第2章六話:前線/幽海惑星
無線で許可を取ってから小島が入り組んだ場所へ入る、知らされた目印に従って進めば少々開けた入江へ出てひーふーみーよい......ボロボロの戦艦が一隻、ズタボロの軽巡洋艦一隻、損傷のある駆逐艦三隻にこっそり居る一隻の海防艦?どれも木々や山陰で隠れる様な位置に居る。
「お届け物でーす......ってその位置で良いのか」
「おお!英雄さんが来たぞ!」
簡易的な昇降機で荷物を降ろして1つ目の依頼を終わらせる、この湾は南部への足掛かり的な場所であって損傷が激しかったり戦えない船が残って居るらしい。てかこれ以上は危なくて下がれないとか何とか、お喋り好きなのかふんわり状況が分かってきた。
「出来れば護衛を付けたいところなんだが......」
動かせそうな駆逐艦三隻は完全に動力部がダメになってたり、戦闘行動が行えない様なただ浮かんでるだけの状態やらで付けられないそう。もし先へ行けたのならば整備された港のある拠点に空母も居るらしく、そちらへ物資を優先してほしいとか何とか。
今できる限りの
「良いのやら悪いのやら......」
「影になっててよく見えないな......敵艦か」
バレていなければこっそりと行きたいが、こちらから見えるという事は相手からも見えている。黒煙は無いが帆が目立つだろう、それを示すかの様にプロペラの音......水上偵察機だ。
「あの距離じゃ当たらんな」
確りと距離を取って偵察しに来た、今まであった
「......砲門が...」
あれ、撃ってくるんじゃね?
「全速前進!帆を張れ!風を受けろ!波に乗れ!」
もう少しで砲撃圏内に入る所で相手の副砲も火を吹き始める、ユラユラと緩やかな操船で相手を惑わし接近すれば何とか致命傷は避けて敵艦の甲板へ砲撃を
「......敵巡洋艦沈黙、か?」
特に降伏の類いもしてこないので、爆雷を近くへ投げ込んで即座に砲撃して起爆させ沈める。カゲの艦には黒い人影みたいなのが乗っている、特に感情とかがあるような動きはしないので不気味だ......突っ立ったまま海に沈むのとか機械か何かか?
「......行くか」
それ以降は順調そのもの、2つの島......いや3つの大きな島か、広い海域を囲う様にそれぞれ港がある。そんな場所へ着いた、ちょうど向かい入れる様にある小さな港に止めれば現状を教えてくれる。
曰く、ここにある三つの島から先にある港は陥落したので行く必要はない。
曰く、現状この辺りでも油田があるものの作戦で予定していた産出量から大幅に劣る。
曰く、先にある島を足掛かりとして過去に大規模な油田施設が建てられた場所へ行く予定だったが、
要するに、荷物はこの辺りを巡って全部降ろして良いらしい。
「ではお言葉に甘える......前に」
他の港の様子を聞く、積荷を何処にどれだけの量を渡せば良いのか考えなくてはならない
ここから行ったところの対岸にある港湾が一番大きく、そのまま進めば同じ様な監視所として港があるとか何とか。順繰りに監視所から荷を降ろし、港湾へ入港する。
「さてどうしたものか......」
港湾は整備され空母に戦艦、巡洋艦やら駆逐艦と戦力が揃っている。場違いな帆船は目立つ様で人も寄ってくるが......はて何をするべきか。
積み荷のやり取りをする中で、話を聞いてみる。
「持ってく物としたら石油とか......傷病人も本島へ連れて行ってくれますか?」
「あと手紙!」
「手紙もそうですねえ」
荷下ろしと話の途中で[警鐘]があちこちから鳴り響く、港湾へ侵入者がやって来た様だ。
侵入者は航空機、編隊を組んで港湾の艦へ攻撃しに来た様だ。慣れているのか座礁した事実上の不沈艦や陸上含めあちこちから対空射撃が行われ、第二波、第三波による港湾の被害は今の所少々炎上したくらいで済みそうだ。
『第二撃は東から来るぞ!』
顔を出したのは戦艦一隻、重巡洋艦二隻、駆逐艦五隻の艦隊。東南にあった監視所が心配だけれど気持ちを入れ替えて戦場を
やれる事は少ない。ミフユは木造輸送帆船であり砲門は多いものの小さく打撃力が無い、前に出る事は危険だし撃った所で当たりどころが良くなければ意味が無い......戦いは軍艦に任せた方が良いだろう。
「すぅ......状況把握開始」
距離はあるものの戦艦と戦艦の殴り合い。補助する様に駆逐艦から魚雷が放たれ、巡洋艦は駆逐艦へ砲門を向け放ち合う。混戦状態なり掛けと言った所か?
「第四波、島の反対側に空母でも居るのか?」
航空機を落として多少は貢献しておく、陸上からも敵艦に向かって砲撃が行われて居るからこちら優勢。しかし駆逐艦はともかく戦艦や巡洋艦が堅く、被害状況が拡大していく。
「動いた?」
仲間の空母がようやく艦載機の発艦を行い始めた、もしかすると航空部隊の被害が大きく温存しているのかもしれない。こっそり喧騒に紛れて海中から魚雷を発射していた敵の潜水艦へ数少ない爆雷を投げ付けながら戦況を見届ける、敵の空母が近くに居ないのが気に掛かるものの一掃出来た様だ。
「......苦しいな」
完全に安心出来る場所って訳でもない、船員にとっては厳しい環境だろう。
荷下ろしの再開をしたものの先程は見かけなかった顔がちらほら、まあ軍隊ではよくある話だ。応対してくれたのは先ほどと同じ人なのでスムーズに事が運ぶ。
「大型空母もこちらへ来れれば違ったんでしょうけど......」
「ふむ」
この先にあった港が大侵攻を受けた時[ここは任せて撤退しろ]を行った空母が居たとか、沈んだかも落ち延びたのかも不明らしい。
(取り敢えず輸送して状況を見届けるか)
物資と傷病人を入れ替えて出港、行きとは打って変わり穏やかな航海になった。時々包帯を変えたり手当や声掛けの必要はあるが、直感で潜んでた潜水艦へ爆雷を投射して撃沈し爆雷の在庫が底をつきた以外何も問題はない(大問題)。
「後は高角砲で何とか......いやこっちも底が見えてるな」
正直に言えば、もっと持って来れば良かった。そもそも高角砲だと仰角の影響で当て辛い、てか余裕を持って来てたのに接敵し過ぎじゃね?
(非常に困るな......)
不安とは裏腹に入り組んだ島へ辿り着く、話を通し一旦休憩してから持って行くものを持って本島へと向かう。
・・・・・
木造船とは思えない程の激戦後、入り組んだ島の入江へ入る。その入江は獣耳や尻尾の毛並みが荒れ果て痩せた人々がジッと耐え忍び潜む、塹壕の様相を呈して居た。
中には(まだ見捨てられていなかった)と、涙する者も居た。
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