第40話 とても豪華なお家でした
かおりさんはイレーヌを連れて部屋に入った。
「何ここは」
「ですから、ここは直人様の部屋です。
接待を誰にも見つからず受けられるように準備しました。
それに、日本でもボルネオの時のように徹夜で詰めることがあっても直人様に奉仕ができるようにと……」
やっぱり残念が入っていたよ。
仕事は誰よりもできるのに、なんだろう。
そのあと恐る恐る花村さんと榊さんが部屋に入ってきてイレーヌに何か言っていた。
流石に彼女たちもこれを見れば引くだろう。
あれ、なんだかあのふたりは嬉しそうに話しているな。
やっぱり同じ匂いがする人たちなのだろう。
仕事のできるスーパーレディーであることには変わらないし、あのまま交友を許していて大丈夫かなとは思ったが、とりあえずみんなのいる多目的室に戻った。
「ちょっと聞いてくれ。
俺の部屋まで立派に用意してもらいありがとう。
しかし、昼は大学に行くし、稼働率が正直高いとは言えない。
立派なバーカウンターまであるので、業務に支障のない範囲でみんな自由に使って欲しい。
いいですよね、イレーヌさん」
「はい。
あの、私も使っても……」
「いいですよ。
誰かを接待することはあまり考えられませんが、それに使っても構いません。
ただしその時は仕切りでベッドだけは隠して欲しい」
それにしても、なんだろうな。
この様子なら、住まいの方も心配かな。
プレ事務所開きの会もいよいよカオスと化してきた。
かなり溜まっていたと思われるイレーヌさんが、これもストレス満載だったと思われる花村さんや榊さんと、酒も愚痴も止まりそうにない。
その横でお世話をしていた小喬さんもついに仲間に引き込まれ、一応日本では未成年扱いの葵たちが酒も飲まずに先輩諸氏の面倒を見ている。
明日は彼女たちにお礼をしないといけないな。
「直人様、ここは私たちが最後まで面倒を見ますからそろそろお部屋の方に移りませんか。
エルサに案内させます」
「いいのか、それじゃ頼もうかな。
あ、榊さんと花村さんだけど潰れたらあそこの部屋のベッドを使っていいからお願いね。
シャワーなんかもあるようだし、これから誰でも自由に使って、ストレスを溜めないようにね。
それじゃ案内してもらおうよ、かおりさん」
エルサに連れられて俺とかおりさんがエレベーターでロビーフロアーまで降りて住居棟のエレベーターホールに向かった。
途中で住居棟に入るところでしっかりチェックされた。
流石にここはかなりセキュリティーレベルが高いらしい。
事務所棟に入るときもガードマンのいる横を自動改札のようなところを通って入っていったが、住居棟はそこまで野暮じゃない。
きちんと受付嬢が身分を確認していた。
花村さんたちは酔いを覚まさないと、ここから出てはまずいのでは。
ここには海賊興産の関係者がたくさんいると言うか、ここの開発を海賊興産が一緒になってやっているので、それこそ関係者がいるはずだ。
もしかしたら、榊さんの部下だって受付やガードマンの中にいるかも。
後でそれとなく面倒を見ている連中に伝えておこう。
これくらいは色々と世話になっているのだし、借り貸し無しでね。
俺はそのまま奥のエレベーターに乗せられ最上階まで連れて行かれた。
最上階までエレベーターを向かわせるには鍵が必要のようでエルサは俺に鍵を渡してきた。
かなりクラシックな鍵だが、この鍵を入れる場所がこのエレベーターにはない。
「この鍵だけど、どこで使うのかな」
「直人様、それは持っているだけで大丈夫なものです」
「え、このクラシックな鍵がか」
「あ~、それですか。
直人様は誤解しています。
直人様が思っているアンティークな鍵ですが、それはキーホルダーと思ってください。
その鍵についている物が認証キーとなっております。
持っているだけで大丈夫ですが、逆に持っていなければ最上階のボタンは押せない仕組みとなっております」
そういうことですか。
アンティークな鍵はキーホルダーですか。
紛らわしいこと甚だしい。
でも、これだとわかりやすいかも。
最近の車じゃないが本当に便利な世の中になってきた。
そんなことを考えているとエレベーターは最上階に到着して扉が開いた。
そこは大きな扉がひとつあるだけの場所だ。
いや、メンテナンス用の非常口はあるが、それでもひとつとは、考えてもみなかった。
そういえば先日イレーヌさんがペントハウスがどうとか言っていたが、正直ペントハウスって雑誌の名前しか知らなかったので聞き流していた。
「直人様、こちらです」
どんどん奥に入っていくエルサ。
扉を開けると、本当に広い部屋だ。
「ここが玄関ホールとなっています」
部屋じゃないのか、予想はしていたよ。
あれほど贅沢な使い方の事務所を見たあとだから。
それにしたって、贅沢じゃないか。
これじゃあ、ボルネオの西館よりも贅沢かも知れない。
「ここは直人様だけの城となります。
ボルネオだとどうしてもエニス王子が居りますから。良い部屋はエニス王子に割り当てられます。
しかし、ここでは全部直人様のための物にできますのでイレーヌさんが探しに探していましたが、本当に良い物件に当たったと喜んでおりました」
「そ、そうだね。
かなり立派で驚いているよ」
「ここの作りはかなり広々と取られており、庭も広く取ってあります。
間取りは10LDKといった感じですか」
「え、10部屋もあったら、君たち用に借りている部屋はいらなくない」
「そうですね、ここには常時数名を置くことになりますが、10部屋ではゲストルームもいりますし、心もとないかも」
「わかった、でもそれじゃ、ここにはとりあえずアリアさんとイレーヌさん、それにかおりさんの部屋を取っておいてね。
その他は、君たち常駐する人用に部屋を割り振って欲しいかな」
「アリアさんのは要りますか。
日本に来ることは希ですから、そのときはゲストルームを割り振ればいかがでしょうか」
「そうだね、そうしよう。
それでいいかな、エルサ」
「では、そのように。
それで、あの件はいつから始めますか。
私たちの準備は終わっております。
直人様の都合でいつでも始められますから」 と言ったエルサは顔を赤らめた。
あの件って何だ………あ、君たちの処女を頂く件か。
「分かった、良ければ今晩から順番で頼めるかな。」
「わ、わかりました。
そのように調整をします。
それでは一旦下がりますが、下が落ち着いたら、今日から二人を常駐させますね」
エルサが下がったあと,かおりさんとこのペントハウスの全ての部屋を見た回った。
多分俺用に準備した部屋だろうか、大きなベッドや豪華な家具類が取り揃えてあったが、それ以外の部屋には最低限の物しか無く、まだ誰も使っていない感じだ。
「それにしても豪華ですね」
「直人様は石油王のようなものです。
これくらいで驚いてはいけません。
それに、ここにはただ買い揃えたものしかなく、今使わせてもらっているボルネオの部屋のように昔から価値のあるようなものはありません。
その価値を考えると、そこの半分位の価値しか無いと思いますよ」
「そんなものですかね。
僕には価値がわからないから普通に使っていたけど、あっちも相当なものだったんですね」
リビングや、浴室のような直人が使用しそうな場所は全て家具類がきちんと取り揃えてあり、直人自身がこれから何かを買い揃える必要は無さそうだった。
「かおりさんは僕の部屋のとなりを使ってください。
そちらの部屋はイレーヌさんに使ってもらいましょう」
すべてを見終わり、部屋割りを決め、リビングでくつろぐことにした。
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