第55話 半裸リボンの女性たち
久しぶりの飛行機だ。
離陸時のみコックピットで操縦を見学させてもらったら、あとの巡航時には後部にある別室でのムフフとなる。
日本に来る時にはかおりさんとまったりした時間を過ごしたのだが、今日は変わりばんこ、とっかえひっかえ全員とその……なにせまだ全員とはいかないが少なくとも日本にいた猫さんチーム全員とは経験を済ませてある。
今までさんざん我慢させていたのもあってタガが外れては我慢できないようで結局5時間ずっと誰かの相手をしていた。
普段なら着陸時にもコックピットに入り操縦を見学させてもらうのにさすがに今回はそれもできない。
正に精も根尽き果てたので、ベッドに付いているシートベルト?を寝たまま付けられ、なおかつ両脇に全裸の女性を侍られた状態で着陸して貰った。
ボルネオには夜中に着いたのだが、飛行場にはアリアさんが迎えに来ており、俺の姿を見つけるといきなり抱き着いてきた。
(夜はこの後もありそうだ。大丈夫かな、俺)
そのまま皇太子府に隣接されている屋敷まで車の中でアリアさんを膝に乗せた状態で報告を受けていた。
もうほとんどボルネオショック関連の後処理も終え、アリアさんに時間のゆとりが出てきている。
今まだ長い事ほっておいたこともあるのだが、それ以上にボルネオショックの処理に相当気を使っていたようで、下手をするとアリアさんが燃え尽き症候群にでもかかりそうな勢いだ。
あれだけ優秀なアリアさんがそれも優秀なスタッフを率いてでも、世界を相手の経済戦争をほとんど一人で勝ち抜いてきたのだ。
誰だっておかしくなりそうなところをアリアさんはエニス王子への母性的愛情と俺に対する忠誠と恋愛感情を含む愛情で乗り切ったとかおりさんが俺に教えてくれる。
俺に対する愛情については信じられないものがあるが、なにせエニス王子の助力のために俺を貴族にまでしたのがアリアさんたちだから、半ば義務かと思っていたのだがどうもそうじゃないとかおりさんに後日かなり説教をされながら教えられた。
つくづく女性は分からない。
今回の件ではアリアさんが一番きつかったようだ。
かおりさんは俺についていたし、イレーヌさんも日本で俺がたびたび相手をしていたが、アリアさんは殆ど一人でボルネオに残り全体を指導していたので、精神的に逃げ場のなかった状態が続いていたのだ。
ほかの女性たちも仕事は非常に多かったのだが、交代で日本に詰めていたのでこれもかなりの部分ストレスの発散に寄与していたようだ。
なので今回はアリアさんの慰労が最重要である。
昨晩から俺にべったりのアリアさんを連れて殿下たちとの朝食に向かった。
入学式以来の皇太子殿下とエニス王子に食堂で会うと、開口一番に事務所開きの参加のお礼と、入学祝い代わりの大学への寄付についてお礼を述べた。
「殿下、王子、先日の訪日につきましてお礼申し上げます。
ありがとうございました。
おかげさまで日本の事務所も今では正常に機能を始めております。
今後は日本への投資につきまして殿下たちに最大限ご協力させて頂きますのでよろしくお願い申し上げます。」
「いや、俺の息抜き代わりに行っただけだ。
気にするな。」
「そうだよ、直人。
いきなり他人行儀なので面を食らったぞ。
日本で悪い女にでも引っかかったかと思ったよ。」
「王子、何でそこで女になるのだ。
この場合、日本では『悪い物でも食ったか』になるのが普通だと思うのだが。」
「そこは直人だからだよ。
直人って人一倍スケベだろう。」
「イヤイヤ、スケベは否定しないが、それは酷い。
あ、忘れていた。」
「なんだなんだ。」
「殿下、私の入学祝い代わりの大学への寄付、ありがとうございました。
大学は非常に喜んでいたようで、学内にそこら中殿下からの寄付を伝えるビラが貼ってありました。」
「なんだ、その件か。
気にするな。
少しばかりの御裾分けだ。
アリアさんのおかげでかなり儲けさせてもらった。
直人もアリアさんに十分に尽くしてやってくれ。
君が彼女の一番だからな。」
「分かっております。
今回のボルネオにはそのためだと思っております。
幸い彼女にも時間が取れそうなので、彼女と一緒に休暇を楽しみます。」
「直人の今後の予定はどうなっているのだ。」
エニス王子が聞いてきた。
俺はこの後すぐの予定すら理解していない。
困っていると横のアリアさんが殿下たちに代わりに答えてくれた。
「そのことなら私からお答えさせて頂きます。
直人様の休暇を兼ねて午後からグアムまで向かいます。
向こうで、直人様の飛行訓練をする予定でございます。
自家用ジェットのライセンス取得にはここでは少々難しくコロンビア合衆国での取得が一番楽なので、また、幸いここからですと飛行機で2時間もあれば行けますので、日本におけるGW一杯グアムで滞在の予定です。
なお、私が今回はグアムまで直人様と同行しますが、こちらのオフィスにはかおりが残りますのでご安心ください。」
飛行訓練なんて聞いていない。
そういえば日本に行っている間、訓練できていないが、自家用ジェットのライセンスも次の段階になってきていたし、なにより最低限飛行時間も達していたので都合がいいと言えば都合がいいけど、それだとアリアさんの休暇にならないのではと思っていた。
「それは良い考えだな。
かおりがいれば何にも心配はないし、何より少なくとも日本の市場は閉まっているのでそれほど忙しくも無いだろうしな。
アリアもグアムならゆっくりできそうだな。
直人の飛行訓練と言っても四六時中ある訳じゃないし、あっちでゆっくりとデートを楽しむと良い。」
そう言う事か。
半日以上はフリーな時間があるのだし、何より事務所から離れればそれ以外の仕事はできない。
させないけど。
こんな感じで殿下たちとの朝食を終え、事務所にアリアさんと一緒に向かった。
アリアさんはかおりさんに仕事の引き継ぎを済ませ、俺と一緒に昨日着いたばかりの飛行場に向かった。
今回のグアム行はアリアさんとうさぎ組からタリアさんと新人の尚子の二人がサポートに着く。
いつもとは違いこじんまりとしたメンバーでの移動だ。
グアムの通関はどの国でも入国の際に必要な筈なのだが忘れてしまうくらい久しぶりに感じるが、俺が知っている普通の通関だった。
列に並んで、順番に入国審査を受け入国した。
飛行場に出るとサポートの二人と別れ、俺はアリアさんに連れられ、グアムの繁華街から離れた郊外にあるレジャー専用の飛行場に向かった。
ここには観光遊覧のための会社がいくつもあり、グアム周辺の観光遊覧飛行を行っているが俺らの目的は観光じゃない。
この飛行場内にある自家用機のライセンス取得のための学校に向かった。
すでにアリアさんたちによって予約などは済まされていたので、ここでは本人確認と簡単な健康診断が行われ、すぐに今持っている単発レシプロ機の腕前の確認のための飛行操縦をすることとなった。
唯の確認の為なので学校から一人が後部座席に乗り込んで助手席をアリアさんに譲ってくれた。
20分ばかりのグアム遊覧飛行を楽しんで今日の学校でのイベントは終わりだ。
明日から4日間訓練が始まる。
あとはしばらくグアムに通うことになるが週末にでも通えばよく、どうにかなりそうだ。
そのあたりにアリアさんたちに抜かりはない。
時刻は午後3時になったばかりだが、慌ててグアムの観光をする必要はない。
ホテルでゆっくりとするためにもチェックインに向かった。
もっとも先行しているダリアと尚子が既にチェックインを済ませてあるので、ロビーで彼女たちに落ち合うだけだ。
グアム繁華街にほど近い場所にある非常に豪華な造りのホテルに着いた。
ロビーに入るとすぐに二人に見つけられ、そのままエレベーターで最上階にあるデラックススウィートに連れていかれた。
最近泊まるホテルは全て豪華なスウィートだ。
贅沢が過ぎると庶民な俺が怯えているが、そんなことはお構いなくアリアさんが俺の手を持ち部屋の中に連れていく。
すでに1週間近く滞在するために荷物の整理は済んでいる。
俺はそのままソファーで寛ぐつもりだったが、アリアさんはさらに奥の寝室に俺を連れていく。
まだ日のあるうちにアリアさんったら……ムフフ
と思って一緒に寝室に入って俺はすぐに固まった。
……
……
……
「アリアさん。
これってどういうことなのかな。」
「本郷様、いえ、あえて直人様と呼ばせてください。」
「直人様。
遅れましたが、大学の入学祝いを受け取ってください。」
「あの……
私たちが……
その……」
そこには下着姿の美女が二人。
それも体に大きなリボンを巻き付けて。
これなら俺でもわかる。
お祝いの品って、彼女たち二人だと。
しかしなぜ?
「何でここに居るのですか、花村さんに榊さん。」
そう、そこには下着姿の花村さんと榊さんが居る。
しかし、解らない。
なぜ海賊興産社員の二人がそれも半裸の状態でここに居るかと言うことが。
「もしかして、会社から無理やりとか。」
「「イエ違います。」」
二人はハモリながら否定した。
俺はここで一番事情を理解していると思われるアリアさんに顔を向けた。
アリアさんが答えようとすると二人は顔を真っ赤にして下を向いた。
アリアさんはそんな二人に優しい笑顔を向けながら俺に説明してくれた。
「直人様。
二人は間違えなく直人様に惚れております。
しかし、残念なことですが、お二人とも男性とのお付き合いの経験が無く初心のままこれまで来てしまったようで、どうしたらいいのか分からなかったようです。
また、直人様の置かれている状況はあまりに特殊ですので、お二人ともイレーヌに常々相談していたとか。」
こう言って説明が始まった。
俺の恐れていたような会社からの強制などは全くなく、純粋に初めてを俺に捧げたくて、いや、彼女たちの『初めて』を俺に奪ってもらいたくてイレーヌに相談して、アリアを始め俺の女性たち全員の了承すら既に取れているとか。
恐るべき女性のネットワーク。
そもそも二人はイレーヌとは既に親友と呼べるくらいに仲が良く、イレーヌの日本での生活についてなど散々に相談に乗ってもらううちに今ではよく事務所の俺の部屋で酒を飲んでは愚痴や相談などをしているとか。
俺が使わないから自由に使ってと言っていたバーカウンターが早速仕事していたのだ。
そうこうしているうちにイレーヌさん達と俺との関係を知ってしまった二人はイレーヌに俺の女になりたい、しまいには肉奴隷でもいいから俺に抱かれたいと涙ながら相談していたとか。
本当かよ。
多少のいや最大の誇張はあるのだろうがアリアさんの説明では花村さんは俺とのファーストコンタクトでひとめぼれだったようだ。
信じられないが、彼女はショタなのか……いや、既に高校三年生だからショタじゃないだろうが年下が好みだとか。
と言うより二人ともかなりの美人で、しかもとても優秀。
会社内では絶対に女性役員になると誰もが疑っていないくらいの逸材だ。
しかし、これがいけないかった。
あまりに優秀で、スキがなさすぎる。
並みの男では委縮して彼女たちを女性として見られない。
しかも、彼女たちは今まで女ばかりの学生生活で、男性との接点が全くない生活と来ているのだから男性との付き合い方、出会いの求め方すら知らずに来ているので、男性が近づかない。
そこでの初恋なのでパニックに陥ったとか。
榊さんも花村さんと全く同じ、それも当たり前で中学時代からの親友の二人は揃って同じ道を進んできたのだ。
最初に花村が初恋でパニックになったのを聞いて興味を覚えて俺に会った
つくづく本当かよと言いたい。
才色兼備の美女なんて向かうところに敵なし状態とばかりに思っていたのだが、美人は美人なりに苦労しているようだ。
二人とすっかり仲良くなったイレーヌがかおりを巻き込んで相談した結果、とりあえず入学のお祝いとしてここに送り込んできた。
この先は俺しだいだとか。
アリアさんも二人については知っており、今ではすっかり気に入ったようで、俺の女としてもらいたそうだ。
俺としても彼女たちに異存が無ければそうしたいのだが、奴隷と違って無理して俺なんかにと思わなくもない。
まあ据え膳何とかで、頂くものは頂くが……やはり俺はクズだな。
この先については考えない。
どうとでもなれだ。
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