第2章二話:日和/幽海惑星
貨物を満載しても、木造快速帆船ミフユに影響はさほど無い。
(結構変わったか?)
幽海惑星で出るらしい敵性艦、
(そもそも帆船だから主砲をドンと置けない......)
置くにしても重量が気になるし、大規模な改装も必要になるだろう。それよか発電機による電気と無線が大きい、10km以内なら通話が出来る便利さは手旗信号に
「まだ接敵した事は無いけど、警戒するに越した事はない。かな」
今回も順調な形で港へ着けて受け取り所に顔を出せば、瞬く間に積荷が下ろされる。幽海惑星は大きな島が1つあって周りに小さな群島が点在する形、島を起点に防衛を構築しているが突発的な襲撃で大変らしい。
(この惑星で何をするべきか)
端的な話し、さっさと去る事も選択出来る状態だ。全く関係の無い
島民の空気感、風や海の流れ、物流による社会構造、得られる学びなんて操船技術の鍛練程度だろう。困ってる人物なんて現実の世界でも大勢居る、助ける理由にならない。
(気に食わないな)
自分の考えを否定する。助ける理由は無いかもしれないが、助け無い理由も無いのだから、と思考を再定義する。
「手の届く範囲で困ってる奴が居たのならば、手助けしてやるのがヒトとしての在り方」
「その為にも先ずは情報収集だな」
「おーい、ニイチャン!積み込み終わったぞ!」
「あいよー!」
頭の中も何となく纏まったので現在の目標を確認する。隣人を助ける為には原因とその対処方法が必要だ、ざっくばらんに言えば根本的原因を探す必要がある。
「ネットに情報が落ちてないんよな......じゃ!行ってくるらあ!」
「積荷!頼んだぞ!」
「任しとき!」
マイナーな惑星らしい。なんか触りの部分しかやって無い癖に上位へ表示される大手の攻略?紹介サイトと、日記みたいな個人ブログしか検索にヒットしない......
「こういう時は足で情報を稼ぐのが鉄則......船だけど」
警戒しながら航海を続けても全く現れないカゲ、本当に襲撃が来るのか分かったもんじゃない。同業者からは襲われたとか気を付けるように忠告されるが......
(運が良いのか、泳がされてるのか)
運ぶ物は多岐に渡る。鉄材等造船に必要な物や燃料類、食料や被服生活用品まで果てには人員の輸送なんかもあるが他人も居ると
(時々増えたり減ったりするのが余計に謎......)
つらつら考えてると目的の港へ着く。先程と同じ様に積荷のやり取り、ここで町の方へ顔を出して情報が転がってないか探して見る。
(パッと見で活気は無く、人は少ない......)
物流が滞ればこうなるのも納得が行く、開いていた茶屋へ入りお団子を頼みつつ話も聞いてみる。
曰く、前は多少でも活気があった。
曰く、大半の男手が徴兵された。
(はて?徴兵とな?)
よく考えれば直ぐに解決した。今まであちこち渡り歩いて来たがミフユ以外の船は人員を配備して負傷した様子も見られた、船員の補充が
(あ、これ船員に限界数があるわ)
駆逐艦が沈みでもすれば百数十人は海へ放り出される、戦艦なんて千人以上は確定だろう。船員と言う謎の数字ではなく、仮想世界ではあるものの一人一人が生きて来た道筋を持つ人命。
(......思ってたより追い詰められてるのでは?)
放棄された家屋を思い出しながらそんな事を感じる。幽海惑星、その難易度はハード、ネットにひっそりと存在する噂では(難易度が上昇するのではないか)と
過去に惑星の難易度が上昇する事案は数件確認されてるらしい、そのまた逆も
(よくよく考えてみると、塵鉄惑星の難易度が
安定して
(......今は幽海惑星の事に集中する方が良いな)
幽海惑星の住民が困ってる根本的な理由はカゲと呼ばれる敵対的な謎勢力だ。勢力圏が一目見れば分かる位に別れてるらしいが、なんか海の底からリポップ《再出現》?する黒い軍艦で船舶や陸上施設を砲撃等攻撃を行い破壊する。
理由、不明。破壊された後は勢力圏に入ってしまう様で勢力の拡大を目的としてるっぽいが......勢力の拡大理由が分からん、そもそも情報が足り無い。
「情報が足りないのなら別方向から、だな」
根本的な解決は難しいが対応策は
第1前提として補給が確りしてなければ、装備がいくら良くても戦果は挙げられない。補給が確りしてると装備が旧くても案外なんとかなってしまったりするけどね......
「補給、補給か......」
(前線は南方って聞くけど、ビローンって勢力を伸ばしてるっぽいのよな)
前々回の島だか忘れたけどふらりと現れた老人が、南方には油田で有名な島があったからそれを取りに行ってるんじゃないか?とか言ってたからソレなのかな......?もうちょっと話しをよく聞けばよかったか、今さらだけど。
鉄鉱石だの資材関係はある、のかな?結構めに輸送の依頼を頼まれるし。日用品や食料品の輸送も依頼されるけど達成率が低いのか同業者と居合わせても船団は作らず、個別にバラバラな形で本島から送り出される......護衛とかも無い感じですし、仕方あるまいて。
「とりあえず輸送に従事するしかないか......ごちそうさん!」
バーっと考えてやれる事は少ない。
・・・・・
あまり知られてない惑星、知っていたとしても離れられてしまう惑星。
それが幽海惑星。ポッシには意味をなさなかったが船員との関係は大きい物だ、数人から始まり数十・数百人に最終的な数千人を管理しなければならない。疑似とは言え艦長の役割をプレイヤーが果たすのだ、仲良くなった人物も戦火にさらされ戦死する事だってある。
自身の艦を沈めてしまい立ち直れない人物なんてザラに居る。惑星内通貨で同じ様な艦船を用立てする事は可能だが、人材はどうしようもない。
そんな地獄の様な環境はともかく、そもそもリアル過ぎて
(ずいぶんと手慣れたな......)
ちょっと怖い位に
それが一定の規範を持つ機械の様に見えて、不気味に思われた。
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