第23話 再利用
「それで、私の家の前にツヅミの家具家財の一切を持ってきたのですか?」
シズは、大きなため息をついた。
シズのアパートの前には、ツヅミの家から持ってきたらしい家具やら洋服、酒までが置いてあった。シズの狭い部屋には入りきらないし、近所迷惑この上ない。ついでに、シズが酒が飲めなかった。
「持ち帰ってくれないですよね……」
これらの荷物は、法的にはシズのものになってしまったのだ。処分もシズがしなければならなかった。
「ツヅミの家具家財は、シズのものになるって決定したけど……。家に関していえば、ツヅミの貸家だからな。だから、こっちに荷物を持ってくるしかなかったんだよ」
ユウダチは、シズから顔を背けた。
上司に掛け合って、ツヅミの今までの悪事を暴露した。その結果、ツツジは財産没収という重い罪に課せられたのである。
ここで問題なのは、ツツジの荷物がシズのものになったという点である。ユウダチ達では荷物の換金は出来ず、ツツジの家にある家具を全てシズの家に運んでくるという暴挙に出たのであった。
法律で決められているので換金できなかったのは仕方ないが、汗だくになって荷物を運んだユウダチのウォッチャー仲間たちも可愛そうである。
「こんなに置いてはいけないから、業者を呼んで金に換えて……。あとは、服とか靴を買う資金にしますか」
大きなものを買う予定などないし、ツヅミの金を散財してやれという気持ちもない。
ただし、ないと困るものはしっかり欲しい。そのため、服と靴を多めに買わせてもらう予定だ。
「おい、今まではずっとツヅミに搾り取られていたんだろ。もっと、ぱっと使ってしまえよ。それこそ、ツヅミが後悔するように」
そんなことを言われても、異世界にどれぐらいの荷物を持っていけるのかも分からないのだ。シズは、かなり困ってしまう。
「何かを収拾する趣味もありませんしね……。欲しいものは、あまりないんですよね」
シズの無欲さに、ユウダチは苦笑いする。
ツツジに金を無心されていても生活が出来ていたのは、シズの無欲さによるところが多いのだろう。生活必需品以外は買おうという考えにならないのだ。
「あっ、そうだ。デパート」
シズは、高級品ばかりを扱う店を思い出した。
あそこならば、値が張るが持ち運び易いものを売っているだろう。そこでいざというときに換金できるものを買っておけば、もしもの時にも役に立つのではないだろうか。
「換金しやすいといえば貴金属でしょうか?」
ぶつぶつと呟くシズの言葉を聞いたユウダチは、にまぁと笑った。
「そうか、貴金属か。アザミも喜ぶと思うぞ」
シズが貴金属と呟いていたので、ユウダチはアザミへのプレゼントを買うのだと勘違いしたようだ。
シズは、それでも良いだろうと思った。
結婚のときには指輪を送り合う風習はあるが、今まではアザミが子供過ぎて指輪を送ると言う風習まで考えがたどり着いてはいなかった。
金の出どころは良いとは言えないが、こんな臨時収入がないかぎり指輪は買えない。
「ユウダチさん、ちょっと色々と手伝ってもらえませんか?」
シズの言葉に、ユウダチは彼の背中を軽く叩いた。
「なんだよ。アザミへのプレゼントを買うのに付き合うのかよ」
ユウダチの言葉に、シズは首を横に振る。
「いいえ。買い取り業者を探すのを手伝ってください。まずは、この大量の荷物をどうにかしなければなりませんから」
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