第12話 海賊興産と大明共和国の影
公私ともに充実した生活をしていた俺の日常は、とにかく朝食はほぼ毎日エニス王子と皇太子殿下と一緒に日々の会話をしながら摂って
昼は結構エニス王子とも別々なことも多くなるのだが、俺はできる限り自分のところの女性たちとは一緒に取るようにしていた。
なにせ彼女たちは奴隷なので王室関係者との会食である朝食や夕食には同席できないことがあるためだ。
俺が施設出身でもあり、食事はみんなで取る習慣があるので、自分だけ先に食事を取ることの引け目が取れないから、俺からかおりさんをとおして女性たちにお願いをして昼だけは一緒に取るようになったのだ。
そんな日常生活をしていると、王子たちとの会話にもついていけるようになってきたのだ。
基本ボルネオでの会話は英語で意思疎通を図っている。
なので俺でも慣れれば聞き取ることは割と簡単にできるようになった。
しかし話すことにはまだ難しい。
なにせ相手は王族だ。
敬語の使い方のなど、いつも同席してくれるかおりさんに助けられながら会話をしていた。
エニス王子とは会った時からファーストネームを呼び合っていたので、ここでもそう呼ばせてもらっていたのだが、非常に気さくで前からエニス王子とも仲の良かったボルネオ王国の皇太子殿下ともここ皇太子府内の公的な場合を除きファーストネームで呼び合うようになった。
エニス王子の方でもやっと自身の資産運用が出来る環境が整ってきたので、これから本格的に経済的基盤の強化していく。
エニス王子は自身の仕事上の問題や悩みなど割と頻繁に話題とすることが多く、その場でみんなが考えることも多々あった。
しかし、最近になって、全員と打ち解けてきたのか皇太子殿下であるハリー殿下も仕事のことなどを話すようになってきた。
ここボルネオも資源特に石油資源での外貨獲得で豊かになった国なのだが、ハリー殿下はいつまでも石油に頼っている経済に危機感を抱いていた。
そんな折に日本政府から技術的援助などのプロジェクトを持ちかけられ最近はそのプロジェクト関係でわりと忙しいらしいと話してくれた。
その時にはどこの産油国も同じ悩みを抱えているもんだと割と聞き流していたのだが、これも後に俺お馴染みの定番であるイベントにつながるとは誰も思っても見ていなかった。
とにかく俺は仕事も女性にも慣れてきた頃になって、例の海賊興産から返事をもらった。
『すぐに顔合わせだけでも行いたいとボルネオに伺う』との連絡をかおりさんからもらった。
その連絡を受けてから1週間後にふたりの日本人が訪ねてきた。
取り急ぎ新たな窓口となるところに挨拶しに来たそうだ。
西館応接にてまだ大学生にもなっていない俺が日本の一流会社の部長級の人と面会となる。
緊張しないわけはない。
「直人さん、大丈夫ですよ。
本日はただの挨拶だけですから。
あちら側としても、所有者がコロコロ変わったので不安なのでしょう。
本契約は結びたいが、果たして大丈夫かということを確認したかったのだと思います。
それに私は何度もあの部長さんとは会っておりますし、話はほとんど社長であるアリアさんがするはずですから、直人さんはオーナーとしてほとんどいるだけでいいはずですよ。
私たち全員が絶対にサポートしますから」
とかおりさんから優しく諭されて、なんとか会議室までやってきた。
会議室で待っていると、西館の職員が海賊興産の社員のふたりを連れてきた。
早速日本的挨拶の始まりだ。
「アリア様、それにかおり様、ご無沙汰しております。
また、遅れましたが王弟殿下のご不幸をお悔やみ申し上げます」
「お久しぶりです。
殿下の件はそちらにもご迷惑をおかけしましたことお詫び申し上げます。
そちらのお綺麗な女性は初めてだったかしらね」
「はい、これからこの油田の担当となります花村です」
「中東部、部長付き主任を努めております 花村麻里子と申します。
以後よろしくお願いします」
挨拶から始まった、面談は続いた。
最初にアリアさんから一連の経緯を説明して、本郷直人がスレイマン王国の貴族に陞爵し、国王たちから財産を受け継いだ際に、懸案の鉱区も引き継いだことを説明したのだ。
陞爵した理由についても、海賊興産側としても王弟殿下の財産を相続した王子の度重なる不自然な事件を掴んでおり、ヨーロッパでの特にパリでの事件についても知っていたために、予想はしていた。
俺がかおりさんに振られて2人に日本語で挨拶をして、面談は無事終わった。
このあと本格的な交渉に入っていくことを確認して、今回の成果となった。
そのあとは雑談となったのだ。
「中東は政治的にはなかなか難しいものがありますね。
最近は特に大明共和国の例の政策もあって各地で問題が起こっていますからね。
ボルネオは大丈夫ですか。
海のシルクロード計画ではしっかりルートに入っているようですし、あの国が黙っているはずはないのですがね」
「あ、そういえば私空港で大明共和国の上海重工の役員の方をお見かけしました。
外交関係の方とご一緒にどこかに行かれたようですから、ここでも何かあるのですかね」
「それは聞いていませんね。
私たちはボルネオ王国に援助を頂いているので、仲良くはしていただいておりますが、国政に関しては口出しできるものでもありませんし、何より情報が入ってきませんからね。
でも、今頂いた情報はこちらでも少し調べてからお世話になっている殿下にでもおしらせします。
貴重な情報を頂きありがとうございます」
以前からアリアさんやかおりさんが先方のことを知っていたためにかなり打ち解けた会談となった。
最後に海賊興産の2人から名刺を頂いた。
そういえば、俺はまだ名刺も持っていない。
彼の位置づけがオーナーでしかないので基本商談には出ないためなのだが、格好がつかない。
かおりさんもそう思ったのか、この会談の後にすぐに名刺を作って渡してきた。
見るからに金のかかってそうな高級名刺入れとともに。
ふたりはとんぼ返りのように日本に帰っていった。
なにせ年末になっているので、どこもいそがしいのだろう。
こちらとしては、基本向こうの出方次第の状況なので、情報の整理と将来に向けての出来る準備をしていった。
その中には大明共和国関係の件もある。
なにせ襲われた身なので他人事ではない。
その国がボルネオ王国まで進出してくるとなると放置はできないとのことだ。
別段この国では怪しい動きは見られなかった。
そんな中で、ある日皇太子府に大使館からの来客があるとかで忙しくしているところに出くわした。
俺が持ち前の好奇心でメイドの1人を捕まえて、誰が来るのか聞いてみた。
日本国大使館の大使が日本の業者を連れて商談に来ると教えられた。
邪魔にならないように西館に退避しようとしていたところ、ちょうどトイレから出てきた人に危うくぶつかりそうになった。
直人は咄嗟に「すみません」と声をかけたのだが、その人は直人のことを睨んですぐにどこかに行ってしまった。
直人は、感じ悪い人だな。
どこの国の人なのかな、などという感想を持った。
しかし、この時に俺の頭の中には何やらモヤモヤしているものがあった。
翌日の朝食の時にハリーから、昨日、俺の国の大使とプロジェクトを企画している会社の人間にあったと話を聞いた。
俺がその場で「業者の人はどこの国の人なんですか」と聞いたら、ハリーが不思議そうな顔をしながら「日本に決まっているだろう」って答えてきた。
この時に昨日のモヤモヤが疑惑に変わった。
朝食を終えて執務室に入るとかおりさんに解決済だった海賊興産からもらった情報を再度調査して欲しいと頼んだ。
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