第1章十二話:攻勢
『緊急事態よ!直ぐに戦いの用意をして!』
その言葉を聞いた瞬間に跳ねる形で起き上がり、アーマーを着込んでバトルライフルを手に持つ。
『着いて来て!』
「事態は?」
部屋を飛び出しながら聞く。
『アウルムの子達が死力を尽くしてシェルター攻略へ出たようね!データ共有が断たれてるので数は不明!でも多い事は確か!防壁は突破されてシェルターの3分の1は占領されたわ!』
「何をすれば良い?」
質問は必要最低限、わざわざ場を乱すのは邪魔になる。
『前線へ行ってちょうだい!ただでさえ少ない機兵が乗っ取られて減る前に取り返すわよ!』
「把握した」
とりあえずの把握で[敵はアウルムの子達]、[シェルター内で戦闘になる]、[ロボットの制御を取り戻す事が役割り]。
制御の取り戻し方は複数ある。状況や状態によって対処方法は変わるが教本で学んでる筈だ、最悪の場合一般人でも機械の指示に従えば取り戻せたりするから先にエディンへ遠慮せず頼る事を決める。
『コンタクト!』
「音声入力、権限デルタより対峙機体へコード201を発令」
発砲。異形の機械を破壊しながら、護るべきヒトへ電撃銃を向けて混乱するロボットに再起動の指示を出す。どちらかと言えば指揮系統の再構築が目的だが......上手く行った様だ。
三体の汎用機、戦闘向きでは無いが物は使いようかエディンの指示で何処かへ行く。そしてまたシェルター内で駆けてこれを繰り返す、機兵と呼ばれたロボットは大柄で盾と様々な兵装を積んでいるらしい。つまり......
「これ厳しくないか!?発砲音が煩くて音声入力届かない!」
『厳しいわね、どうした物かしら......』
ズガンズガンと絶え間無く何らかの攻撃が飛び交う通路の交差点、正直どっちが味方なのか分からない。
『閃光弾!持って、無いわよね?取りに行くから着いてらっしゃい!』
閃光弾と聞き理解する。急激な輝きで視界不良になった場合、搭載されたAIが誤作動を起こしてる場合も考慮して再起動するので目的は果たせるだろう。
エディンに着いてくと近場の部屋へ入り、室内灯を壁から引っ張り出して分解して何かを組み立ててる。
『出来たわ!簡易的な物だけど、光を見たら目を焼かれるわよ!』
「使い方は?」
『投げたらコッチでタイミングを合わせて炸裂させるから気にしないで!』
「了解した」
直ぐさま交差点へ向かおうとするが、妙に静かで嫌な予感がする。
『投げて!』
「っ!」
勝手に開けられた扉へ投げ込み、背を向けて姿勢を低くして腕で目を覆う。
パンッ!
破裂した音は軽い物だが、効果を信じて小銃を構え扉から飛び出して安全を確保する。こちらへ向かってた人より大きい機械が背を向けて攻略に動き出したようだ。
『上手く行ったようね!』
「その様だな」
簡易的な閃光弾を携えながら攻略して行く。ロボット達を取り戻し、壊れた機械を応急修理すれば戦線は徐々に押し上がって余裕が出来ていった。
何機かの機兵が着いて来てくれるので、後ろで指示を出して時折前に出て守られながら攻略する形へ落ち着く。もちろんの事、他の渡り人も協力してる様で時々会うがそれ以上でもそれ以下でも無い。
『防衛設備が動けば良いのだけど......』
「この先は、入口のホールか?」
『合ってるわ』
案内されるがまま走り回ったので、頭の中にある地図と合致してなかったがようやくピンと来た。
『なんの反応も無いわね』
「......」
端的に言えば動いてないって事だろう。ホールへ入れば激しい戦闘でもあったのか壁や床が剥がれ、酷く損傷した兵器も転がってる。砲身真っ二つやら黒焦げの塊とか様々。
「やっぱり壁面から砲身が出て来るのか」
『どう?』
「少し待て」
生きてる制御装置にパパッと適当に組み合わせた兵器を取り付けて置く、無いよりマシだろう。
「後は時間が掛かる」
『それじゃあ行きましょう』
ホールの先は広大な受付。最初に見た時よりも狭く見えるのは、設置されていた物品の数々を防壁として積み上げられた痕跡の影響か?
「......アウルムの子達を追い出した後はどうするんだ?」
『防壁を閉じ直して新たな侵入を防いだら、安全な電子ルートでディアンが連絡して来る筈よ。その通達で行動を決めましょ』
とにかくシェルターからアウルムの子達を排除しなければならないだろう、たぶん。
受付の先は駐車場や門へ繋がる大きな道......の筈だが、車が積み上がって居て全貌が見えない。黒焦げの廃車が崩れて来たのか何なのか、押し退ければこれまた防壁として使われてたらしい。
『駐車場の方へ行くわよ!』
「何か...ああ、いや本体か」
『そうよ!私を起こせば防衛もしやすいはず!』
「感染してないのか?」
『大丈夫!入り込まれる前に完全凍結して外界との関わりを絶ってるから、入り込む余地なんて無いわ!』
そんな物言いに不安を少々覚えるが、指示された手順に従って再起動を見届ければ問題は起きて無さそうだ......多分、きっと。
『おーけー、把握したわ!でも連立する門の間に敵機体が残ってるようね?動かせる車で最低限の道は作れるけど、門を閉じてる車は戦いの準備をしてから開けるように言ってちょうだい!』
『これは戦力が必要になりそうね!あまり時間は置けないと思うけど、どうする?』
「近場の戦力を招集出来そうなら招集、出来そうにないならこの場に居る戦力で奪還する。破損した機械を使える様にして来るから呼び掛けは任せた」
時間を掛ければ掛けるほど、相手さんが有利になってく......その概念はここでも変わらないだろう、体勢を立て直す最中で増援されるだろうから一息に叩く。
そもそも体勢を立て直すにはシェルターから相手さんを追い出すしかない、そんな事を思い浮かべ自身を肯定していると渡り人やロボット達が集まったようだ。
「渡り人はひーふーみー......少ないな、機械の方は妥当な範囲か。行くぞ」
ガンッとボロボロの機械を起動して戦力へ加え、スタスタと門の方へ向かおうとした所で何やら話し掛けられた。
「待って、待ってくれ!アンタが指示する理由は!?そもそも何でこんな事になってるんだ!今から何をするんだ!?どうやって戦えば良い!」
「喧しい、指示する理由はここで1番権限が高いからだ。緊急事態の時に一々個人へ説明は出来ない、お前は戦えるのかそうじゃないのか、戦えるなら参加しろ、戦えないなら邪魔になる。下がってろ」
まるで聞けば答えてくれるとでも思ってたのか、呆然として通り道を遮ったままなので避けて通る。手を振って開き機械へ指示を出せば、門へ向かって陣形を作ってくれる。
「なんなんだ!?」
そんなどうしようも無い感情を込めた声が聞こえるけれど放置一択、AIは察しが良いのか車を陣形の前に置いてくれて簡易的な防壁として扱う様子。
「エディン!行動開始だ!開け!」
ギギギギと山になってた車が動き、隙間が出来るとゾロゾロと御行儀良く異形の機械達が侵入して来る。しかしドッシリと待ち構えて居た機械達の銃砲により蹴散らされていっそ哀れである。
特に問題は発生せず、侵入者の数が減れば前線を押し上げて徐々に門を解放していく。途中でやって来た戦力も新たに加え、地道な作業は続いていった。
兵站を切らす。なんて初歩的なミスは無く、地上からシェルターへ続く最初の門を閉じて騒動に区切りを付けた。
(さて、ディアンはどうするのか)
『地上に
地上付近となると空気が薄い。
『シェルター内にはまだアウルムの子達が居ます、対応してください』
シェルター内へ向かってる途中、建設用の車か機械がすれ違う。建築の補助や防衛要員か機兵も何機か残った、とは言え特段なにか問題が発生する様な状況でも無く掃討戦の様相を見せていた。
一通り終わらせ。やっと横になれる、と与えられた自室で横になればお呼び出しが掛かる。
『横になった所で申し訳ないけど、
「はぁ......」
短い休息だった。呼び出されるとか何かしら理由がありそうだし、行かない選択肢は選べない。ムクリと起き上がりエディンについてく、ついてく......
『ちょっとディアン!私は仲介者じゃないのよ!忙しいって......もう。個人輸送車呼んだからそれに乗ってちょうだい、これ以上駆け回るのは健康を害するわよ』
ありがたい事に走らなくて良いらしい、シェルター内は広くて入口まで遠いから流石に休みたいのだ。
個人輸送車なる物は1人用の小さなカプセル車?みたいだ、色付きの不透過ドームなので外から見えないのが地味にありがたい。中から見ると半透明だ。
「......ふわぁ」
少々眠いが外の景色を見るに思ったより早く着きそうな速度、破壊された痕跡もロボット達が動いてみるみる消され壁や床が直って行く復旧作業は手早く終わるだろう。
(......そろそろ寝るか)
ボケっと外を眺めて居たが、流石に眠気もキツイので仮眠を取ろうとした所で見覚えのある景色......そろそろ地上の様だ。
地上はシェルターの様に地続きとなって居て、外気へ触れる事は無い形になってる。シェルターでは無かった小さな窓が唯一地上である事を示してるが窓以外は上から土を被せてる様で半地下と言った具合か?
『Mr.ポッシ、お疲れのところ申し訳ございませんが報告します』
「ああ、うん」
『
「そうか」
『つきましては
「良いんじゃない?てか......やるしか無いんじゃない?」
『こちらが増築計画図です、何か意見がございましたら仰ってください』
・・・・・
一部の小さな界隈では騒ぎになっていた、安全だと思われてたシェルターに敵対的な機械が現れたのだ。
(いったい、なにが......)
急に頭が吹き飛んでリスポーン、安全な場所が破壊され崩れていく。やはりインポッシブル難易度の惑星は何をやっても攻略が不可能なのか?ほんの一時夢を見れただけなのか?
(だれか、たすけ)
味方だったロボット達もウィルスを流されたのか敵対する様になり、ネズミ算式に侵略が加速して行く。課金したり自身のデータまでわざわざ消した事を後悔するレベル。
そんな中で、彼が現れた。
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