初夜
サンドロテイム王国に到着した僕たちは、そのまま真っ直ぐサンドロテイム王国の王城に向かうと。
王城の中に入って、早速父上の居る玉座の間までやってきていた。
「父上、ご報告致します……エレノアード帝国の前国王たちによる和平を結びたいという話は罠でしたが、今隣に居るエレノアード帝国の新女王の協力もあり、本日を持って、サンドロテイム王国とエレノアード帝国の戦争は、和平という形で集結することとなりました」
僕がそうお伝えすると。
父上は、力強く頷いて。
「そうか、やり遂げたか……本当によくやった────アレク……お前の父であれたことを、生涯の誇りに思う」
「っ……!ありがとうございます」
僕が、父上のお言葉をとても嬉しく思いそう返事をすると。
僕の隣に居る女王が、口を開いて言った。
「サンドロテイム王国国王、此度の戦争は、間違いなく私も含めたエレノアード帝国の王族によって生まれてしまったもの……そして、そんな私たち王族による身勝手な戦争がここまで長く続いてしまったことを、ここに────」
「良い」
おそらく謝罪するつもりで頭を下げかけた女王のことを、その一言で制止すると。
父上は、続けて口を開いて言う。
「我々はもう和平をしたのだ……和平をした相手に謝罪される筋合いなど、どこにも無い」
それに、と続けて。
「息子のアレクは、貴殿の協力も相まり、エレノアード帝国と和平することができたと言っている……であれば、貴殿に感謝の言葉を述べることはあれど、恨みをぶつけることなど出来ようはずもない」
「っ……!」
その言葉を聞いた女王は、父上のことを視界に収めながら大きく目を見開いていた。
そして────
「ありがとう、ございます」
女王がそう言うと、父上は温かい眼差しで女王のことを見ていた。
それから、父上はそれぞれに労いの言葉を送り、初対面となるスカーレットとも軽く言葉を交えると。
僕たちは、父上と一緒に食堂へ向かって、たくさんの料理が並べられた食卓を囲んで食事を始めた。
みんなで楽しそうに食事をしているところを見て、僕の隣に居る父上は口を開いて言う。
「この戦争を終わらせ、お前と……そして、この戦争を終わらせるのに尽力してくれ、これからもお前と共に道を歩んで行く者たちとこうして食卓を囲むという宿願が叶った────お前には本当に、感謝してもしきれないな」
玉座の間に居る時と比べてどこか柔らかな口調で言う父上に対して、僕は首を横に振って言う。
「今まで、本当にたくさんのことを教えてくださった父上に感謝したいのは僕の方です……もちろん、まだまだ父上から学びたいことはたくさんありますけど、これから少しずつ、その感謝をサンドロテイム王国の民たちの幸せという形で父上にお返ししたいと思っています」
「うむ……楽しみにしておるぞ」
「はい……!」
それから、僕たちは再度。
今度は父上も交えて、サンドロテイム王国とエレノアード帝国の戦争終結と和平を祝うように、美味しく料理を食べて過ごした。
そして────月の光も目立ち始めた時間になると。
僕たちは食事を終えて、今日はそれぞれサンドロテイム王国の王城にある部屋に泊まっていくこととなった。
「……」
自室の窓の外を眺めながら、僕は思いを馳せる。
……明日には、女王とセレスティーネさんはエレノアード帝国に帰り。
スカーレットも、女王やセレスティーネとエレノアード帝国で奴隷とされてしまった人たちのことを解放していく中で。
奴隷とされてしまった領民の人たちも無事解放することができたらしいから。
明日にでも自らの国の領地に戻って、また公爵として復興していくと言っていたため明日からは居なくなってしまう。
そう考えると少しだけ寂しい気もしたけど、会おうと思えばいつでも会えるし────何より。
この戦争を一緒に乗り越えた僕たちは、物理的な距離だけでは離れることなんてできないほどに、心も一つになっている。
だから、寂しがる必要なんて全くない。
僕が強くそう思っていると、僕の部屋のドアがノックされた。
「はい、どうぞ」
僕がそう伝えると────そのドアの奥から僕の部屋に入ってきたのは、セシフェリアさんだ。
セシフェリアさんは、そのまま静かに僕の隣に立つと。
僕が眺めていた窓の景色を、先ほどの僕と同じように眺めながら言った。
「アレクくん……サンドロテイム王国とエレノアード帝国の戦争、終わったね」
「そうですね」
僕がセシフェリアさんの方を向きながらその言葉に頷くと、セシフェリアさんはいつになく静かに口を開いて言う。
「……私、エレノアード帝国に居たときも、このアレクくんの部屋でアレクくんとようやく再会したときも、これ以上無いほどアレクくんのことが大好きだって思ってたの」
でもね、と続けて。
「全然そうじゃなかった……私は、このサンドロテイム王国でアレクくんと過ごし始めてから、今まで私が見たことのなかったサンドロテイム王国の王子としてのアレクくんのことも本当に大好きになっていって、前以上にアレクくんのことが大好きになっていったの────だからね」
セシフェリアさんは、僕の方を向くと────そのまま、僕のことを抱きしめてきて言った。
「私……もう我慢できない、早く、アレクくんに私がアレクくんのことをこれだけ大好きなんだよって伝えてあげたい!この体と言葉と想いで……だから、アレクくん────今からいっぱい、アレクくんに大好きだよって伝えさせて?」
そう言ってきたセシフェリアさんのことを、僕は抱きしめ返して言う。
「はい……約束通り、たくさんセシフェリアさんの僕に抱いてくださっている気持ちを教えてください────そして僕も、セシフェリアさんに、この気持ちを伝えさせてください」
「アレクくん……」
────僕たちは、前とは違い。
月の光に照らされた街並みを横目に、互いに目を開いたまま一度唇を重ねた。
そして、少しの間セシフェリアさんの唇の柔らかさを感じると。
僕たちは、互いに唇を離し、そのまま二人で一緒にベッドの上に上がった。
「アレクくん……」
「セシフェリアさん……」
それから、僕とセシフェリアさんは────
「アレクくんの体……私、本当に何度見ても大好きだよ」
「僕も……セシフェリアさんの体、とても綺麗で素敵だと思います」
まず、セシフェリアさんが僕の体に触れ────
「っ……!セ、セシフェリアさん、そこは……っ!」
「可愛いよ、アレクくん……もっといっぱい、可愛い声聞かせて!」
次に、僕がセシフェリアさんの体に触れ────
「んっ……アレクくん、そこ……!もっと、触って……!」
「わ、わかりました……!」
互いに息遣いが荒くなってくると。
セシフェリアさんは、ベッドに背を預けながら。
「アレクくん……もうそろそろ、良いよね」
「だ、大丈夫です!」
僕が緊張を抱きながらもそう返事をすると、セシフェリアさんは嬉しそうに口角を上げて。
下に履いていた下着をゆっくり脱ぐと。
恍惚とした表情で両腕と足を広げて、甘い声色で言った。
「来て、アレクくん……それで、私のアレクくんへの気持ちをいっぱい感じて、アレクくんの気持ちも私にたくさん感じさせて!」
「はい……!」
僕がセシフェリアさんに覆い被さると、セシフェリアさんは広げていた両腕を僕の背中に回して抱きしめてくる。
そして、一度唇を重ねると。
「アレクくん……」
「セシフェリアさん……」
────僕とセシフェリアさんは、初めて、本当の意味で身も心も一つになった。
……セシフェリアさんと初めて出会った頃は、こんな人とそんなことはしたくないと本気で思っていたけど。
実際にそうなった今は────とても、とても、幸せな気持ちで満たされていた。
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