元気
「え……え?」
下着を突き破りそうな勢いで自らの存在感を主張している僕のその部分を見たセシフェリアは、驚くあまりいつの間にか虚な目では無くなっていて、表情も先ほどまでの冷たい表情ではなくなっていた。
そして、ずっと困惑の声を漏らしていたセシフェリアは、どこか照れた様子でありながらも、ようやくハッキリとした言葉を発した。
「えっと……げ、元気だね」
────いっそのこと殺してくれ!!
恥ずかしさから、僕は心の底でそう叫ぶ。
敵国の女性にベッドの上で拘束されたかと思えば、どうしてそこで僕の主張の激しい僕を見られてそんな感想を伝えられないといけないんだ!!
僕は、必死にその主張を抑えようとするも、先ほどセシフェリアの胸を間近で見てしまったことや、今もそれが視界の端に映ってしまっていることもあって、僕の僕による主張を抑えることができなかった。
「でも……どうして?男の子って、出した直後とかだとそんなに元気にならないんじゃないの?だけど、ルークくんの、こんなに……ていうか、これって私の下着姿に興奮してくれたってことなの……?でも、直接女の体見た直後なのに、私の下着姿だけで……こんなに?」
先ほどまでの冷徹なセシフェリアはどこへ消えたのか。
もはや、今のセシフェリアにはその面影は無く、困惑しながらも照れているという様子の表情になっていた。
っ……こうなったら、もうこの状況も利用するしかない。
本当はこんなこと屈辱的だけど、僕の貞操を守るためなら……僕は、背に腹は代えられないという言葉に倣って、どうにか恥ずかしさに堪えながら言った。
「僕がそういったことをしていないことは、少なくとも僕の……それを、見てもらえばわかると思います」
「……で、でも、出してないとしても、まだ娼館で女の体を見たり触ったりした可能性は否定できな────」
「僕はそもそも女性の下着姿だって、前セシフェリアさんと下着店に行った時に初めてみて、今日だって娼館に行ったりしてません……僕が女性の下着姿やお体を今までほとんど見たことが無い、ましてや一糸纏わない姿なんて見たことが無いということも、僕のそれを見てもらえればわかると思います」
「……」
僕がそう言うと、セシフェリアは少しの間僕のその部分を見た。
────サンドロテイム王国の王子、アレク・サンドロテイムが、どうして自らのその部分を証拠としてこんなことを言わないといけないようなことに……!
そんな屈辱感を感じながらも、僕はこれも貞操のためだと言い聞かせた。
すると、少し間を空けてからセシフェリアが言う。
「確かに……冷静になれて無かったけど、もし仮に本当にルークくんが娼館を利用したんだったら、あんな風に堂々と割引券持ってるわけないもんね……それに、時間の時に関しては必死さが無くて、その流れで娼館のことに関しても嘘だって決めつけちゃったけど、今思い返すとそのことに関してはルークくんに必死さがあったような気がするよ」
「っ……!セシフェリアさん……!」
冷静になったセシフェリアが、その持ち前の頭脳を正しい方向に利用してそう言ってくれた……良かった、これでひとまず誤解は解けたな。
もしこれでも誤解が解けなかったら、僕は無駄骨を負ったどころかただただ恥ずかしさを背負っただけになってしまっていたが、そうはならないようで何よりだ。
そう安堵すると、僕はセシフェリアに伝える。
「ご理解いただけて、とても嬉しいです……では、もうこの手錠は外していただいても良いですか?」
この状況なら、二つ返事どころか一つ返事で頷いてくれて、僕の手錠を外してくれる────かと思ったが。
「……」
セシフェリアは、それに対して返事をしなかった。
……どういうことだ?
今の流れなら、すぐにでも頷いて手錠を外してくれても良いはずなのに。
僕がそんなセシフェリアに困惑を抱いていると────
「……はぁ、はぁ」
セシフェリアは、頬を赤く染めて息遣いを荒くしていた。
突然な頬の紅潮に、荒くなる息遣い……熱?でも、こんなにいきなり?
僕がそう思っていると、セシフェリアが言った。
「私、わかってるよ?ルークくんが時間を遅れちゃったのは確かだけど、少なくとも時間に遅れたって事は娼館に行ってたっていう私が元々懸念してたことが起きてた可能性は無くなって、割引券に関しても、ルークくんが娼館に行ってないんだからあれは関係無い事……だから、早くルークくんの手錠を外してあげないといけないってことはわかってるの」
何故か、僕に自らの今の気持ちを説明してくる。
……そうとわかっているのであれば、今すぐにでも僕の手錠を外して欲しいところだが、どうして外してくれないのだろう。
そんな疑問に答えるように、セシフェリアは口を開いて言った。
「だけど────身動きが取れなくて、ルークくんのがこんなに元気になってるの見せられちゃったら、私……今、我慢できるかどうかわからないんだよね」
「え……?」
我慢できるかどうかわからないって────
「え、えっ!?ど、ど、どういうことですか!?」
「だって、私は女で、ルークくんのことカッコいいと思ってて、君の他の男とは違う異質な雰囲気に惹かれちゃってるんだよ?そんなルークくんのルークくんが、下着越しとはいえこんなにくっきり形が見えちゃってたら……」
見えちゃってたら……じゃない!!
「前に、できるだけ僕に奴隷として何かを強制するようなことはしたくないと言ってましたよね?あの話はどうなったんですか?」
「もちろん、今でも同じ考えだよ……私はできるだけ、ルークくんにそんなことしたくない────だからこそ、今頑張って我慢してるの……でも、そうだよね、少なくともルークくんが娼館で女と遊んでたわけじゃ無いなら、我慢しないといけないよね……」
よし、どうやら落ち着いてくれ────
「だけど、下着越しにちょっと触るぐらいだったら良いかな?良いよね?」
「っ!?ダ、ダメに決まってるじゃ無いですか!」
「でも、ルークくんのそこ、とっても元気だよ?私の体見てそんなになっちゃったってことは、私が────うん、そうだよ、私のせいでルークくんのそこがそんなになっちゃったなら、私が責任取ってあげないといけないよね」
そう言うと、セシフェリアは息遣いを荒くしたまま、僕のそこに向けて手を伸ばし始めた。
恥ずかしさをどうにか堪えて、やっとの思いで貞操を守ることができたのに、その直後にそんな突飛な理由で貞操を奪われてしまうなんて冗談じゃない!
「ま、待ってください!セシフェリアさん!」
僕がセシフェリアのことを言葉で制止するも、セシフェリアの伸ばす手は止まらない……そして、その手があと少しで僕の僕に触れそうになった────その時。
寝室のドアがノックされると、声が聞こえてきた。
「お嬢様、夕食の準備が整いましたので、お手隙になりましたら食堂まで足をお運び下さい」
おそらくは使用人の人と思われる人のそんな声が聞こえてくると、セシフェリアはその腕を伸ばすのをやめる。
「……うん、わかったよ、すぐ行く」
「かしこまりました、では失礼致します」
返事を終えると、セシフェリアは伸ばしていた腕を引き戻して言った。
「せっかくご飯できたって話で、やっぱり今日この勢いでしちゃってもアレだから、するのはまた今度そういう雰囲気になった時でも良いよね」
そういう雰囲気、になんて絶対にさせないけど、そう言ったセシフェリアは僕の手錠を外してくれたため、今日のところはとりあえずそれで良いとしよう。
「娼館に関しては私の勘違いだったけど、時間に関しては実際ルークくんは私との約束の時間に遅れちゃったんだから、その埋め合わせとして今度また何かしてもらうからね?」
「わかりました」
それに関しては、甘んじて受け入れるしか無いだろう。
その後、僕とセシフェリアは、食堂に向かって二人で食事をすると、それぞれお風呂に入ってから再度寝室に戻って、別々のベッドで横になった。
今日は流石に肝が冷えたけど、結果だけ見れば上々だ……明日からいよいよ、今手元にある十万ゴールドを使用して街で情報を集めることができる。
今一番欲しいのは、サンドロテイム王国との戦争に反対しているという教会についての情報だから、明日からはそこに重点を置いて探ることにしよう。
そう決めた僕は、今日は他に何かを考えることはせず、体が疲れていたので大人しく眠ることにした。
────この時の僕は、その教会にも僕の貞操を欲しがる女性が存在するということを知らない。
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