第2章七話:割切/塵鉄惑星

目を開き、起き上がる。いつの間にか置かれた観葉植物はともかく、塵鉄惑星へ戻ってきた事を実感できる白を基調とした部屋。


『あ!起きたのね!』


「おはよう......おはようでいいのか......?」


『良いんじゃない?』


ブンブンとエディンが顔の周りを翔ぶ。塵鉄惑星の様子を見に来たのもあるが、幽海惑星だので精神的に疲弊してしまっているから休息が主目的。


(難易度インポッシブルのまま問題一極依存AIに頼り切り問題を考えるとあれだが)


多少の不安を呑み込めば自分にとって最適な環境である。


『なにか食べるかしら?色々と注文出来るわよ』


何やら選べるらしい、培養肉のステーキバーガーセット......?、培養肉なのにステーキとかよほど自信があるのだろう。お一つ戴こうか。


『それに決めたのね!そのバーガーは惑星規模の国民食だったのよ!バーガーなら他にも種類があって頼めば作ってくれるわよ?それで良いの?』


「とりあえずこれかな......」


食事が届くまでの間にエディンは色々と話を始める、いわく......


『食事を作る事が娯楽にもなったのよ』

『自給の観点で自由に作るのはまだ難しいけど、使える食材は豊富よ!』

『バーガーの種類は動物性蛋白たんぱく質に植物性の物、他にも......』

『そう言えばいくつかの基地が開放されたのは知っているかしら?あ!来たわね』


なんか思ってたサイズより大きいバーガーが出て来た、アメリカナイズ米国様式化......?どこから手を付けたものかと少々困るが、ずは。


「いただきます」


食事だ。つやりと輝くステーキと言っても小ぶりな物で、はみ出さない様にパンが大きい。葉物野菜もたっぷり入っていて色味が豊か。


「......美味い」


パンは外側がパリパリと香ばしく中はふわふわ、瑞々みずみずしい野菜はシャッキリと柔らか過ぎず硬過ぎもしない、肝心のステーキは脂が照り返していたはずだが執拗しつこく無く。


プロのシェフが高級肉を焼いた時の様な食べたのに溶けて、油も殆ど感じず食べた感覚がしない物とは違い。ちゃんと食べた感覚がある。


満足感は凄まじく、夢中で食べて気付いたら無くなっている様なバーガー。あれ程の大きさの物が何処へ行ったのか尋ねる人も居るだろう、満腹感はある筈だがもう2〜3個食べれそうな気もする。


「......ご馳走様でした」


『あら?もう良いの?』


「......食事は必要な量を、必要な分だけ戴くのが良いからね」


『そう』


はらごしらえが済んだら緩く現状を確認する、常に居る訳では無いので発展はってんいちじるしい塵鉄惑星の速度に置いて行かれてしまう。


『大きく変わった事?ドームが大きくなって人も増えた事かしら......』


「確か基地の開放も言ってたな?」


『そうね!地上の作戦室で攻略してる様子が見れるはずだから行く?』


「そうしようか」


シェルター内を歩いてる道中、特に変わった様子は......いや、通路が心做こころなしか拡張されてる様な?


人通りはちょくちょく、地上へ近付くほど多くなっていく。


「さて、状況を確認しよう」


壁へ映し出された戦闘の様子は置いて、テーブルに備え付けられてるパネルをタッチして現状の勢力圏を確認する。


シェルターを中心にピョコンピョコンと基地の位置が示され味方と敵陣、未確認に別れている。赤い強調マークで......


「推定アウルムの現在地......?!もう場所が判明してるのか?」


『YES、ジェネラル。敵援軍を防ぐ為、残存する周辺の脅威を排除中です』


『あら?キアンが発音するなんて珍しいわね?』


安全を期す為にまだ時間が掛かりそうだ。兵器類の配備、製造予定を見てみると少々気になる物も造っている。


[対惑星外敵性物仮定砲撃機構]、おおよそ全長50mの大型固定砲。動作機構は火薬とはまた違う様で、幾つか街へ既に配備されてるらしい。


「......宇宙人でも来るのか?」


『その様なモノね!』


来るらしい、何それ怖い宇宙人は地味にトラウマで思い出したくもないのよ。


「それにしても......キャンと言ったか?」


『キアンね?』


「キアン?」


『YES』


知らないんだけど、誰だね君は......


『あら?そう言えばポッシ〜とキアンは初対面ね?』


「それ」


『軍事AI、キアン』


「......あ、はい」


『ごめんなさいね〜、キアンは意思疎通による命令系統混乱を避ける為に最低限の言葉しか発しないのよ』


「なる......ほど?」


それで良いのかと突っ込みたくなるが、自分も似た様な状態を経験したので合理的である事は理解している。


「取り敢えず、攻略の様子は?」


部隊を進ませるヒト、銃撃は盾で受け止めさせ即座に反撃が行われる。時折接近され大きな損傷を受けるが交代したり下がらせたり、上手い具合にやっている。


何と言うか......凄く、安定感がある。複数の渡り人プレイヤーが協力して分かれた通路を攻略したり、死角を徹底的に潰してる。


「......気にかけなくて良いな、これ」


『ジェネラル、時期が来たらアウルムの攻略に参加を要請』


「何かあるのか?」


『不明。激しい抵抗が予測されます』


まあそうなるか?心構えはした方が良いだろう、心構えの有無でだいぶ変わって来るから。


「......今更だけど基地って何があるんだ?」


『機械、修理装置、製造装置、物資、生産装置または精製装置、シェルター、各種AI、受信機、発信機』


『軍事系のロボットやそれに付随する修理装置や製造装置ね!その土地特有の物資を生産してたり特に無ければ加工してるわ、避難用のシェルターも小規模だけどあったりAIは何処にでも居るのよ』


エディンが解説してくれる、キャ...キアン?の言葉ではイメージし難いけど、エディンは喋り慣れてる感じだ。


『無線受信機や送信機は元々使われてたけど脆弱性を突かれるから、今は有線暗号通信が主流ね!』


『無線はアウルムの通信妨害で利用』


大体分かった、あればあるだけ良いのか?大型固定砲が基地に設置されたりとか、あちこちに分散されてる......経験上から輸送や火力面で一つに纏めた方が良い気がしなくもない。


「なんで砲をあちこちに分散するんだ?その方が良いのか?」


『YES』


良いらしい。自分より人工知能の方が考えてるだろうし、これ以上聞くのも野暮やぼであろう。


「私がやる事は無さそう......だな」


『ポッシさん、目を通していただきたい報告が溜まってまして』


「あ〜」


ディアンだ、まだ代わりの人物は出て来ないらしい。


「分かった、見せて」


・・・・・


塵鉄惑星は大きく変わり続けている、食料がその最もたる象徴だろうか?AI達は人々を管理する為、新しく来た渡り人プレイヤーと共にAIを起動する。


既に新しく来る渡り人プレイヤーは減少し、起きて来なくなった渡り人プレイヤーを含めれば少々......いや確かにAIの方が多い位だ。


ヒトは生きてるだけでコストが掛かる様に、AIとて稼働してる限りコストが掛かる。


いずれAI達は判断を迫られるだろう、シェルターの主電源を落とした時に決められたのは生身の人が相手だったから。


渡り人プレイヤーはその場で消え、また現れる。


過去に自分達がどの様な対応をしたのか、古い情報を探り始めた。

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