第9話 慣れないやり方

 前にランウ用の部隊を編成したことで、形式的ではあるがランウは一人前扱いとなった。つまり、毎回ランウが俺と一緒に出動する機会が減ったってわけ。

 正直言って神。まだまだフォローは必要だが、負担が軽減されただけでも万々歳だ。だがまだ油断は出来ない。出動は必ず戦士がツーマンセルを組み、その戦士の部下がサポートや救助を行うというイメージだが、基本的にバイトのようなシフト制のため、場合によってはランウと組む機会が多くなる可能性がある。

 ちなみに、なぜ俺がランウの面倒を見ていたかというと、率いている部隊員が一番多いのと、歴が一番長いからだ。歴が長いと、それだけ経験と宿した神との親和性が高いということ。親和性が高いと能力を発揮しやすくなるからだ。

 俺とロウマ、それと後三人が最も古参の六年組。六年とは、海の壁が出現してから六年目に戦士が誕生したという、政府の対応の遅さを皮肉った物でもある。







 今回のペアは武刃となった。彼は日本刀を用いた居合術に長けており、二刀流も出来るし大抵の武具は扱える。一般人から人気のある戦士だ。彼の部下は刃一号、刃二号などと、番号で呼ばれている。救助もするのだが、彼らは基本武刃が使用する武器の持ち運びをしているため、武刃に呼ばれた人物は、すぐさま武刃の元まで向かい、武器を渡す役割がある。

 だからあまり救助には期待できない。武刃が所望する武器はそのときの気分によって変わるからだ。


「武刃、敵生体は北に20kmです。」

『合点、我が武勇見せる時!』

 そう言うと、武刃は速度を上げ、彼の隊員達も必死についていった。

「………我々は慎重に行くぞ。警戒を怠るな!」

『『『『は!』』』』




 そろそろか。

「各員、着陸用意!……着地!」

『第一、着!』『第二、着!』

『第三、着!』『第四、着!』 

「よし!問題なしだな!方陣で構え!」

 いつも通りの動きをする。これだけでも、長い時間をかけて訓練しただけある。

「………北東に1km。行くぞ。」

「「「「おう。」」」」



「ハハハハッ!良いなぁ!強いなぁ!お前ぇ!」

「ふん!やるではないかぁ!」

 ……どっちがASか分からなくなるな…

 その時、武刃が俺に気付いて声だけを届けてきた。

「こいつは任せよ!ヤタラスには救助を頼みたい!」

「了解した!聞いたな?俺達の本領発揮だ!全部隊、散会!」

「「「「おおぅ!」」」」


「第一、50m右前方。第三、27m左後方。

 第二は……」

 通信と俺の光の道を使って、救助者の正確な位置を伝える。




 あらかた伝達は完了した。後は隊員達に任せるしかない。

 言わずもなが隊員達は大丈夫だ。武刃は…互角に渡り合えてるし、武刃の部下達も雑魚処理をきっちりしている。俺のやることはここら辺の雑魚兵士の処理かな。


 銃を構え、周囲にポツポツと散らばる雑魚を撃ち抜いていく。ほとんどは隊員達が救助前に処理しているため、本当にやることが少ない。

「これでまた、サボってるって言われなきゃ言いが。」

 俺はこういう役回りであるとは自覚しているし、必要なことだと思ってる。それでも愚痴ぐらいは許されるだろう。




 ……っ?一般人………手にはスマホを持って、もう片方にはマイクらしき物を持っている。

 面倒だが、ここは規定通りの対応だな。


「武刃、そろそろ決着を頼む。一般人が潜り込んできた。」

『む、ぬう…間の悪いやつめ、どこのどいつだ!』

「集中しろ。俺が対応しておく。」

『……すまぬ。』

「あぁ、頼んだぞ。」

『頼まれた!』


 さてと………


「一般の方ですか?すみませんが、ここは危険ですので避難を……」

 チャラチャラした、ホスト風と言えば良いだろうか?そんな青年に声をかけた。

「誰だお前。俺はヒーローとコラボしに来たんだ、邪魔すんなよ!なあ?皆。」

 通話でもしているのか?スマホに向かって話してるし、ていうか俺のこと知らないんだ……年甲斐もなく少しショックだ。

「そう、ですか。まぁそれは危険ではなくなってからに……」

「うるせぇな!俺は登録者三十万人のカガヤキだぞ!てめぇみてぇな雑魚に構ってる時間はねぇんだよ!俺がわざわざヒーローとコラボしてやろうと思ってやって来てやったってのによぉ!」

 ……この発言……確かロウマが薦めてくれたアニメに似たような………そうだ!ツンデレだ!

 それだけ戦士が好きってことか。やっぱり最近の若い子は俺のこと知らないんだろうなぁ。

「そうか、なら後で時間を捻出しよう。君が会いたいのはどんな戦士だい?」

 少し前からだが、一般の方にも受け入れられるように、名義を戦士からヒーローに変えたり、アイドルユニットを作ったり、意外と幅広く手を伸ばしている昨今。俺ならコネも結構あるし、東北担当の戦士であれば会うぐらいはさせてあげられるだろう。一体この子は誰のファンなんだろうか?

「チッ!だーかーらー!ヒーローでもねぇテメェに使う時間はねぇんだよ!さっさとヒーローに会わせろ!」

 うぅむ、説得とは難しいな。ランウやこの子みたいな子が多いのだろうか?イマドキと言うやつは。困ったな……

「あぁ……えっと……それで君は誰に会いたいんだい?今回の件が片付いたら俺の人脈でなんとか……

 っ!!」

 意思外の光の道!対象はこの子!

 直ぐ様視界を動かし……っ!

 上を見ると、それは空から雨のように降るエネルギーの塊だった。

『やつの攻撃だ!』

 通信で武刃の端的な声が響く。

 銃で対処……本当に出来るのか!?出来なかった時この子はどうなる!?

「君!一歩たりとも動くなよ!」

 俺は飛び上がりながらさっきの青年に語りかけ、青年に攻撃が向かないギリギリの面積を俺の身体で作る。装備が保ってくれると嬉しいが……!


 攻撃が当たる瞬間、青年に出ていた光の道は消えた。これで彼が死ぬことはないだろう。

 そんな安堵を胸に、俺はASが放った攻撃をその身で受けた。

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