第2章十話:遺構/塵鉄惑星
ゴトンッ
車?ああそうだ、アウルム攻略に向け車で移動中だった。いつの間にか仮眠を取っていたのか、地味に距離が遠い。
『あら?起きたのね、ちょうど良いわ!』
「......?」
モニターへ何か映し出される、地図?
『大丈夫?目は覚めてるかしら?』
「ん......」
カポッと出されたコップを受け取り飲む、少しは目が覚めた......ような気がする。
『作戦と言っても単純な物よ。私達は他のグループが足止めをしてる間に最深部へ向かって外部権限でアウルムを停止させる事、抵抗されたら壊しても良いってお墨付きよ』
「突入部隊と一緒にだったか」
『ええ、そうね』
随分と深い個人用のシェルター、まるで秘密基地みたいだ。暴走してる防衛設備がまだ動いてるので、破壊しながら進むらしい。
(ヘルメット良いなぁ......)
モニターで別の車の様子を映して見れば、他の
将官クラスだと相手からの認証で完全に隠すと権限が使えなくなるとかで頭は申し訳程度の装備、そもそも前線へ出て来る想定がされてない。
『そろそろよ、準備は良い?』
「あとは心の準備だけか」
バトルライフルやら武具を確認。最初からいつでも動ける様にしてたので口や鼻部分だけの酸素マスクを着けて呼吸出来る事を確かめる。
『あら?ディアンからの音声ファイルね、作戦開始前に放送して欲しいって。どうする?』
「聞こうか」
『(ピピッ...)これが再生されたという事は順調に作戦開始まで漕ぎ着けた様ですね』
『本作戦は前回、前々回の失敗を踏まえて行っているものです』
『前々回は想定外のアウルムの戦力に壊滅させられ、前回は機械部隊の攻略隊でしたが吸収された経緯があります』
『国同士で手を結び、一致団結になりかけた所をアウルムは平和だった惑星全体へ初めて顔を出し宣戦布告しました』
『同盟には綻びが生じ、前々回の攻略で多大な損失が発生。転がり落ちる様に人々は地下生活を余儀無くされ、地上には何も残っていません』
『......本当に、本当に長い時でした。どうか今回でアウルムとの戦いが終わる様に、作戦の成功を祈っています』
シェルターの地下深くに眠ってたディアンは思う所があったらしい。
そして突入。車から降りて直ぐ機械が地下への扉を破壊してそこからゾロゾロ侵入して、瞬く間に交戦が始まった様な光と音で緊張は伝播した。
(順調だな......)
侵入の速度は落ちない、自分の番になり入るが階段の傍らへ警備ロボットが転がってるばかりで酷く普通な印象を受ける。
地下1階2階3階と非常階段で下へ降りて行けば全貌が明らかになる、上層は機械を製造していたであろう工場ライン、中層に差し掛かって研究所の様な風貌、下層は......
『何も......無い?』
「最下層、いや通路の先に扉?」
だだっ広い空間にポツンと家屋の中で使われる様な木製扉、エディンが軽く触れると開いた。
『そこで待ってなさい、ドローンを飛ばすわよ』
そして直ぐに戻って来た。
『あー......これは......そこの2人は扉を守っててちょうだい。ポッシ、行くわよ』
扉の先には階段、そして......
「部屋?中心に......これは棺?と少女......いやアンドロイド、じゃなくてガイノイドか」
小さな棺に縋る形で
『大型の成人女性ヒューマノイドね、それがアウルムよ』
「ん?んん......なるほど、アウルムは既に機能を停止してたのか」
部屋を見渡せば全てが小さい、え?なに?この惑星の住人からすると私は巨人だったのか?それはちょっと考えてなかったな......
「戦いを終わらせに来たんだよな......どうする?」
『そうね......とりあえずアウルムの目的を調べないと、資料は沢山あるみたいだから』
入って部屋の左側は様々な記録媒体が山積みにされて打ち捨てられてる、右側は本や工作道具とか部屋に住んでた人が使ったまま置いた感じ。
『情報共有して来たわ、ディアンからは調査する様にだって』
「そうか......棺の中は誰が入ってるのか検討は付くか?」
『アウルムを直接見て分かったわ。個人製作の身体補助ヒューマノイド、アウルム。自分の足を不自由なく動かせるよう改造する事も出来たのにしなかった捻くれ者の天才、機械技術発展に貢献した異才』
『
情報を収集していき、だんだん分かってきた。第一にアウルムは身体補助ヒューマノイドへ乗せられるAIを逸脱していない、要するに軍事系でも魔改造された結果でもない。
『起こす?』
「抽出だけにして寝かしてやりなさい」
2つ目、では製作者本人......アウルムの所有者が現状を望み、手足として使った結果なのか?否である、残されたデータは日常的な物しか無く何らかの命令が入力された物ではない。
3、何らかの故障によって暴走したのか?精査の結果、記録メモリへ著しい破損が生じていた。しかしこれは対応稼働年数を越えて記録メモリ、人間で言う記憶を繰り返し再生して発生したに過ぎない。
また、記録メモリへ何度も上書きを実行していたため行動指針が塗り潰され理由の特定が困難、なんとか復元できた情報を繋ぎ合わせると
『壊すモノ......第一対象......守る、かしら?』
まさかと思い調べると、アウルムの認識では製作者がまだ生きてる可能性もあると定義されていた。
「棺、だよな?」
『そうね』
「考えるにアウルム自身が入れたよな?」
『お手製の棺ね』
エディンがビビッと何かを放射して棺を開けずに外から確認した。
『
「.........」
何も言えない、アウルムが持つ物はそれだけ。アウルムの製作者が残した資料を見れば、察しが付いてしまった。
(この人、天才のそれだ)
現在シェルターに置かれてる対惑星外うんたらかんたら砲の原型を設計してたらしい。シェルターの酸素供給器から始まり壁や床、医療関係に今着けてる義手の原型もこの人から来てる。シェルターにある観葉植物もこの人の作り物から来てるらしい。
(......妙だな)
なぜここまで執拗にシェルターで使う様な技術を開発した......?、アウルムが作り出した子達やウィルスもこの人が作った物を利用しただけらしい。
『ディアンからの連絡よ、帰還するようにだって』
「ああ......」
後ろ髪引っ張られるが今は一度のみ込んで、直接ディアンへ聞きたい事も出来た。[壊すモノ]って以前にサラリと出てきて知ってる口ぶりだったよな?あれって結構重要な情報だったのでは?あとアウルムの宣戦布告とやらもどんな形だったのか知りたい。
車へ乗って帰還して、早速聞いてみたら簡単に話してくれた。
『壊すモノ、ですか?表現が難しいですが......アレは宙からやって来るものです。文明を破壊し人々も破壊し、何もかもを破壊するので壊すモノと呼ばれています』
そして宣戦布告も壊すモノが関係してた。
『(サー......)あー、あー......コホン。私、アウルムは現時刻にこの惑星内全土へ宣戦布告致します。いつまで経っても現実を見ず利権争いに終始し、マトモに壊すモノへの対策を進めずただ資源を食い潰す人々が居ては対策が間に合いません。私が全て有効に利用します』
今まで関わった物ってなんか大体壊すモノが関係してるのか......
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