加速が行われた慣性を感じる、降下カプセルには小窓が付いており土と灰色の惑星を一望出来る。
「同胞って......行けば分かるのか?それともAI全ぱっ!?く」
想像以上の揺れ、衝撃で突き上げを食らう。半永久動力機関とか言う謎の物体が心配だ、壊れたり......しないよな?
(小窓の外もオレンジと言うか、なんか光ってるけど大気圏に入ったのか?)
大気こと空気を圧縮して高温になってこの様な状態になる、必然的に大気を圧縮する様な速度で落下してる証明だろう。あと削れてない?
本当に大丈夫だよな?このまま地表へ激突して板になるのはごめんだぞ......
「.........」
願いが通じた、のかよく分からないがほとんど衝撃も無く地面へ着いたようだ。狭い空間は息苦しいので、早速外へ出ようとノブを捻るが。
「......開かない、ハザードマーク的な何かにメーター?」
……ああ!熱くて外へ出たらやべーですので温度下がるまで待てって事か。あの、減速したんですよね?それにしては操縦の必要がなかったけど。
待つ。
待つ。
待つ。
『あ〜あ〜、そこに居るのはポッシって奴だな?中立地区からの依頼で回収に来た、生きてるなら返事しろー』
「ちょ、ちょっと待て。こちらには通信機器のような物は見当たらなくて......」
『聞こえてる、揺れるから注意しろよ』
グッとまるで持ち上げられたかのような揺れ、小窓の外を覗けば10mはありそうな人型ロボットに掴まれて運ばれていた。
なぜ人型?や、そんなに大きくて意味あるの?と色々突っ込みたくなるが野暮になりそうだ、遠くでドッカンドッカン音が聞こえるのは幻聴であってほしい。
(無事、着いたのか?)
巨大な建造物の台座に置かれ、ゴウゴウと外では何かやってる。しばらくすれば、勝手にカプセルが開いた。
『ようこそポッシ。正式な登録は設立以来のこと、惑星採集基地群管理AIのショクは歓迎します』
新たな日々の始まりを告げた。
残念な事に、10mもある人型ロボットは一般傭兵に手が出る代物じゃないらしい。そうなると結構な立場の人物が回収に来てたのか、と呆れるが。
一般傭兵と言ってもやる事は戦いだけでなく、ゴミ漁り......失礼、戦場跡から使える部品を探して取ったり。管理AIのショクから依頼を受けたり。
「傭兵とは......?」
「まあそう仰らずに、結局はハイエナみたいな物でしょう?」
本日の教師こと
「ハイエナは自分達で狩りをするけどな」
「そうなの?」
傭兵達が何とか手の届く人型ロボットは5〜6m前後、そもそも持って居る人達は傭兵の中でも上位に位置するか極度の捻くれ者。
または
(入手もそうだが、維持も大変と聞く)
本日の
(傭兵とは言え恨まれる事だってある)
依頼でロボットに乗り込んで戦ったり、何処かの組織へ肩入れして信頼を得たり。傭兵から何らかの組織へ移動して、一兵卒から成り上がる方法もある。
大抵の組織は有人用のロボットを持ってる、言わば戦車や航空機の類いだろう。
(土地も荒地や泥濘、凸凹が多く。空は鉄粉や何らかの汚染、豊富な転用出来る対空火器に対抗手段の数々)
二足歩行で巨大なロボが欲しくなるのも分かる、だけどそこまでして争いたいのかねぇ?
「地道に探しますかね」
踏み固められた地面には、潰れた機械が混じっている。
戦いの跡か、打ち捨てられた大きな武装や完膚なきまでに破壊されたロボットも落ちている。
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