第2章十二話:一擲/幽海惑星
「これより油田攻略の会議を始める」
そう言ったのは三ツ島で陣頭指揮を執ってた戦艦の艦長、ここに集められたのは戦艦や空母など有力な艦長に一部は巡洋艦の艦長も居る。
あと何故かミフユ船長の私、補給は大事だからか?
「現状を確認する」
そして始まったのは認識の擦り合わせ。秘島から来た艦に、ずっと敵地で隠れ潜み救援を待ち続けてた空母も居る。作戦に支障が無いように確認して行くのだ。
曰く、油田を
だからこそ油田を取り返せば希望的予測として航海範囲を抑え、本島付近の防衛もやり易くなり海路を復活させられる。それ以外の道は無い。
「ここまでよろしいか?」
油田は何としてでも取り返さなければならない場所、
前回は夜襲を行ったが大敗。そもそも視認性が悪かったのもあるが、待ち構えてた大量のカゲと挟む様な形で同等の敵増援がやって来て味方の多くが沈んだ。
では、どうするのか?
増援が来る前に撃滅して港湾へ居れば、比較的浅いので戦艦や空母が浮力を喪失しても実質不沈艦として戦える。駆逐艦や巡洋艦も同様に陸地へ近付けば底が着くので死兵となって戦う。
また、港へ入る前に敵の増援が来た場合は強引にでも突破して入らなければ、九分九厘沈むと思った方が良いとか何とか。
「本島から援軍は?」
「期待出来ない。ミフユの輸送力でもギリギリなんだ、これ以上船が増えれば弾が足りなくなるか食糧が足りなくなるか」
「ミフユの輸送能力は?」
「
「600…?あの速度で......?帆船......?」
手をこまねいて動かなくても状況は好転しない。毎日数万人の食糧やら襲撃で消費される弾薬や修理資材もバカにならない、解決に動くしかないのだ。
ミフユには陸上の防御施設を修理する資材も詰め込まれていく、とにかく陣地を作り有利な形にしてしまおうって魂胆らしい。戦闘だけなので砲弾などの軍需品も山程積載した。
(やるべき事は人員と資材を上陸させて、艦隊の状況を見ながら必要な物を輸送する事)
艦隊陣形は確りとミフユを護る形なので戦闘には殆ど参加出来ないだろう、人材を輸送するので無理な軌道も出来ない。
(ううん......)
辛い、しかし任された仕事はちゃんとこなさなければならない。事実時間は無常で、艦隊は出航し最後になるかもしれない航海を突き進む。先へ進めば進むほど気の所為ではなかったと、嫌に分かるワインレッドの様な色をした海だ
接敵したカゲは蹴散らされ、やがて嵐の前の静けさがやって来る。空には薄っすらと雲が掛かり上空の風は意外と早そうだ。
『前方に敵艦隊発見。第一陣の航空機がやって来ます』
『こちら指揮所。空母と輸送船を守る形で対空砲射撃、艦載機は温存しろ。再度通達、艦載機は温存しろ』
遙か先に大きな島、その前方で展開してる
不気味な沈黙、距離があるので到達するまで時間がかかる。その間にもカゲの空母は発艦作業を繰り返し空へ黒い影を増やしていく、口火は切られた。
バラバラと空へ向かって放たれる銃砲の類、次から次へと墜ちていくが増える黒い鳥。私も高角砲を放ち援護する。
(休む暇すら無い空襲、砲身が熱を持って厳しい。予備の物と交換しながらでないと)
ミフユ船上であれば砲弾を自分で持ってるかの様に運べる、ならば砲身とて......っ、熱い!いやだめだ、思考を止めると船の動きも止まる。
本体の自分に何ら影響がないのならば、火傷しながら持ち運べば良い!
だがこれは本当に厳しい。絶え間なく砲を放つが自分の船でこれ、となると他の艦でも熱を持ち過ぎてるはずだ。事実、対空砲火はまばらになって被害が出始めてる。
(どれだけ行けるか?いや何処までもだ)
他が出来ないなら自分が頑張るしか無い、思考の分断を増やし行動を加速させる。目や手が足りないのならば人数を増やしましょう、砲身が熱いのならば取り替えましょう、機構が壊れたのならば即座に修理しましょう。
(一門毎分120発だって目指せる)
眼の前がくらくらするけど機能は維持出来てる、一発だって無駄にはしない。
(敵艦隊接近、砲雷撃戦用意?)
おそらくそんな言葉を無線機が拾った。味方の戦艦が主砲を、駆逐艦が魚雷を発射しやり合ってるようだ。航空機はまだ居るものの数は減った、機能を戻していく。
(正気に、戻った!)
たぶん、まだダメだな。調整していけば視覚情報を処理できる様になった、耳は......ちょっとまだダメそうですね。
ちょうど温存していた艦載機を発艦させてる所の様だ、混迷極まる状態で戦艦による副砲用いた敵艦殲滅......いつ見ても威力と数が凄い、戦艦には戦艦をぶつけんだよと
そろそろ殲滅できると言った所で
緩く動きながらも即座に人員や資材を降ろし、他の船から出される換えの砲身やら資材の要望を可能な限り叶える。
『敵の増援、来るぞ!』
最初に顔を出したのはもう見たくもない航空機。敵艦隊は空母と一緒にやって来た事を喜べば良いのか嘆けば良いのか、先ほどと瓜二つの艦隊だった。
味方が必死に耐え戦ってる間、ミフユは後方でうろちょろと逃げ惑って対空砲火で航空機を墜とすしか無く爆雷を投げ込む距離に殆ど行けない。てか砲撃の中に入りたくない。
気付けば敵の艦隊は倒し切った様だが、味方は船なのに浮いてる方が少ない。
『まだ来ますよ、気を張ってください』
敵の増援、その二。先ほどとは違い、空母は居ないが普通に戦艦が居る......ねえなんでそんなにポンポンと戦艦が出てくるわけ......?トラウマ
艦内だと対処し切れないらしく負傷者を渡され、もはや砲塔が爆発し戦えない艦から戦える艦へ船員輸送まで目まぐるしく行う。
『敵の増援が来ます、備えてください』
3つ目だそうだ、ははは......いつまで続くんだこれ。
幸いな事に戦艦や空母は居ない、三隻も巡洋艦は居るのにそんな感想が出るなんてもう感覚がおかしな事になってると思う。駆逐艦もワラワラ混合してるし下手は出来ない。
陸上からの砲撃、戦える艦は減ったが陸地からの援護もある。なんとか......なるか?
これ以上の戦力を破壊されてはイカンと抵抗が行われた結果なのか、多少破壊される程度で済んだ。
(......もう終わりか?)
不思議な事に海の色が徐々に透明な物へと......まだ薄ら赤いな?
(戦艦へ向かって雷跡!)
砲を向け、ズドンと一発放てば届く前に炸裂する。何も無い所から浮いて出てきた、ならば......
(居た、沈んでるけど浅いから分かり易い)
爆雷を放てば敵の潜水艦は沈黙する。よく見ればあちこちに影があり、これは第4陣なのでは?爆雷発射機を搭載して動ける船は自分だけなのでポイポイ投げて潰していく。
やがて海水は透き通る色になった。
「我々の......勝利か」
辛勝とでも言うべき物だろうか、陸地へと向かった。
・・・・・
裏話
「陛下、南方の報告書です」
「どれ、見せてみよ」
話は簡単じゃ。南方の油田を取られたあと、本島にも大規模なカゲが襲来して大きな被害が出た。もちろん皇室も......
「そうか、上手くやってくれたか」
仇、でもある。努めて冷静に、振るまわねば......
「......もう下がって良い」
艦隊の6割を失ってなお踏み留まり、取り返してくれた。ならばこちらもその期待に応えよう、種族間の問題に人口問題......どれだけ時間がかかるか分からぬが......
「ああ、ダメじゃな......母上......父上......」
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