第41話 残念な二人
夕方になって小喬さんとエリフがやってきた。
「下の方はどうなりましたか」
「イレーヌさんと花村さん、それに榊さんが……その~~」
「まだ、飲み続けている訳ですね。
いいですよ。
それより、明日は何か予定がありますか」
「イレーヌさんからは聞いていませんので、これといって無いかと。
せいぜい事務所の片付けですかね」
「それでしたら、僕の部屋を使わせてください。
あそこでなら明日まで飲んでいても事務所開きには影響は出ませんよね。
あの部屋は外の人には見せたくはないですから」
「ありがとうございます。
そうさせてください。
でもあんなイレーヌを見たのは初めてかも」
「初めての日本で孤軍奮闘してやっと手に入れた城ですからね。
嬉しかったのでしょう」
「そうですね、直人様に喜んでもらえたことが殊のほか嬉しかったのでしょう」
「明日は、ゆっくりできそうかな。
あ~~そうだ。
あすの朝食をここで取りたいからみんなを集めて欲しいかな。
かおりさん、頼めますか」
「はい、では何時にしましょうか」
「イレーヌさんの様子を伺うと、遅いほうがよさそうだね。
9時にここでで、どうでしょうか」
「そうですね。
わかりました。
朝食はケータリングを頼んでおきます」
「本当にここは便利だよね。
何でもありそうだしね。
でも毎日ケータリングと言う訳にもいかないよね。
落ち着いたら僕がつくろうかな、みんなの分も」
「「「「え!」」」」
「直人様にそのようなことをさせる訳には、食事なら私………」
そのあと気まずい沈黙が。
そうだよね、この人たち何でも出来そうだったので気がつかなかったのだが、今まで料理を作ったことがないんだよね。
王宮にいれば作らせてもらえないよ。
それも子供の頃から専門の知識を習得させられれば、一般生活の知識を持っていなくとも理解できる。
でも、さすがにこの空気のままじゃまずい。
「追々考えるとして。
でも僕の趣味みたいなものだから、そうだ、一緒に料理を作っていこうか。
楽しいよ」
「え、いいんですか」
「そうだよ、誰でも初めてはあるしね。
みんなで少しずつ覚えていけばいいだけだよ。
仕事としてでは無く、楽しみとしてやっていこうよ、ね」
「そうですね、ここに常駐する人たちで順番に楽しみながら作ってみましょうか」
「失敗してもいいんだから。
それに朝食なら、そんなに手の込んだものは食べないから大丈夫だよ」
そんな話をしたら急に3人はワイワイと楽しそうに話し始めた。
かおりさんがキッチンに用意してあるものでお茶を入れてくれた。
本当に美味しいお茶を入れてくれるので、料理をしたことがないことが信じられないのだが、所謂メイド仕事だけは完璧に仕込まれているのだ。
4人で暫くお茶を頂きながらゆっくりとした時間を過ごしていた。
~~~~~
ところ変わって、事務所棟にある直人の部屋だ。
午後7時を回ってもイレーヌさんたちは飲み続けている。
かれこれ5時間は飲んでいるのだろう。
その間彼女たちの間では愚痴やら惚気やらが延々と続けられていた。
彼女たちの世話をネコさんチームのリーダーであるエマが文句ひとつ言わずに続けている。
彼女には確信があった。
今イレーヌさんと飲んでいるおふたりは日本における直人様のお力になる方だと。
それに今まで頑張ってきたイレーヌさんへの少しばかりの恩返しもあるのかもしれない。
どちらにしてもエマも少しは酒を飲みつつ、ここに残っているチームのメンバーと一緒に世話をしていた。
「エマさん、もうお時間になりますが」 とエルサが言ってきた。
「もうそんな時間になりますか。
そうですね、今日からはじめるとおしゃっておられましたから、準備をさせないといけませんね。
準備の方は大丈夫なのですか」
「はい、ドレスは届いております。」
「ドレスを持ってすぐに直人様の所にお行きなさい。
あちらには空き部屋がたくさんありますし、そこでかおり様たちにでも手伝ってもらえば直ぐに準備が整いますから」
「はい、花村様、榊様、それにイレーヌ様。
お楽しみ中大変失礼しますが、私はここで中座させていただきます。」
「え?
何故なのエルサ」
「はい、直人様のお約束がありますので」 と言って、エルサは顔を赤らめた。
直ぐにイレーヌは状況を悟って、
「あら、あなたが今日の順番なのね。
最初は痛いかもしれませんが、直人様はお優しくしてくださるから、すべてを直人様にお任せしなさい。
直人様は素晴らしい方なので、きっと良い時を過ぎせますから。
頑張ってね」 と酔っているはずのイレーヌさんからの激励をもらって、さらにエルサは顔を赤らめ 「失礼します」とだけ言って、その場を離れた。
「そうか、あの約束が始まるのか」
「なんのことなの、イレーヌ」
榊さんから聞かれたイレーヌは淡々と説明を始めた。
「私たち全員が直人様の女なの」
「え、どういうことなの」 と、今度は花村さんが聞いてきた。
「だからそのままよ。
私たち全員は身も心も直人様に捧げているのよ」
「え?」
「スレイマン王国独自の習慣ですが、王室の方は女性奴隷を持つことが許されているのよ。
王室の男性は全員が国で準備している女性を奴隷として売買が許されているのよ。
そう、性奴隷の意味もある女性がね。
それが私たちなの。
その女性たちだけれど、陛下のお許しがあれば王室以外にも下賜できるのよ。
そうやって、私たちの半数はエニス王子から直人様に下賜されたのよ」
「え、それじゃ~イレーヌは直人様に抱かれたというの」
「も~~、マリコは直接的な表現ね。
で、本当のところはどうなのイレーヌ?」
「マリコ、乃理子も落ち着いて。
そうよ、それこそ私やアリア、それにかおりの3人で、直人様の筆おろしもさせて頂いたわよ。
それからの数日は、それこそ毎日のように直人様に女性の扱いを教えていたわ」
そこから下ネタ満載で赤裸々に性生活がイレーヌから語られた。
榊や花村は嫌な顔をひとつもせずに、いや、興味津々で目をキラキラと輝かせて聞いていた。
それから数分後に、やっと、さっきこの場を去ったエルサについての説明が始まった。
彼女たち、陛下より下賜された18歳の女性たち10名が順番で初めてを直人様に捧げることになっていることを。
「ま~~、でも、なんだか羨ましいわね」
「一人も嫌で抱かれているわけじゃないのよね」
「むしろ直人様を独占したいくらいに思っているわ。
でも、直人様には使命があり、今の人員でも足りないくらいだから、いずれ増やさないといけないとも思っているわ。
でも、直接買うことができないので、エニス王子を通して下賜されるようにしていかないとね。
でも、そうなると、ただでさえ一緒にいる時間が限られているのにますます少なくなってしまうわね。
女としてはさみしい気持ちもあるわ」
「例え少なくなろうとも、肌を合わせて優しくしてもらえるだけ羨ましいわ。
正直、そうなったことがないから」
「私も、処女よ。
何故だか男には縁がなかったわね。
なんだか嬉しそうに去っていった彼女が妬ましいかも」
「あなた方は、恵まれているわね。
私も本郷様に抱かれてみたいな」
「何言っているのよ、マリコ。
あなたのようなおばさんを本郷様が抱きたいとは思わないわよ」
「おばさんは酷くない。
あなたも同じ年なのだからね。
私がおばさんならあなたもよ。
それに、あなたは本郷様に抱かれたいと思ったことないの」
榊が同期で友人でもある花村に問い返した。
すると、花村は元から直人に気があったようで、途端に顔を真っ赤にして下を向いてしまった。
そういえば花村は、以前のパーティーの席で大胆なドレスで直人の気を引こうとしていたのだが、直人が参加しないと知ると途端に落ち込んでいた。
抱いてもらえるのなら今すぐにでも直人の所に行って抱かれたいと思っているのだ。
知らず知らずに花村の心は直人に占領されていた。
花村よりは短い付き合いなのだが、榊もまた直人に惹かれている女性だ。
彼女の場合、ほとんど一目惚れだったようだ。
花村も榊も同じような性格の女性なのか、男性の趣味も同じだった。
それだけに既に直人に抱かれたことのあるイレーヌには嫉妬も覚えたようであった。
そんな会話を冷静に聞いていたエマは、二人に対して聞いてみた。
「榊様、花村様、お二人共、本当に直人様に抱かれたいとお思いなのでしょうか。
もし、本気のようならば直人様にお願いされてはいかがでしょうか。
お優しい直人様です。
決してお二人を傷つけるようなことはおっしゃりませんよ」
その話を聞いたふたりはエマの質問には答えず、顔を真っ赤にして、ただモジモジしているだけだった。
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