第3章四話:魔砲/魔論惑星
塵鉄惑星では何も出来ない、何もさせて貰えない事が分かっている。そして納得したつもりだ、AIはAIなりの考えで
「それはそれ、これはこれだ」
なんだかんだでやはり何もさせて貰えないのがキツイ、だから魔論惑星へやって来た。
魔論惑星はプレイヤーが思うままに魔法理論の体系を作ってお披露目出来る場である、想像力に物言わせて理論を構築すれば「くっ、左手が疼く」なんてゴリゴリの中2病的魔術だって(羞恥心を無視すれば)使える。
(ここなら再現出来るだろう)
論理が優れていれば優れるほど評価される、今でも掲示板に表示されてるのが......空想具現魔法?とか物質強化魔術やら、ちょっとよく分からないでもない。
特に評価されるのが先駆者らしい、開拓者とも言うべきか?発想に使われたら親の一覧として表記されるとか何とか、あと利益も多少入るが相当に練らないと記録されないとか何とか。
「この惑星ではこれか」
メインに活動してる惑星以外へ行った時に貰える進行度報酬、魔論惑星で渡された報酬は[
(仙人杖とか言われるやつだ......)
上のグルグル何なんだ?特殊効果は無くやたらゴツいしそのまま殴った方が手っ取り早い様な、意外に軽いしそんな威力でないか。
「先ずは......」
魔術や魔法の開発。拠点とか作らなくても道端で理論を考えながら試せば良いらしい、この惑星の神とやらは神殿に居て積極的な開発促進を行ってるとか。
定期的に
「雨風は
拠点が無くとも良いと聞くが、一息つける場所が在ると無いとでは大分変わってくる。
(神殿は真白なんだな)
惑星の
「散策散策......これは」
神殿の裏手にある下り階段、その傍に転がる大きな
「裏手の甕?ですか?あー......確か神殿の方で所有してましたけど割れてしまいまして」
「使いたいならどうぞご自由に。長い間、放置されてましたけどそれで良いなら」
アテナイに
横倒しになった
「論理展開、思考回路の接続......
あと数時間後に
「そこの御仁、私の庭で何をしてるのです?」
「ええ、まあ。この大甕を自由に使って良いと神殿の人から許可を貰いましたので......」
ローブが宙に浮いてる、非常に豪華絢爛で着込んでいるが顔のあるべき場所は空洞となってる。遠隔?それともソレこそが形なのか?
なかなか口を開かないので作業を再開する。
「私が恐くないのですか?」
「なに?怖がって欲しいの?」
純粋な疑問。恐怖とは失うかも知れない思いによって引き起こされる、例えば社会的な立場、例えば物質的な私財、金銭、そして今持つ安寧や生命。
変化を恐れるのは総じてコレである。私は魔論惑星へやって来たばかりで殆ど何も持ってない、それに......
「悪い者ではなく善い者の部類だろう?それとも悪い者なのか?」
「私は私の事を善い者と定義してます」
「なら、なおさら怯える必要はないだろう?」
ここを私の庭と呼んだ、ならば神殿の関係者。恐らくこの惑星で神を名乗る存在、何より神殿の関係者が暗い雰囲気も無く安心して仕事をしてる。
不安を感じる要素が一つとして無いのだ。
「......そうですか、そろそろ祭典の時間ですので私はこれで」
来訪者は去って行った、気付けば
考えても仕方無い、今回の祭典は......
「大人数の乱戦」
大規模な戦闘を彷彿させる物で、自分以外みんな敵の様なもの。しかし単純に倒せば良い物ではなく、魔術や魔法が評価される。
一度の術で巻き込む人数や威力が多ければ多いほど高評価、けれど何度も同じ術を使っては評価の加算量がグッと低くなるとか何とか。
(一対一や小規模でも色々評価基準は公開されてるが、今回はとにかく巻き込むから考慮しない)
防御関係の術も評価されるけど、主力は大規模な物になるしおまけ程度のポイントだろう。HPなる物が有効打を認めて0まで無くなると戦場から外へ
開催場所は以前なんやかんや色々あって荒野のままになってしまった荒地、詳しくないので何やかんやとしか言い様がない。
「もう集まってるな......」
見渡す限り荒野に散らばる人、人、人......会場は分かり易く半透明なドームが荒地を覆ってる、ちょうど良さそうな位置を探しにウロウロ。
ブザー音、視界に自身のHPが表示され始まった事が分かる。てか直ぐさま攻撃を受けたんじゃが......
(相手の攻撃を引っ張って、グルリとお返しする自動的なカウンターはちゃんと発動してるな)
あとカウンターが発動する時に地面を杖でコンコン叩く、発動に必要な条件だと勘違いすれば儲けもの。
遠くでピカピカ雷が飛び散ったり、一部の区画で炎が燃え盛ったり......なかなか混沌としてる。でも、ちゃんと対処出来てる人も多い様だ。
「ふむ、この規模の動きは......」
空に隕石が出現した。皆一様に足を止め、思い思いの防御魔法か術で耐える気の様だ。
コンッ
(この辺りで良いか)
一番端っこの小高い山になってる場所。片手間で大地へ威力を逸らし身を守ってから、術式を起動して行く。
「多重魔法理論起動」
いわゆる...対星外用 大規模乗算式 対宙域魔導砲撃 を魔論惑星で使える様にマイナーチェンジした物、マイナーチェンジなので正式名称は変えなくて良さそうか。
「オド接続、イド開放、マナ吸着加速、精霊奮起、霊道誘引、龍脈......接続、龍穴化。星よ、我が声に応えよ」
起動、起動、起動。指が勝手に踊りだす、呪いと祝福の言葉を
輝く文字は次から次へと押し流され帯を形成する。多様な楔形文字、ラテン文字、アラビア文字、漢字、そして───文字まで。
くるりくるりと3次元的に重なり合い、まるで糸玉の様だが魔法陣を形成してるのだ。
「これは──の戦いであり──」
ガシャーン!
ドドドッ!
ズゥウン!
目立つのだろう。やたらピカピカ光るので半透明な槍が飛んで来たり矢の雨が降り注ぎ、巨大なハンマーが潰そうと降って来たり。
しかし微動だにしない、それどころか割れて吸収する。今の私を破壊したくば、星の一角を消し飛ばせる威力じゃないと逆に吸収する状態だからだ。
「セット、ロック。砲身構造体、構築開始」
杖を振り上げれば、光が集まり周辺は暗くなる。地面から光で出来た巨大な砲身が天高く出現、今回の標的は空じゃなくて地上なので杖をゆっくり下ろせば砲門が前を向く。第2段階終了、最終段階。
「
瞬く間に世界が光で覆われる。
雑に言えば星からパワーを貰って発射。攻撃では無く融和であり、相手が何らかの魔法や魔術の類似エネルギーさえあれば流入して......過剰なエネルギーで最後は肉体がボンッと破裂する。
唯一の対抗手段は魔法や魔術を使用しない事、たったこれだけで良い。
(発射時に避けたから安心する様では......)
発射し続けられてる光のレーザーを、ゆっくりと薙いでいく。端的に言えば術式が星へ繋がってる状態、レーザーのエネルギーは星へ戻るので更にそこから引っ張って半永久的に照射されるのだ。
射程は星のエネルギーが続く限り、最終的に全て戻って来る形へプログラムされてるので実は殆ど悪影響が無い。魔法や魔術文明には致命的だが。
(あとは魔法や魔術を撃ち尽くして偶然生き残った数人だけ、いったん終了だな)
コンッと術式を解けば荒地の全貌が明らかになる。草花や木々が生え、虫達は地面から飛び立つ。もはや荒地では無くなっていた。
(エネルギーとしては良い物だから、生命を活性化するんよな......)
祭典は無事?終了し、1位はもちろんこの私。今回使った術式の評価は......
「......殿堂入り?」
殿堂入りは強過ぎる術式を次回、使う事が起きない様に[あ、もうそれ分かってるので]と獲得出来るポイントを減らす措置。
(代わりに利権があるらしいのでオールオッケーか?)
使った術式や概念は自由に見れるので、多重魔法理論の技術体系が広まるか地味に楽しみだ。
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