第5話 高価な食事
「………土、泥。候補としては土や土地の神になるか?それと、声と見た目で男神。戦力を鑑みても氏神ではなく、名のある神であると考えられる、と。」
あとは、部隊長それぞれに装備させているカメラの動画に写るASの姿や、攻撃をしている場面を切り抜いて写真として貼り付け、その動画テープも添付する。
被害情報や戦闘に際しての追記など、書くことは山積みだ。部隊員が使用した銃弾の数まで記載しなければいけないのがダルいが、ルールは守る。大人として当然のことだ。
……そう考えると、ランウはまだ十六歳。一年目のルーキー。フム、不思議と今までの行動も許せる気がしてきたな。
俺だって二十歳の時に一般企業に就職した時は、先輩にも会社にも取引先にも迷惑をかけたものだ。そんな俺が今はこうして後輩のことを憂いている。これは俺が大人になった証拠だと言えるかな。
釜森長官の元へと向かい、今日の資料を提出する。今回は小言は最小限だった。ランウの一人行動を少々言われた程度だ。
まぁそれに関してはいつものことなので釜森長官も形式的に言った程度だった。
今日やるべきことは…………武装はいいか。目立った外傷はないし。また冬音ちゃんに怒られるし。
ここは、少し割高な食堂でも行くか。ランウを助けることが出来たし、今まで俺はよく我慢している。たまには金に糸目をつけずに食べようかな。
「閑散としてるな…………」
仕方ない、高いから。それともう一つ。食堂の厨房で顔を突っ伏してる少女。
「………………」
「良いかい?」
「っ!いらっしゃいませ!!!」
俺の言葉に目をキラキラさせて、嬉しそうに顔を上げたこの子は小美野五穂。この少女もこの食堂が閑散としている理由の一つだ。
「あぁ、メニューはあるかな?」
「こちらです!」
人がいないのもあってか、五穂ちゃんは俺の言葉を今か今かと待っている。
「そうだなぁ……」
五穂ちゃんも一応戦士として登録はされているが、戦闘向きではない。
「それにしても珍しいね?黒井さんが来るなんて。」
「ちょっとしたご褒美だよ。ここは高いけど美味しいから。」
「もう!褒めても安くしないよ?」
頬を赤らめて嬉しそうに微笑む。
「じゃあ……特製ハンバーガー?を二つ。」
「はぁーい。」
「これ、味が書いてないけど?」
「私のオリジナルですよ。」
「そうか、それは楽しみだ。」
五穂ちゃんがしゃがんで俺から見えなくなる。
さっきも言った閑散としてる理由。それは五穂ちゃんの戦士としての能力が関係している。
「う……っあえ……おぉっ!………はい、出来た!」
皿に乗ったハンバーガーが二つ。
「ん、ありがと。」
五穂ちゃんの能力は身体から食物を生み出す。このハンバーガーは五穂ちゃんの口から生成されたものだ。
これこそ、この食堂が閑散としている理由。主に汚い、である。それと、高いのはこの食堂の売り上げが五穂ちゃんの給料だからだ。避難民用の食事確保の為の時は上から給料が発生するが、基本はこの食堂のしかない。この子も生活がかかってるわけだし、高いのは当たり前だ。
「いただきます。
うん、うまいね。」
「でしょー?どうして皆来ないのかなぁ~。」
「……まぁ、そりゃ……ね。」
見た目的に忌避したくなるんだろう。
「う~ん、鼻とかおしりから出してるわけじゃないのに~。」
「……出せるの?」
「うん。」
「へぇ……」
初耳だし、それを簡単に言って良いのか?変態が来なきゃ良いが。
……うま。
「黒井さん、もっと来てくださいよぉ。じゃないと私……」
「行き倒れとか?」
「家賃払えないのぉ!」
五穂ちゃんの叫びが二人しかいない食堂に響く。
「嫌に現実的だね。常連とかはいないの?」
「んー、いなくはないです。でも変なんですよ。」
「変?」
「いつも鼻息荒くて、たまに口以外から……」
「ストップ、辞めようかこの話。」
「そう?」
頭が痛いな。そんな変態がこの職場にいるとは…
「ちなみに聞くけど、その変な人はどんな人だい?」
これでも顔は効くほうだ。注意ぐらいは出来るだろう。
「えっ……と~、第三部隊の橋見さんと津森さんですね。」
俺の部下かよ……!
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