第86話 政府の出先機関
東京に戻ってから半月が過ぎた。
9月も半ばになろうかというのにまだまだ暑い日が続く。
そんな暑い中を俺は学校から事務所に戻っている。
「あついね~~」
「はい、まだまだ暑い日が続くので熱中症に注意してくださいって京子さんが今朝のテレビで言っていましたよ」
「は~~、で今日は何だっけ。
わざわざ自主休講までして戻る必要があるの」
俺は朝の食事中に毎日している連絡会で、日中事務所に来てほしいとだけ頼まれた。
まあ、どうしても出なければいけないような授業じゃなかったので、俺はその場で自主休講を決めた。
理由もその時に聞いたはずなのだが、大したことじゃなかったような気がする。
でなければ俺が忘れる筈がない……ほんとかな??
「今朝もお知らせしたように、里中さん達の事務所開きがあります。
その時に懸案である新会社の設立やERJとの合弁会社の件について色々と相談しなければならない国交省のお役人を紹介してもらう手はずになっております。
最初の顔合わせですので直人様も直接お会いして挨拶だけでもしませんといけませんね」
「確かにそうだね、第一印象ってとても大事だよね。
良かったよ、尚子に迎えに来てもらって、でないと忘れていたよ」
「かおりさんから頼まれましたから。
今朝の直人様は精彩を欠いておりましたしね。
昨夜お疲れでしたか」
「ああ、昨夜は少し頑張りすぎたかな」
そう、昨夜は事務所で仕事をしていたら花村さんや榊さんが来ており、まあ、この二人は仕事でちょくちょくここに来ることがあるので珍しい事じゃないのだが、そこに京子さんが来て、更に何故だかわからないのだが聡子さんに幸子さんまでもが乱入して、仕事を中断しての……その、始まってしまった。
そこに騒ぎを聞きつけたかおりさんまでもがやってきて、本当に久しぶりに乱交って奴を始めてしまった。
いったい何人と一緒にやったのか一体全体何Pだったのかよく覚えていない。
花村さんに榊さん、それに京子さんに聡子さん母娘、あ、かおりさんまでもが加わったので、すごいことになったな。
しかも参加しているのが全員が全員とも美女、それもそこらにいる美女じゃない。
ミス何とかに出たら絶対に賞を取れる美女美少女合わせて6人と締めて7Pか。
こんなに大勢との乱交は本当に久しぶりだな……決して初めてじゃないのが鬼畜の所業とは思うが、いったいいつ以来だっただろうか。
ボルネオで談合坂のメンバーとやった時以来か……いや、その後もここの事務所開きの時にこの部屋のこけら落とし?で、談合坂とやった時以来か。
でも流石に疲れたな。
「直人様は、かおりさん達と頑張った後でも、順番に私たちもお相手してくださりましたしね。
でも、若いからと言ってあまりご無理なさるのは感心しませんよ」
「反省してます」
流石に俺の乱れた生活になれている尚子からは、痴話げんかのようにはならずにやんわりと注意された。
そんな会話をしながら事務所に着いた。
事務所で俺はイレーヌさんから服を着替えさせられスーツ姿で同じフロアにできた政府の出先事務所に向かった。
既に事務所開きは始まっていた。
中央に置かれた会議スペースにケータリングで取り寄せたオードブルにビールなどで乾杯をしていた。
俺はお祝いに持たされたドンペリニヨンを入り口近くで飲んでいた里中さんに手渡した。
「無事に事務所を開設されたことをお祝いします」
「あ、直人君。
やっと来たか」
俺は気が付かなかったが、ちょうど里中さんに向き合って話していた外務副大臣の高村さんが俺に声をかけてき。
「え、高村様も来ていらしたのですか。
お久しぶりです。
……でも、こんな一応民間のパーティーに出ても大丈夫なのですか。
その週刊誌なんかとか」
「ああ、そんなことは心配ぜずとも良いよ。
ここはほら、セキュリティーもしっかりしているし、何より、出入りをホテルの入り口からできるしね」
「え、ここってそんなこともできるのですか」
高村さんアテンドしていた格好のかおりさんが俺に教えてくれた。
「ええ、只、普通のルートでは無理ですよ。
清掃なんかで使う業務用エレベータを使って一度地下に降りてからあちこちを回る迷路のようなコースになりますけどね」
「ああ、俺一人では無理だな、絶対に迷うよ。
ああ、それより君に紹介したい人を連れて来たんだ。
中村君、こっちに来てくれないか」
高村さんに呼ばれた人が、もう一人の人を連れてこちらにやって来る。
「彼が俺の後輩にあたる中村先生だ。
今は国交省の政務官をしている。
前にかおりさんから国交省の役人を紹介してほしいと頼まれていたから、ちょうど良い機会なので連れて来た。
「中村と申します、初めまして。
今期で3期目の議員をしており、今の内閣では国交省の政務官をしております。
国土交通委員会の鉄道部会に所属しております。
本郷様には、此度城南島開発で現内閣をお救い頂き感謝しております。
主幹は経産省になりますが、付近の鉄道整備などはこちらの管轄になりますので、これからは我らともお付き合いしてくださることを期待しております」
「中村先生。
若輩の私にそこまで頭を下げなくとも、どうか頭をお上げください」
「それは、どうも。
そうだ、ここに国交省からの担当課長を連れてきておりますので、この場で紹介させてください。
佐藤君」
「佐藤と申します。
鉄道行政調整課の課長をしております。
なんでもこちらではERJで計画が中止になった鉄道計画にご興味があるとお伺いしております」
「佐藤様ですか。
本郷直人です。
こちらこそよろしくお願いします。
こんな席で何ですが、少々お話をお伺いしたいのですが、よろしいでしょうか」
俺は佐藤課長を誘って簡単にこちらの意図を説明することにした。
どうせかおりさん辺りから政府には伝わっているだろうが、上から有無を言わさずに命令されるよりはいいだろうと、ここは相手の顔を立てるというかそういう礼儀の一つだと思っている。
俺の独りよがりかもしれないが、俺らはそのまま傍のソファーテーブルに案内され、そこで話を始めた。
城南島開発が当初俺たちの思惑を超え、大きなものになっていく。
城南島での主導権を完全に手元に置くために、アクセス全般をこちらで握りたいので鉄道を引いて、更に水上バス輸送にまでもこちらで押さえたい。
そのために許認可をはじめERJとのつなぎを頼みたいとお願いをしておいた。
「城南島開発が、そこまで大きなものになるとはここで初めて聞きました」
「そうですよね。
我々だけの開発ならそこまでの規模にならなかったでしょうけど、コロンビア資本が入ってきますので」
「え?
コロンビア資本ですか。
いったいどこが開発に乗り出してくるのですか。
知りませんでした。
しかし、そこまで大掛かりになりますと、本郷様たちがお考えの様に鉄道が要りますね。
分かりました、ERJとは私が繋ぎましょう」
「大変助かります。
私どもは資金はありますが、鉄道事業の経営など全く知りませんので、ERJの計画があったようですから、事業はERJに任せて資本参加を考えております。
よろしくお願いします」
「ああ、先ほどのコロンビア資本の件ですが、参加は決まったようなものですがコロンビアではまだどこが参加するかまでは決まっていません。
それに、この件は官邸の一部しか知りえませんので情報の扱いにはご注意ください」
「あ、これはそれよりもさらに情報が怪しいのですが旧財閥資本も参加するようです。
尤も手を引いた財閥が参加するかはわかりません。
ひょっとしたら別の旧財閥系の資本が参加するなんてあり得るかもしれません。
どちらにしても当初我々が発表した計画の倍近くの規模にはなりそうです。
ですので、鉄道は必須になりますので今後もご協力をお願いします」
「そんな情報まで、教えてくださりありがとうございました。
早速、ERJ方には話を通しておきます」
「佐藤君。
どうかね、まだこの事務所には空きがあるのだが、国交省からも人を出しては。
今回の開発計画は各省庁を跨ぐ大きなものになりそうなのだよ。
私の事務所からも秘書を一人ここに通わせることにした。
流石に常駐は無理だが、国交省の方でも検討してみてくれないか」
「そうですね。
先生の言われるように常駐は難しいですが、通いならすぐにでもできそうです。
連絡担当官なら新人でもできそうですし、里中さんや大下さんのとこのようにうちの若いのを通わせます。
それでも大丈夫ですか里中さん」
「ああ、ここはそれでも大丈夫だ。
俺も大下もここに席を作ったが同じようなものだしな。
俺がここの事務所長となっているが、実質のボスはそこのかおりさんかな、それともあそこのイレーヌさんか。
どちらにしても直人君のところが仕切ることになる。
そこのところをわきまえてくれれば問題無いよ」
「分かりました。
すぐにでも準備させます。
しかし、そうなるとここはちょっとすごいことになりそうですね。
今でも外務省と国交省の先生方が事務所開きに来ておりますし、それに経産省ですか。
ちょっとした官邸のようですね」
「官邸は大げさだな」
「でも、ここのように各省庁が机を並べて仕事をするところなんか、少なくとも日本にはないのでは。
リトル官邸、そんな感じですね」
「リトル官邸か。
それとも官邸もどき」
「官邸もどきはちょっと酷くないですかね。
でも、ここなら省庁を跨ぐネゴをするにはもってこいですね。
ここならブンヤの心配もなさそうですし、開発以外にも使えそうですね。
少なくとも外務省や経産省とのネゴには使えますね」
「国交省が俺らにネゴすることなどあるのか」
「最近は新幹線やリニアの輸出などの案件もあり、少しずつですが外務省や経産省とのやり取りが増えてきております。
でも、ブンヤのすっぱ抜きが怖くてなかなか直接会っての話ができないので、イライラしていたところです。
今度別件でもお世話になるかもしれませんがよろしくお願いしますね、里中さん」
「やれやれ、他の仕事も増えそうだな。
まあ俺も担当を連れて来ればいいだけか。
そんなことにもここを使っても大丈夫か、直人君」
「俺は構わないとは思いますが、どうですかかおりさん」
「日本のためになるのならどんどん好きに使ってください。
必要ならホテルのバンケットも手配しますよ」
「ありがとうございます」
ここの事務所開きも十分に実りのある物になったようだ。
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