脱衣

 セシフェリアは、僕の執事服の上着に手を付けると、そのボタンを外し始める。

 ────本当に僕のことを脱がせる気だ……!

 どうすればいい……?

 自分から、今は抵抗しても無意味だと受け入れた手錠による手の拘束だけど、もはやそれによって完全に抵抗するという道は立たれた。

 一応足は自由に動かせるけど、ベッドに固定された状態で足だけを使って何かをできるとは思えない。

 そんなことを考えている間にも、セシフェリアは僕の執事服の上着を脱がせ、次にその下のシャツのボタンを外し始めている。

 ……そうだ!この脱がせられている時間だったら、少しは落ち着いて会話もできるはずだ!なら、どうにか誤解を解くことにしよう!

 ということで、僕は口を開いて言う。


「セシフェリアさん、信じてもらえないかもしれませんけど、誤解────」

「そうだ、聞きたいことがあるんだけど、どこまでしたの?」

「どこまで……ですか?」

「娼館って言っても、出来ることは様々だからね……手でしてもらったの?それとも口?もしくは────入れたの?」

「入れ……!?」


 教育の一環として、そういったことの基礎的な知識は一通りあるけど、知識があるだけで実践経験、ましてや他者とそういった話をすることすら今まで無かったため、突然生々しい単語が出てきたことに僕は少し動揺する。


「娼館に行ったんだから、もうこんな言葉だけで照れるはずなんて無いけど、随分照れた演技が上手なんだね」

「で、ですから、僕は────」

「だったら、聞くことを変えることにするよ……何回出したの?」

「……え?」

「だから、何回出したの?」


 何回、出し……そういう意味、だよな。

 い、いやいや!そうじゃなくて!


「出すも何も、僕はそもそも娼館に行ってなんて無いんです!」

「へぇ、それも隠すんだ……ルークくんが私以外の女で気持ち良くなってるところ想像したら、本当に気持ち悪くなってきたよ……でも大丈夫────私がそんな女よりも、ルークくんのこと気持ち良くしてあげるから」


 そう言うと、セシフェリアはシャツのボタンを全て外し終えた。

 それによって、まだシャツを脱がせられたわけじゃないから完全には見えていないけど、僕の上半身の真ん中が縦の形で露出した。


「ルークくんの体……カッコよくて可愛いね、腹筋が程よく割れてたりするけど、それもルークくんのものだと思うと可愛く感じるよ……上着全部脱がせちゃいたいけど、それはまだ後のお楽しみに取っておこうかな」


 そう言って、今度は僕の下半身へと視線を向けたセシフェリアに対し、僕は大きな声で言う。


「セシフェリアさん!さっきの割引券は、街で女の人が男の人に暴行を働かれようとしていたので、その女性を助けた時にもらったものなんです!その時は、それが娼館のものだと知らなくて受け取っちゃったんですけど、もし娼館のものだとわかっていたら受け取っていませんでした!」


 人質にされて危険な目に遭わされようとしていたのは事実なので、これに関しては事実は隠しているが嘘は言っていない。


「へぇ……でも、ごめんね、今はルークくんが何を言っても信じられないよ」


 冷たく言い放つと、セシフェリアは僕の執事服のパンツに手を付けようとした────が、何故か。

 その手をピタリと止めた。

 もしかしたら、僕が本当のことを言っていると気付いてくれたのか……!?

 なんて期待をしていたのも束の間、セシフェリアが言った。


「ルークくんに上の服脱がせてるのに、私だけ何も脱いでないのは不自然だよね……それに、今のうちから私の体見せてあげてた方が後がスムーズだろうし」


 そう言うと、セシフェリアは僕の執事服のパンツから手を離して、自らの貴族服の上着のボタンを外し始めた。

 っ……!僕が脱がされるのも嫌だけど、だからと言ってセシフェリアに脱がれてもそれはそれで困る!

 僕がそう思っていると、セシフェリアが言った。


「ねぇ、娼館で相手してもらった女のおっぱいは見たの?」

「っ……!?」

「まぁ、見たんだろうね、あそこってそういう場所だもんね……もしかして、挟まれたりもした?」


 挟む……?何の話だ……?

 少しわからない部分もあったけど、とにかく今の僕に言えることは一つのため、それを全力で伝えることにした。


「何も見てませんし、何もしてないです!というか、僕はそもそも娼館にだって行ってません!!」

「それも秘密なんだね……」


 小さな声でそう漏らしたセシフェリアは、貴族服の上着を脱ぐと続けてボタン付きのブラウスのボタンを外し始めた。


「でも、前下着売ってるお店の試着室でも下着姿見せてあげたから、ルークくんもある程度わかってると思うけど、私胸の大きさとか形とかには自信があるんだよね……だから、その女よりも私の方が絶対にルークくんのこと満足させてあげられる自信があるから、他の女のおっぱい見てようとどうでも良いの」

「今まで、女性経験どころか女性とお付き合いだってした事ないんですから、見たことあるわけないじゃ無いですか!」


 っ……なんでこんなに恥ずかしいことをわざわざ大きな声で言わせられているんだ、僕は……でも、今はとにかく一つでもセシフェリアの誤解を解ける可能性がある言葉を伝えることしかできない。


「それは、でしょ?今のルークくんは、娼館に行ってるルークくんなんだから、その言い分は通らないよ」

「ですから、そもそもその前提が間違って────」


 僕がそう言いかけた時、セシフェリアはブラウスのボタンを外し終えると、それを脱いで上半身だけ下着姿になった。

 それも、これは────


「どう?ルークくん、前にルークくんが選んでくれた黒の下着だよ……前見てくれなかったから、今度ベッドの上で見てもらおうと思ってたけど、それがこんな形で見せることになっちゃうなんて残念だよ……でも、見て?」


 セシフェリアは、僕の顔に胸を近づけて来て言った。


「この大きくて柔らかいおっぱいを、ルークくんの好きにして良いんだよ?触っても良いし、揉んでも良いし、挟んでも良いの……前にもそう言ってあげたのに、どうして他の女となんてそういうことしちゃったのかな?」

「っ……!」


 目の前にある大きな胸とその胸の谷間を視界に映した僕は、咄嗟に目を瞑った。

 それに、前に僕が本当にセシフェリアに似合うと思って選んだ下着だから、当然と言えば当然だけど、黒の下着がとても大人びた感じを出していて、敵ながら────っ!な、何を考えてるんだ僕は!

 首を横に振ってそんな自らの考えを振り払うも、セシフェリアが言った。


「ねぇ、私ルークくんに目を閉じて良いなんて言ってないよ?私は、見てって言ったの……私の時間を守ってっていう言いつけを破ったのに、また私の言ったことを破るの?」


 そう言われた僕は、もはや抵抗などできるはずもなくゆっくりと目を開く。

 すると、目の前には僕好み────じゃなく、黒の下着を着けているセシフェリアの胸があった。


「どう?ルークくん、私の下着姿……ルークくんの好みかな?それとも、直接おっぱいを見たルークくんには、下着姿なんかじゃもう何も感じない?」


 そう聞いてきたセシフェリアは、間を空けずに言う。


「ううん、嘘を吐くルークくんに聞かなくても……ルークくんの正直な体の方で確認すれば良いよね」

「っ!?」


 そう言うと、セシフェリアは僕の執事服のパンツに手を掛けた。


「まぁ、何回か出した後で、それも直接おっぱい見た後だと、ルークくんがこんなので興奮してるわけ────」


 そう言いながらセシフェリアが僕の執事服のパンツを腰から下ろすと────


「……え?」


 そこには、下着越しでもとても主張の激しい僕の僕が居た。

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