第42話 初夜の儀


 エルサは届いたばかりのドレスを大事そうに抱え、住居棟のあるペントハウスに向かった。


 彼女たち全員には、ペントハウスに入れるように例の鍵は持たせている。

 受付嬢のいるホールを抜けエレベーターまで、それこそ走る勢いで、嬉しそうに向かったのだ。


 ペントハウスの扉を開けてくれたエリフがエルサの手を取り直ぐに空いている部屋に連れて行った。


 俺からは誰が入ってきたかは分からない。

 「誰が来たのかな。」


 「ここ担当の者が帰ってきたようです。」

 

 「そうか。」


 これ以上会話にならない些細なことだと思われている。

 先ほど自分で言っていた所謂『初夜の儀』の件は忘れている。


 この『初夜の儀』は、彼女たちの間でかなり前から言われてきた言葉だ。

 俺が一人ずつ彼女たちの相手をして、思い出に残るような形での破瓜行為すると言ったことから、彼女たちの間では、非常に待ち焦がれたことだったためにしばしば話題になるようになり、今では『初夜の儀』で統一された言葉となった。


 俺がお茶を飲みながらたわいのない話をかおりさんと続けている間に、着々とエルサの準備が整っていく。


 部屋に入ったエルサは直ぐに大事に抱えていたドレスを取り上げられ、服を脱がされた後に浴室に連れて行かれ、全身を綺麗に洗われ、真新しい真っ白な下着を渡された。

 渡された下着は清楚を演出できる下着だが、よく見るとかなりエロチックの要素も入っているかなり高価な下着だ。


 下着をきちんと付けたエルサは下着姿のまま、化粧を施され、やっとウエディングドレスを着せられた。


 すっかり準備の整ったエルサの姿は、どこからどう見ても結婚式真近の新婦そのものだ。

 顔には緊張しながらもやや赤みを帯びた表情で、軽く笑みを浮かべている。


 そこに、軽く化粧を直し、フォーマルな衣装に着替えた小喬さんが入ってきて、準備の出来上がったエルサの手を取り、直人のところまでエスコートしていった。


 ~~~~~


 「直人様。

 『初夜の儀』の準備が整いました」 と小喬さんがエスコートしてくるエルサを見つけたかおりさんが、俺に言ってきた。


 「え?

 あ、あの件ね。

 よろしくお願いします」


 するとラウンジに通されたエルサの姿を見て俺は固まった。

 唯一できたことは小声で呟くだけだった。


 「き、きれいだ」

 「直人様、本人に聞こえるように言ってあげてくださいな」 と思わず零した俺の独り言を聞いたかおりさんが言ってきた。


 「直人様、『初夜の儀』のためにエルサが参りました」

 「直人様、エルサです。

 今日はよろしくお願いします」


 「エルサ、きれいだよ。

 今日は、君と僕にとって素晴らしい時間を過ごそう」


 俺がエルサに見とれながら言葉をかけたのを聞いた小喬さんは気をきかせその場から離れ、かおりさんは部屋の明かりを少し落としてから部屋を出た。


 俺はエルサの顔を覆っているベールをめくり彼女の唇にキスをしたあと、優しく手を引き寝室に連れて入っていった。

 

  寝室にある大きなベッドの前でもう一度エルサと向き合い、顔の前にあるベールを取った。

 

 そのまま直ぐに唇を奪った。


 その後は、ドレスを脱がして事に及ぼうとした時に、ふとかおりさんの言葉を思い出した。

 『彼女たちの着ているドレスですが、レンタルでなく買い取りで、彼女たちの物です。

 そのまま汚しても構いません。

 いや、むしろ派手に汚してください。

 その方が彼女たちが喜びます。

 記念にすると言っておりましたから。

 なんなら派手に破り捨てても構いませんよ』

 

 その話を聞いた時に俺は、かなり待たせてしまったために、なんだかこじらせてしまったかもしれないと思い、申し訳ない気持ちになった。


 でも、清楚な美人で、それも誰の手も触れていない、まさしく正真正銘18歳の処女。

 それがウエディングドレスを着て、俺のことを待っているなんて思うとたぎってくるのは男のさがだ。


 俺はエルサの唇を奪ったまま、ドレスの胸の部分をはだけさせ、その綺麗に整った乳房を空いている片手で揉みだした。


 彼女の口から悩めかしい声が漏れ出すと、今度はドレスの裾をたくし上げ、彼女のデルタゾーンを下着の上から遠慮なくまさぐりだした。


 彼女は全くの初めてなのに、ちょっとばかり激しくなってきていることをかろうじて思い出し、俺は少し落ち着きながら徐々にドレスを脱がせることをせずに下着だけ脱がせた。


 エルサの方から俺を切なく呼び出したのをきっかけに、そのままエルサをベッドに倒して事に及んだ。


 俺は少し前まで童貞だったが、すでに経験だけはかなりの場数を踏んでおり、初めての女性も複数人相手をしている。


 このシュチエーションが俺を興奮させているだけだ。

 それをわかっているのだが、我慢できずにここまでは少し乱暴だったと反省しながら彼女の初めてを貰った。


 翌朝、ベッドには満足した顔をしたエルサが優しい表情で俺のことを見つめていた。


 「おはようございます、直人様」

 

 「おはよう、エルサ。

 昨夜はちょっと乱暴だったかな。

 エルサが初めてだったのは知っていたが、我慢できなかった。

 ごめん」


 「いえ、直人様に激しく求められて、女性として自信がつきました。

 これからも末永くよろしくお願いします」


 朝のベッドでピロートークじゃないがイチャイチャしながら話しているとかおりさんが小喬さんを連れて部屋に入ってきた。


 「おはようございます」


 「おはよう、かおりさん、小喬さん」


 「無事『初夜の儀』が済みましたね。

 このドレスはきちんとたたんで保存できるようにしておきますね」


 「小喬さん、ありがとうございます」


 俺が派手に汚したウエディングドレスをお土産でも扱うように大事そうに抱えて外に出ていった。

 あれをどうするのか少しばかり気にはなったが触れてはいけないような気がしたので、そのままスルーした。


 「風呂の準備も出来ております」 と言われ、そのまま直人はかおりさんに風呂場に連れて行かれた。


 風呂場にはエマとエリフが裸で待っていた。

 「「おはようございます、直人様」」


 「おはよう。」


 「直ぐに体を洗いますね。

 今日から、順番でエルサも加わります」 と言われ、後ろを振り返ると、裸のエルサがそこに待っていた。


 「よろしくお願いします」


 昨夜のこともあり、ちょっとばかり俺は気恥ずかしさを感じていた。

 そんな俺の様子を見て何かを感じたかエマは俺を少しばかりいじってきた。


 「あらあら直人様。

 今日はどうしましたか。

 ちょっといつもと感じが違いますよ。

 もしかしたら、エルサの裸を見て感じましたか。

 私たちがいるというのに」


 「え、ち、違うよ。

 そ、そんなことない」


 「こらこら、直人様で遊ぶんじゃないよ。

 失礼しました直人様。

 今日のエルサは見学です。

 これからのための勉強をさせるために来てもらいました」


 そんな感じで美女三人に囲まれながら朝の入浴は進んでいく。


 浴場でキャキャウフフをした後にダイニングスペースに全員を呼んで朝食を取ることになっている。


 朝ゆっくりしたためか、それとも浴場でゆっくり楽しんだためかはわからないが、俺たちが浴場を出た頃には全員が集まっていた。


 彼女たちの特にエルサが俺を見る目が暖かなのが非常に恥ずかしかった。


 昨日お願いしてあったとおり、9時には全員で朝食をとり始めた。


 その席で、今日の予定を確認していった。

 案外全員が集まっての朝食はいいものかも知れない。

 朝礼が省けるし、公務からプライベートにわたり全員が同じ情報を持つことができる。

 これは、これからもぜひ続けていきたい。


 「直人様、直人様が今日特別に何かするご予定がありますか」


 「イレーヌさん。

 ないけど、なんで」


 「はい、昨夜は以前からのお約束を実施して頂きましたが、その、彼女たち以外の方もお願いできないかと」


 「彼女たち以外?

  ……

 あ、そうか、半日の自由ってやつか。

 で、今日は誰がすることになるのかな」


 「よろしいのでしょうか。」


 「そういう約束だからね。

 で、誰と、どこに行くかを決めているのかな」


 「はい、昨日、権利の行使を願い出た小喬が直人様にご予定がなければ今日お願いできないかと言ってきております」


 「イレーヌさん。

 仕事の方は大丈夫かな。

 明日事務所開きだよね」


 「そちらの方はほとんど終わっており、今日の仕事としては、その……」


 「何か言いにくいとこなのかな」


 「直人様、あまりイレーヌをいじめないでください」


 「は?」


 「今日の仕事は、昨日汚した事務所の掃除だけくらいですので、小喬が抜けても問題ありません。

 というか、一番汚した直人様の部屋の掃除はイレーヌと私が行いますので、他はほとんど仕事らしいことはありません。

 今日は日本に慣れてもらうことが仕事といえば仕事ですかね」


 「わかりました。

 で、小喬さん。

 今日のご予定は決まっていますか」


 「はい、せっかく日本に来たので、直人様とそのネズミの王国でデートをお願いしたく」


 「そりゃ~~いいね。

 僕も行ったことがなかったんだよ。

 そうと決まれば早速行くとしようか。

 ここからだと、え~~と何線に乗ればいいのかな」


 「直人様、タクシーを準備させます。

 それで向かってください」


 「え、せっかくのデートだよ。

 電車で一緒にとは」


 「それは直人様が東京に慣れてから、またお願いしますね。

 まだ慣れていない直人様では、東京で迷子にでもなられてはこちらが困りますから」


 「否定できないのは悲しいけど、そうするわ」


 「では、準備が整いしだい楽しんできてください」

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