第13話 正真正銘の処女が10人

 こればかりにかかりきりにはできなく、色々と情報の収集や整理、その他の雑務などをこなしていった。

 いつしか12月も押し迫り、クリスマスまであと少しとなった頃に海賊興産から年明けすぐから交渉を始めたいとの連絡を受けた。


 その連絡を受け取ったかおりさんが日程の調整を行う上で、俺の予定などを聞いてきた。

 卒業式は2月なので、1月中はまだ日本に帰らなくとも大丈夫とだけど、可能ならば正月くらいは一度戻りたいと答えていた。


 年末も押し迫り、俺でも忙しく俺自信が学生であることを忘れそうになる日常を送っていると、スレイマン王国からプレゼントが届いた。

 俺にとってはまさにクリスマスプレゼントのような嬉しいものだが、果たしてもらっても良いものなのかと不安にもなっている。


 スレイマン王国から俺宛に約束の10名の女性が届いたのだ。

 これまで何度も驚いてきた俺であったが、またしても国王からのプレゼントには腰を抜かさないばかりに驚いた。

 とにかく今回頂いた女性は全員が18歳で俺と同じ年なのだが、今まで同様に全員が全員、一人の例外なく美少女や美人ばかりなのだ。

 いや、もっと正確に言い表すと、美少女から美人へのメタモルフォーゼの途中といった、なんとも魅力的な人たちばかりで、人種もまちまち、世界中から美少女を集めてきたような世界の美少女や美人の見本市のような様相を呈していた。


 そして全員が全員とも処女だ。

 これはスレイマン王国の鑑定書付きだから間違いはない。

 ……いや、鑑定書などないからね、でも、全員が処女なのは間違いがないそうだ。

 こればかりは国の威信をかけているのだそうだ。

 ……一体何に国の威信をかけているのだよと、人生経験の少ない俺でもツッコミを入れたくなるのだが、これは事実のようだ。


 それにもっと驚くことに10人の中にはかおりさんのような日本人が3人もいたのだ。


 3人はそれぞれタイプの異なる美少女たちではあるが、間違えなく原宿や渋谷を歩いていたら5分とかからずに大手芸能事務所からスカウトの声がかかるくらい万人が認める美人だ。

 エニス王子から後で聞いたのだが、スレイマン王国でも日本人女性は人気が高くなかなか奴隷として出回らないそうなのだが、今回は俺に陛下が配慮して集めたそうなので、届けるまで時間がかかったとのお詫びまで聞かされた。

 これには俺もすぐにお詫びを受け入れ、丁寧に国王に御礼の意を伝えてもらうように今回彼女たちをエスコートしてきた女性(この人も国王陛下の奴隷なのだが、その人もミス・ワールドになっても不思議じゃないくらいの美人さんだ。)にお願いをしたのだ。


 それにしてもどういう国なのだろう、世界中から美人ばかりを集めていれば絶対に世界中の男どもから反感を買うのに、俺は不思議には思ったのだが、今ではその恩恵にどっぷり浸っているのであまり深くは考えていない。


 俺のところに連れてこられた新たな女性10名はすぐにカーテシーの姿勢で俺に対して奴隷となる儀式のようなことを始めた。

 その後一人一人の自己紹介があって初めて俺たちの仲間となった。


 俺は、アリアさん、イレーヌさん、それにかおりさんの3人と相談して、今後について決めていた。

 着いたばかりの女性は全員がいわば新入社員のようなもので、俺たちが作った財産管理会社に入社してもらうから正真正銘の新入社員だ。

 全員が6年から10年はみっちりと教育されており、優秀な素質も疑いようのない事実なのだが、いかんせん経験がないので、先の話し合いの結果3つのグループを作りそれぞれに先の日本人を1人ずつ振り分け、また、経験のある女性たちもアリアさんたち3人を除く9名を振り分けてバランスを取るようにした。


 これで、3つのグループには俺の通訳のできる日本人が入ることで意思の疎通に齟齬のない体制ができるし、今までかおりさんひとりに通訳までの仕事が偏っていた状態も解消できるようになった。


 現在の仕事としては海賊興産との本契約に関わる調査や事務処理などが主になるがそれ以外での資産運用についての調査の仕事も入る。

 それらの仕事をアリアさんたち取りまとめ役の人たちに上手に各グループに振り分けてもらうことで話は付いている。


 基本的にはローテーションをしていくつもりなのだが、現在はそのグループ分けの作業中だ。

 新人さんたちの夜のお仕事は当分は無しだ。


 俺自身が先の女性たちとのコミュニケーションを十分に堪能しきれていない。

 彼女たちも、そしてなにより俺自身が納得するまでは新人には夜のお仕事については考えていない。

 あったとしても見学程度の計画を立てていた。


 無事クリスマスも済み、といってもここボルネオ王国はクリスチャンの国ではないのでこれといってイベントはなかったのだが、いよいよ年も押し迫っていた。


 昨年までの俺の生活では、施設の大掃除に忙しい時期なのだが、ここでは年末の忙しさは感じてこない。

 少しずつ日々の仕事になれていった。


 そんな中で今俺は3つに分けたグループの一つであるネコさんチームと仕事していた。

 最もこの名称は勝手に俺が言っているだけで女性たちの間では第三グループと呼ばれているグループだ。

 我々の会社には年末年始の休みがないそうだ。

 奴隷には基本的に休日というのがないと聞かされており、一年を通して彼女たちは俺に奉仕してくれるそうだ。

 俺自身も今までの生活では休みを入れずにアルバイト生活を続けてきていたので違和感が無いのでその説明を聞いてそのまま受け入れている。


 12月もあと二日で終わるというこの日も雑多な仕事をネコさんチームとしていた。


 仕事そのものは急ぎの仕事もないということから割と和気藹々の環境で楽しげに話しながら作業を続けていた。


 そんな時に小喬さん、彼女はエニス王子のところの中心メンバーである大喬さんの妹に当たる人で、これも三国志ファンが来たら飛び上がらんばかりに喜んだだろう。

 彼女も伝説の小喬にも劣らないくらいの美貌の持ち主で映画『レッドクリフ』で大喬役をやっていた美人になんとなく感じの似ている人だ。

 その彼女がなんとなく話していたのだが、一昨日の日本で言う仕事納めに当たる日に皇太子府に日本国大使と一緒に来ていた人が不思議でならないと言っていた。


 俺がそれを聞いてなにか引っかかったので、もう少し詳しく聞いてみようと小喬さんに声をかけた。

 英語で話そうとしたのだが、上手く表現できそうにないので、同じグループにいる長谷葵さんに通訳を頼んだ。


「葵さん、小喬さんに聞きたいことがあるので通訳をお願いできますか」


「はい、ご主人様。

 なんなりとおっしゃってください」


「さっき、小喬さんが日本国大使と一緒に来ていた人が不思議とか言っていたけど、なんで不思議なのか理由を聞いてみてください」


 葵が小喬に英語で話しかけていた。

 色々とやりとりがあってなんだか複雑そうなようではあるが、そこは皆優秀な人の集まりである。

 見事に葵は要点をまとめて教えてくれた。

 それは、挨拶にこられた方が日本国大使であるのに一緒にいた人が日本人には見えなかったそうだ。

 ちょうど姉の大喬と歩いていた時にすれ違ったので端によって挨拶をしたら、その方が中国語で『謝謝』とおっしゃってくれたので、ふたりしてお辞儀を返したのだが、ちょっと不思議な感じだったと言っているようですと教えてくれた。


 やっぱりなんかおかしな感じが取れない。

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