第8話 新兵器

「散開、突撃!」

「うおぉぉぉぉ!!!」

 俺の指示に隊員達、計三人が武器をもって突撃する。

 狙うはASと書かれたお面をつける人物。そう、訓練である。しかし、相手役は戦士であるため、隊員が本気でやっても問題はない。

「せりゃ!おら!」

「くそ!当たんねぇ!」

「動きは遅いのに!」

 三人の太刀筋が悪いわけではない。圧倒的にAS役の実力が優れているだけだ。


 そろそろ時間だ。

「各員、武装解除!」

 ホイッスルを鳴らし、三人に指示を下す。

「「は!」」

「く、まだまだぁ!」

 しかし、その内の一人が悔しさからか戦闘続行をした。

 AS役はそれが最初から分かっていたかのように、華麗に避けて俺の所まで側転でやってきた。

「バーン。」

 AS役が手を銃の形にしてそう言うと、命令無視をした隊員の剣が爆発した。

「島田!」

「大丈夫か!」

 一緒に戦っていた二人が駆け寄る。

「二人とも、彼を治療室へ。今回は終わりだから各員そのまま規定通りに待機だ!」

「「は!失礼します!」」

 二人は敬礼をした後、島田に肩を貸しながら部屋を後にした。


「一つ、いいでしょうか?」

 俺は隣にいるAS役に話しかける。

「なぁに?ヤタラス。」

「対AS特殊武装・イモータルソード試作型のタイムリミットで爆発するタイミングであなたが毎回毎回銃を撃つモーションをするせいで、実は攻撃方法があるんじゃないかと隊員内で噂されてますよ。」

 こういう話を釜森長官はすぐ信じてしまうため、釘を刺しておかないと取り返しのつかないことになる。

「あら、護身用にピッタリの噂だわ。」

 まぁ、実質的に釜森長官と接してるのは俺だけなので、皆は釜森長官がどんな人か知らない。

 ほら、あれだよ。現場は現場に任せる系の人。それが釜森長官だ。………干渉?まぁ…誤差だよね………

「ハァー、あなたの楽観的な性格。変わりませんねリブラン。」

 そう言うと、一息ついてASと書かれたお面を外す。

「あらー?そんなつもりはないのだけどー?まぁーこれで困ったことがないのでー」

 彼女はリブラン。宿してる神性のせいかは定かではないが、無意識に踊ってしまうそうだ。だから無意識に踊っている間は言葉がよく間延びする。つまり何も考えていないということだ。

 彼女の役目は囮や他の戦士のサポートが専門だ。ゲームで言うところの全体バフ持ち回避盾と言ったところか。

「ところでヤタラス。」

「あ、はい。」

 踊ってる時は、顔も柔らかい表情をしているため、考えて話されると急に真顔になるから未だにビックリする。

「最近ロウマとは会っているのですかぁ?」

 あ、ちょっと伸びた。

「最近はお互い忙しいですし、距離も遠いですから。年賀状は出してますよ。」

「へぇー?年賀状とかー今時どーなんですかねー?」

 あ、戻った。

 彼女は基本こんな感じだ。

「今時、と言われましても、俺は古い人間です。最近の電子機器はややこしくて敵いません。」

「おやー?無敵と呼ばれたあなたでもー苦手なもなのはーあるんですねぇー?」

 彼女の場合、これは皮肉ではなく本心で驚いてるタイプだ。

「あの、踊るのはかまいませんが、気が散るので激しいダンスはやめてください。」

「えー?何かしてますかぁー?」

「………してるじゃないですか。ヘッドスピン。」

 頭を地面につけて頭だけで回転するあれ。気が散ってしょうがない。

「あら、これは失礼を。

 ダンスはーいつも適当なので-何を踊ってるか認識できないんですよねぇー?」

 最初の厳かな、ゆったりとした舞に戻った。

「ええ、聞いています。ですが、それくらいは言わせてください。士気にも関わりますから。」

 彼女がまだ新人の頃に研修で、俺が彼女を外に連れていた時、彼女は踊らないとサポートが出来ないのだが、初っぱな、えーと、あまり言いたくないが……扇情的なダンスをしたため、女性戦士に情報を伝え、なるべくそうならないように頼んで研修も丸投げした過去がある。

「懐かしいですねーそう言われて竜田さんに石見神楽を教えてもらいましたねー私の力のルーツらしいですしーすんなり覚えられましたー基本はそれなんですけどーやっぱり他の踊りもしちゃうんですよねぇー」

 現在は厳かな舞から打って変わってロボットダンスをしている。

「えぇ、まぁ。問題なければ何も言いませんから。」

「はいーーにしてもーイモータルソードちゃんはー使い物になりそーですかぁー?」

「……ハッキリ言って微妙ですね。隊員を戦士に押し上げられる!と大々的に宣伝して作成したそうですが、使用者の安全が考慮されていない時点で武器としては下の下。税金の無駄遣いと言っても過言では無いでしょう。」

 これは俺の率直な意見だ、

「辛辣ですねぇーまぁー確かにー?あの剣をー使う人にはーあの剣の爆発とーASの攻撃にー耐えられる防具がないとー無理ですよねー?」

「えぇ、ですからもし実用化に至った場合、安全面がどれだけ考慮されたとしても機能的に暴発する恐れがありますので、防具もイモータルソードと同じ数分用意しなければなりません。」

「あちゃーASに負ける前にー国がー傾いてしまいますねぇー?」

「ちなみに、今はイモータルソードと防具一式、それぞれ三セットあります。今日の三人が着用してたのがそれですね。で、その防具の費用ですが、イモータルソードの二倍は越えるらしいです。」

「はえ!?」

 あ、驚きでダンスが止まってしまった。

「大丈夫ですか?」

「………は!

 だ、大丈夫……ですぅ。イモータルソードを作るためにちょっと前にー税金を引き上げたのにーまた上がる可能性があるってーことですかぁー?」

「……俺はそう見てます。」

「ふえー生活が辛いですー………」

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