宣誓

「ん……」


 目を覚ますと、僕の顔は柔らかな感触で包まれていた。

 柔らかだけど弾力があって、温かみも感じられるこの感覚。


「あ、起きた?おはよう、アレクくん」


 そんな感覚にどこか覚えがあるような気がしながらもゆっくり目を開くと、目の前からセシフェリアさんの声が聞こえてきた。


「おはようございます、セシフェリアさん」


 そう挨拶を返すと、セシフェリアさんは僕の頭を撫でながら口を開いて言う。


「アレクくん、ちょっと前から私のおっぱいの中で眠ってたけど、寝心地どうだったかな?」

「……え?」


 そう言われた僕は、そこでようやく意識をハッキリとさせると。


「っ!?」


 今僕の顔を挟んでいるものがセシフェリアさんの胸だと気づいて、驚きの声を上げた。

 そして、すぐに反対方向を向いてセシフェリアさんに背を向けると。

 僕は、慌てて口を開く。


「ど、どうして朝からこんなことを!?」

「ごめんね?アレクくんの寝顔があまりにも可愛かったから、おっぱいしてあげたくなっちゃって」

「っ……!」


 そう言いながら、僕の背中にその大きな二つの胸を押し当ててくるセシフェリアさん。

 僕が相変わらずなセシフェリアさんに動揺していると、セシフェリアさんが口を開いて言った。


「でも、ちょっとおっぱいしてあげたぐらいもう気にしなくても良くない?、アレクくんもたくさん私のおっぱい触ってくれたでしょ?」

「あ、あれは……!セシフェリアさんが喜んでくれるならと思って、触らせていただいていただけで……!!」


 僕がそう言うと、セシフェリアさんは小さく笑った。

 そして────


「アレクくん、こっち向いて?」


 どこか落ち着いた、そして優しい声色でそう言ってきたため。

 僕が、ゆっくりとセシフェリアさんの方を向くと。

 セシフェリアさんは、優しい表情で僕の目を見ながら言った。


「昨日の夜、私、本当に幸せだったよ……アレクくんが所々で恥ずかしがってるのは顔見ただけで簡単にわかったけど、恥ずかしがりながらも私のためにって頑張ってくれて、言葉だけじゃなくて、ちゃんと体でも、アレクくんが私のこと大切に思ってくれてるんだってことが伝わってきたよ」

「……僕も、セシフェリアさんと初めてああいったことをして、今までもちゃんとわかっていたつもりでしたけど、改めてこの身を持ってセシフェリアさんの想いを受け止めることができたような気がして、とても幸せでした」

「アレクくん……」


 僕の名前を呟いたセシフェリアさんは、一度僕に顔を近づけてきて────そのまま、一度僕と唇を重ねてきた。


「セシフェリアさん……」


 僕も、それに応えるようにセシフェリアさんに顔を近づけると、一度セシフェリアさんと唇を重ねる。

 すると、セシフェリアさんは僕のことを抱きしめてきて言った。


「アレクくん……大好きだよ、もう、これからは本当に、ずっと一緒だからね」


 そう言ってくださったセシフェリアさんのことを、僕は抱きしめ返して言った。


「はい、セシフェリアさん、僕はもう、絶対にセシフェリアさんから離れたりしません……ずっと、セシフェリアさんのことを愛し続けます」

「私もだよ、アレクくん」


 それから、互いに抱きしめ合う力を強めて、しばらくの間抱きしめ合った。

 ────やがて、自然に抱きしめ合うのをやめると。

 セシフェリアさんは僕に微笑みかけてくれて、そんなセシフェリアさんの顔を見て、僕も思わず口角を上げた。

 そして、僕たちはしっかりと服を着ると、ベッドから立ち上がる。


「では、朝食を食べに行きましょう」

「うん!」


 明るく頷いて返事をしてくれるセシフェリアさんとの間に、今まで以上の温かなものを感じながら。

 僕が、セシフェリアさんと一緒に部屋の外を出る……と。


「アレク様!お待ちしておりま────っ!?」


 部屋の前には、今声を上げたレイラ、だけでなく。

 他にもヴァレンフォードさんやオリヴィアさん、セレスティーネさん、女王、スカーレットが居た。


「みんな、もしかして僕のことを待────」


 と言いかけた時。

 さっき、何故か途中で言葉を止めていたレイラが、口を開いて言った。


「ど、どうしてアレク様のお部屋から、アレク様とセシフェリアさんがご一緒に出て来られるのですか!?」

「っ!?」


 突如そう言われた僕は、昨日の夜のことを思い出し。

 思わず顔に熱を帯びさせて、言葉を詰まらせていると。

 目の前に居るレイラたちが、各々口を開いて言った。


「もしや……アレク様!」

「あぁ、殿下、大きくなられましたね……」

「っ、彼との初夜をクレアに先越されてしまうとは……一生の不覚だ」

「私も近々、アレク様と……」

「ふふっ、私も、今からその時が待ち遠しいわ」

「アレクと……恥ずかしい気もするけど、ちょっとだけ……」

「……」


 僕はまだ何も言っていないのに、どうやらみんなは、もう僕とセシフェリアの間にあったことを理解してしまったらしい。

 僕がそのことに恥ずかしさを抱いていると、セシフェリアさんが僕に向けて言う。


「アレクくん……私ね、エレノアード帝国でアレクくんの主人だった時は、アレクくんのことを他の女になんて絶対渡したくないって思ってたの────もし他の女に渡したら、アレクくんが私から離れて行っちゃうって思ってたから」


 でも、と続けて。

 僕の目を見ると、セシフェリアさんは優しい表情で言った。


「アレクくんと身も心も一つになることができた今は、もう、そんな心配してないよ……だから、アレクくんは、アレクくんのことを大好きなみんなのことを愛して幸せにしてあげてね」

「セシフェリアさん……」


 少し前まで、僕はずっとセシフェリアさんのことがわからなかった。

 明るい女性なのかと思えば、その明るさの裏には底知れない暗さがあって。

 一見何も考えていないように振る舞っているけど、実はとんでもないほど賢くて。

 冷酷だと思えば、優しい一面もあって、本当にこの人が一体どんな人なのか分からなかった。

 けど、今ならわかる。

 今、このサンドロテイム王国で、僕と身も心も一つになったセシフェリアさんは────心から、優しい女性だ。

 僕がそう確信を抱いていると、セシフェリアさんは僕の耳元で囁くようにして言った。


「もちろん、私のこともいっぱい愛してくれないと、その時は怒っちゃうからね?」

「はい、もちろんです」


 冗談っぽく言ったセシフェリアさんの言葉に対して頷いて言うと、僕は続けてみんなのことを見渡して言った。


「僕は、僕のことを大切に思ってくれているみんなのことを、そして、サンドロテイム王国に住まう全ての民たちのことを幸せにすることのできる王になります」


 力強く言うと、つい先ほどまで各々話していたレイラたちは、今の僕の言葉を聞いて静かになり。

 そして隣に居るセシフェリアさんも含めて、みんなが小さく僕に微笑みかけてくれると、そのまま今の僕の言葉に頷いてくれた。


 ────こうして、僕の敵国であるエレノアード帝国への潜入任務と、サンドロテイム王国とエレノアード帝国の戦争は終結した。


 エレノアード帝国に潜入する前の僕には、大切なものはサンドロテイム王国や父上、オリヴィアさんぐらいしか居なかったけど。


 今は、目の前に居るみんなのことが大切で、愛おしくて、大好きだ。


 そんなみんなのことを、そしてサンドロテイム王国のことを。


 僕は、次代の王として、必ず幸せにしてみせる!!


 僕は、ここに居るみんなやサンドロテイム王国を大切に想う気持ちに、そう強く誓った────



────────────────

 奴隷として敵国に潜入していると、敵国のヤンデレ美少女たちが僕を巡って内乱を起こそうとしている件────という物語は、この話を持って完結となります!

 一応、後日にサポーター様限定近況ノートという形で、本編後にアレクとステレイラが初めて夜を過ごす後日談を描かせていただこうと思っていますが、物語としての本編はもう完結しているので、無理にお読み頂かなくても大丈夫です! 

 その辺りの詳細や、作者がこの物語を描き終えた感想などを、次エピソードの『あとがき』にて語らせていただこうと思いますので、ご興味のある方はそちらの方も続けてお読みくださると幸いです!

 この物語を最後までお読みくださり、本当に、本当にありがとうございました!

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