羞恥

「ルークくんのルークくん……はぁ、私でこうなってくれたんだよね?あぁ……ルークくん……!!」


 敵国の女性に、こんなにも近くで僕の僕を見られること。

 かつて、これほどまでに屈辱的なことがあっただろうか。

 と、どうにか落ち着いて現状を客観的に見つめようとしている僕。

 だったけど……本当の内心は。

 ────恥ずかしい!

 ────感想なんて言わないでくれ!

 ────というか見ないでくれ!

 という状況だった。


「あっ!今ちょっとピクッてした!可愛い〜!!」

「っ……!」


 そう言われ、僕は咄嗟にセシフェリアから顔を逸らす。

 本当に、どうして、こんな……!!

 僕が、現状に言葉にできないほどの羞恥心を抱いていると、セシフェリアが僕の顔を見て言った。


「ルークくん耳まで真っ赤〜!恥ずかしがってるの?」

「そ、そういうわけでは……」

「隠さなくて良いの!はぁ、恥ずかしがってるルークくんも、すっごく可愛いよ……もう、ルークくんの全部が可愛くて、私本当におかしくなっちゃいそうだよ」


 セシフェリアは普段からおかしい!

 甘い声色で、頬を赤く染めながら目を輝かせて言うセシフェリアに、心の中で半ば叫ぶように言う僕。

 それにしても……この状況は、本当にまずい。


「可愛い、可愛い、可愛い……あぁ、どうしよ〜!」


 王女の時と違って足を拘束されているわけではないから、最悪の場合ベッドから降りることは可能。

 だけど、そこからドアを開けて部屋の外に出ることができるかと言えば、セシフェリアはそんなことを許してくれないだろう。


「この後王女様とのお話もあるのに、ルークくんのルークくんが可愛すぎて全然集中できないかも〜!」


 というか、下着すら脱がされている状況で外になんて出られるはずもない。

 なら、動く両足を使ってセシフェリアに抵抗しながら説得して、下着と紳士服のパンツを履かせてもらうか?


「まだこんなに可愛いところ隠してたなんて、本当ルークくんってどれだけ可愛いの!?」


 無理だ。

 両手両足が動く状態ならともかく、両足だけしか動かせない状態だと、剣を持ったセシフェリアには勝てない。

 セシフェリアの動きは少ししか見れていないけど、あの少しの動きだけでもそのことはよくわかる……というか。


「でも、可愛さの中にちゃんと男の子としての逞しさみたいなのもあって……あぁ、ルークくんの全てが私を────」

「セシフェリアさん!いつまで言ってるんですか!恥ずかしいのでそろそろやめてください!」

「っ〜!ルークくんが恥ずかしいって認めた〜!」

「っ……!」


 しまった……!

 言葉にして認めたくなんて無かったけど、恥ずかしいという感情が勝ってしまってつい……!

 僕が自省していると、セシフェリアは恍惚とした表情で僕の僕を見ながら言う。


「でも、恥ずかしがることなんて何も無いんだよ?ルークくんのルークくんはちゃんと立派で、逞しくて、可愛いからね……あ〜!もう我慢できない!今から直接触って、気持ち良くしてあげるね!」


 そう言って、僕の僕に向けて手を伸ばしてくるセシフェリア。

 だったけど、僕は反射的に膝を立てる形で両足を折り曲げて、それを防いでいた。

 すると、セシフェリアがその僕の行動を見て言う。


「もう、隠してるのも可愛いけど、そんなことされちゃったら触れないだけじゃなくて、可愛いルークくんのルークくんを見ることもできないからダメだよ」

「……」


 セシフェリアの不満を余計に買わないためにもここは言う通りにすべきところ。

 だが、危機から生じる本能なのか、僕はそうすることができずに居た。

 すると……セシフェリアは、一度ため息を吐いてから────目を虚ろにすると、冷たい声色で言った。


「ルークくん、今はルークくんのルークくんを見ることができたおかげでかなり気分上がってるけど、それでも私は怒ってるんだよ?私から逃げて、あろうことか他の女のところに行こうとしたなんて……もしあのまま本当にルークくんが他の女のものになってて、今私が居るこの場所に他の女が居たらって考えたら、それだけで────」


 セシフェリアはその先の言葉を口にしなかったが、どんなことを言おうとしていたのかは大体予想がつくだろう。

 続けて、その虚ろな目で僕の目を見据えると、さらに冷たい声色で言ってきた。


「ルークくん……この足、どけてくれるよね?」

「……」


 ここでセシフェリアの言葉を拒めば、セシフェリアによって、これ以上の最悪な状況というものを引き起こされてしまう。

 その可能性は避けたかったため、僕がゆっくりと足を下ろすと、セシフェリアは目に光を戻して明るい声色で言った。


「ありがとう!ルークくん!」


 その僕の行動に、感謝を伝えてくるセシフェリア。

 この一瞬だけを切り取っても、僕はセシフェリアという人間のことがますますわからなくなりそうだった。

 セシフェリアは、そうだ、と続けて。


「怒ってるとは言ったけど、別に私は今からルークくんに酷いことしようとしてるわけじゃないから、それだけは誤解しないでね……ルークくんが今みたいに私の言う通りにしてくれるなら、私はすぐにでもルークくんのことを気持ち良くしてあげるからね」


 そう言うと────セシフェリアは、今度こそと言うように僕の僕に手を伸ばしてきた。

 もはや、僕にそれを拒む術は無い。

 セシフェリアは、そのまま僕の僕に手を伸ばすと────僕の僕を、自らの手で包んだ。


「っ……」


 しなやかで、細く長い指やセシフェリアの手のひらが僕の僕を包んでいるのを直接的に感じて僕が思わず声を上げてしまうと……

 セシフェリアは、その直後に今までに無いほど声を揺らがせながら言った。


「あぁ……!これが、これが、ルークくんのルークくんなんだね!今、私の手の中に、ルークくんのルークくんが……あぁ……!ルークくん、ルークくん……!!」


 そう言うと、セシフェリアは本当に軽くだけ指を動かした。


「っぁ……!」


 その軽くの動きだけで、僕は思わず声を上げてしまう。

 下着越しだった時とは全然違う……!

 これは、本当に……まずい!

 僕が、いよいよすぐ目の前に危機を感じていると、セシフェリアは嬉々を感じている様子で言った。


「すごい、ルークくんの反応が、下着越しだった時より何倍も可愛い!!それはそうだよね、ルークくんにとって一番って言っても良いほど大事なところだもんね……大丈夫だよ、すぐ気持ち良くしてあげるからね」

「僕は別に、気持ち良くなっているわけで────はぁっ……」


 またセシフェリアが少し指を動かしただけで、僕は情けない声を上げてしまう。

 ────違う……!偉大なサンドロテイム王国の国王を父とする僕、アレク・サンドロテイムが敵国の女性の手で快感を感じてしまうなんて、そんなこと、絶対にあったらダメなんだ……!!


「あぁ、可愛いよ、ルークくん、もっと可愛い声聞かせて?」


 そう言うと、セシフェリアはさらに指を動かしてきた。


「っ……ぁっ……」


 ダメだ、声を抑えないといけないのに、抑えられない……!

 気持ち良くなんて、無いのに……

 どうして、僕の体はこんなにも言うことを聞かないんだ……!

 僕がそう自責していると、セシフェリアが甘い声色で言った。


「はぁ、今すぐにでも激しく動かして、ルークくんの可愛いところもっと見たいけど、まずはちゃんと慣らしてあげないといけないよね……大丈夫だよ、ゆっくり、ゆっくり気持ち良くなろうね」


 こんな……こんな!!

 ────もう、いっそのこと、僕を死なせてくれ……!!

 この屈辱的な状況に、僕はただただ心の中でそう叫ぶことしかできなかった。

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